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ジェンダー平等を振りかざし「渋野スマイル」の取り上げ方にケチをつける東京五輪関係者

このところ「ジェンダー平等」という言葉が言論空間に飛び交っている。Number Web2021年6月25日で、井本直歩子さんという元競泳選手で東京オリンピックパラリンピック大会組織委員会ジェンダー平等推進チームのアドバイザーがこんなことを語っている。

www.msn.com

 今年1月に帰国すると、スポーツ界でのジェンダー平等推進のための活動に携わり始めた。

 その中で感じるのがメディアの影響だ。

「『男はこうあるべき、女はこうあるべき』のイメージ、ビジネスマンや、ママの像とか、CMやテレビ番組でくっきりと描かれている。生活の隅々、頭の隅々までこびりついている。コメンテーターの話でも感じます」

 スポーツにおいても痛感する。

「女性アスリートは、あまりにも競技性と違うところが注目されがちですよね。もちろん、きちんと伝えようとしている人はたくさんいると思います。でも男女を同じように報道していないメディアも多いですよね」

 そう言って例をあげる。

「(ゴルフの)渋野日向子さんと松山英樹さんで取り上げ方が異なりますよね。松山さんの私生活やルックスのことは誰も言わない、取り上げないじゃないですか。でも渋野さんについてはお菓子を食べていることだとかスマイルのことが数多く取り上げられます」

これを読んで違和感を覚えない人がどれだけいるだろうか。渋野日向子選手は「渋野スマイル」と呼ばれるほど笑顔が素敵で、多くの日本国民を魅了してきた。彼女の弾けるような笑顔に癒やされ、勇気づけられ、励まされた人は多いはずだ。もっと見たい、何度でも見たい。みんながそう思い、感じているからメディアも彼女の笑顔に注目し、強調して切り取る。テレビも新聞も雑誌も、受け手の期待や要望に応えなければ成り立たないのだから、当然のことだろう。松山選手に笑顔の話題がないのは、彼がそんなに笑わないからだ(もちろん笑うけれども、おとなしめ)。

井本氏はこれを「『男はこうあるべき、女はこうあるべき』のイメージ(の刷り込み?)」と言うが、個人差に加えて、男女で生物学的にも社会的にも性差があるのは事実であり、その現実を反映してメディア側も記事を書き、番組を作っているだけのことだろう。

渋野スマイルを強調するのが嫌ならそれに触れなければいいが、たぶんそんなに需要はない。つまり売れない。売れないことは商業媒体にとって死活問題だから、口ではジェンダー平等を強調するメディアでも、実際には井本氏の言うジェンダー平等とは違うことを平気でやるわけだ。

国民意識や民意を否定する「ジェンダー平等」の暴走

ジェンダー平等に取り憑かれた人は、井本氏のように暴走しやすい。生物学的性差と社会的性差(ジェンダー)の境界は曖昧だし、明確に区別できるものでもない。なんでもかんでも社会的に作り出されたものに仕立て上げ、だからなくすべきという考え方は、ほとんど革命思想のようなものだと思う。

なぜなら、社会的に作り出されたといっても、それは男女の生物的性差と分かちがたく結びついたものであるし、「社会的に作り出された」部分には、人類社会や日本社会が文化として、つまり良きものとして継承してきたという面もある。「ジェンダー平等が国連のSDGsの17項目の中に入っているから」という理由で否定すべきものではない。そんなことをしたら多種多様な国のあり方を否定することになる。また日本社会が築いてきた文化を正面から否定し、壊すことにつながるだろう。

井本氏は、男も女もみんなブスっとしていろと言うのだろうか。それとも男女の別なくみんな弾けるように笑うことを求めているのだろうか。男であれ女であれ、明るく輝くように笑う人はいるが、現実にはそういう人は女性の方が多いと感じる。また渋野さんのような笑顔は、男性よりも女性だからこそより似合うと感じている人が多いのではないか。別に統計データがあるわけではないが。

渋野スマイルをメディアがこぞって取り上げるのは、こうした現実に即した自然な反応で、国民意識、言い換えれば民意に基づくものだと私は思う。もっと一般的な言い方をすれば、女性が美や可愛らしさ、明るさの象徴と捉えられていて、渋野スマイルはそのイメージにぴったり合うから注目を浴びたのだ。そして女性を美や可愛らしさ、明るさの象徴と捉えるのは国民意識であり、民意である。それの何がいけないのだろう。「いや、男だって美や可愛らしさ、明るさはある」と言ったところで、女の方がそれらをより多く、より強く持っている事実は否定しようがない。

多くの人が渋野スマイルに共感しないのなら、メディアが大きく取り上げることはなかったはずだ。ジェンダー平等論者は民意を否定するのかと言いたい。

井本氏には、次のことも言っておきたい。男性と女性で取り上げ方が違うのは日本だけではない。アメリカのメディアも、渋野スマイルを好意的に取り上げていることだ。

the-ans.jp

米専門メディア「ゴルフ.com」は渋野の最終ラウンドが行われる前に記事を掲載。「ヒナコ・シブノって誰? 『スマイル・シンデレラ』について知るべき5つのこと」と見出しを打って特集している。(中略)3つ目には「彼女はスマイル・シンデレラとして知られている」と紹介している。一躍ヒロインとなった昨年の全英女子オープンで、度々笑顔に話題が集まったことについて「シブノは温かく、控えめな笑顔を見せた。そこで『スマイル・シンデレラ』というニックネームが与えられた」と紹介している。

記事はジェンダー平等がどうのと野暮なことは言っていない。

井本直歩子さんは「女性にも徴兵制を!」(韓国)に賛成ですよね!

そもそも欧米諸国ではレディーファーストの慣習が定着しているが、これなど「男はこうあるべき、女はこうあるべき」の典型的な事例だろう。

「欧米に行くと、男たちがみなレディーファーストで接してくれるのでとても気持ちがよい」とある女性が書いていたのを読んだことがある。

井本氏は、渋野スマイルを強調するのはジェンダー平等に反すると本気で思うなら、欧米メディアにでも寄稿して、「レディーファーストの慣行はジェンダー平等に反する。なくすべきだ」と訴えてみたらどうか。

また、徴兵制を採用するお隣の韓国では「男性だけが徴兵されるのは不公平だ」という声が高まっているから、韓国社会に向かって「そんなの当然だ。男だけ徴兵されてスポーツ人生のキャリアに穴が空くのはおかしい。女も平等に徴兵すべきだ」と、日本から率先して支持の声をあげてもらいたいものだ。