吊りしのぶ

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国際報道2021「米英メディアの偏り度」

4月30日(金)のNHK「国際報道2021」で、アメリカ社会の分断の要因の一つにメディアの偏りがあるとして、これを解消するための面白い取り組みを紹介していた。

国際報道2021は、番組側が厳選した特集を後日、記事化してウェブに上げるのだが、今のところ、この特集は記事化されていない。興味深い内容だったので、簡単に感想を書き留めよう。

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米英メディアのバイアス(左派から右派まで5段階)

よく知られているように、アメリカのメディアは、政治的な立場を明確に打ち出す傾向がある。米大統領選では、各メディアが支持する候補を明らかにする。直近の選挙ではバイデン氏支持を表明するメディアが多かったとどこかで読んだ(視聴した)覚えがある。

メディアが特定の政党や候補を応援するということは、その記事や論説も、普段から特定政党寄りになるか、何らかの政治的立場に傾斜したものになるであろうことは、容易に想像がつく。メディアごとに、いわゆるリベラル系か保守系かといった区分けができるわけだ。

アメリカ社会の分断が深刻なのは、リベラルな人はリベラル系メディアを読み、保守の人は保守系メディアを読んで自分の考えを主張し、それぞれが自己の立ち位置を絶対化してしまうところにある。自分と異なる立場の見解を尊重できないのだ。

これはある程度、やむをえないことだと思う。政治的信条というものは、多分に宗教と同じようなところがあり、そう簡単に変わるものではない。ただ、人々が落ち着いて冷静に考えることができれば、対立する考え方がどんなもので、その根拠は何かぐらいは知っておきたいと思うだろう。場合によっては、それが自分の考えを修正する機会になるかもしれない。対立する見解の方に、筋の通った論理やファクト、説得力を見出すことができればだが。

その意味で、一人ひとりが、異なる立場から書かれた報道や論説に絶えず目配りすることは、社会の分断をいささかなりとも和らげる効果を持つかもしれない。冒頭に書いた「面白い取り組み」は、こうした動きを後押ししようとするものだ。1990年代にマイクロソフトなど大手IT企業で働いていたジョン・ゲイブル氏が、各メディアの偏りを客観的に評価するAllSidesというウェブサイトを立ち上げたという。

ゲイブルさんは、インターネットの持つ負の側面によって社会の分断が進むことを懸念し、このニュースアプリを立ち上げました。

「リベラル、保守、政府寄り、自由主義など、様々な立ち位置を理解することが最良の考えを生み出すのです」

 アメリカでは既に多くの人がそのアプリを利用しているらしい。AllSidesは、人々に多様な視点を提供することで、異なる思想や政治信条の持ち主が互いを理解し合うよう促している。

www.allsides.com

AllSidesは、各メディアのウェブ版の報道や論説を独自の手法で分析して、そのバイアスを5段階に分類した。濃いブルーのL、薄いブルーのL、中道のC、薄いレッド(茶色か?)のR、濃いレッドのRという具合に。

客観的な分類を行うため、「配信元を明かさずに一般の人の意見を聞くなど複数の手法」を用いているという。現在、800を超えるメディアや記者のスタンスを分類しているそうだ。

ウェブサイトを見ると、1つひとつの記事や論説ごとに、細かく5段階のうちどれに当たるかを示しているが、番組はメディアそのものについても、5段階のバイアス評価を見せてくれた。5段階を仮に次のように名付けよう。

  • 濃いL=左派
  • 薄いL=準左派
  • C=中道
  • 薄いR=準右派
  • 濃いR=右派

ボードを見ると、日本でお馴染みのメディアは軒並み「左派」か「準左派」に分類されている。

「左派」は、CNN、ニューヨーク・タイムズ(論説)、ハフポスト、BuzzFeed Newsなど。

「準左派」が、米3大ネットワーク(ABC、CBS、NBC)、英エコノミスト、英ガーディアン、ブルームバーグ、ニューヨーク・タイムズ(報道)、ワシントン・ポスト、YAHOO! Newsなど。

「中道」は、英BBC、ニューズウイーク、ロイター、USAトゥデイ、ウォールストリート・ジャーナル(報道)など。

「準右派」は、ウォールストリート・ジャーナル(論説)、ニューヨーク・ポスト(報道)、FOXニュース(報道)など。

「右派」は、FOXニュース(論説)、ニューヨーク・ポスト(論説)、ナショナル・レビューなど。

日本では、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストはアメリカを代表する優等生メディアと見られているが、AllSidesは両者を中道ではなく、左派系と分類しているのが目を引く。さらに、論説だけでなく事実報道でも、左寄り・中道・右寄りと、メディアによって書きっぷりは大きく異なるようだ。

なお、このAllSidesには日本企業も関わっているという。番組は次のように紹介していた。

日本から参入しているSmartNewsも、様々なスタンスの記事に触れやすいように工夫をしています。(スマホの)画面上のスライダーを左右に操作するだけで保守、中道、リベラルのニュースを切り替えられるようにしました。

「自分と違う意見も見ないといけないんだという意識が年々高まっていて、かなりメディアの多様性というものが膨らんできていると思います」(SmartNews鈴木健CEO)