週刊新潮7月8日号がワイド特集で、先日の選択的夫婦別姓に関する最高裁判決を取り上げていた。題して、「再び『夫婦同姓は合憲』真っ当判決に嚙みつく『朝日新聞』はアジビラ」。
「夫婦同姓は合憲」との判決を下した最高裁に対し、朝日新聞が大々的な批判を展開しているのは異様で、「もはやアジビラの類と言われても仕方あるまい」と批判している。
同誌によると、6月23日の合憲判決後、朝日新聞は「朝刊1面に始まり社会面のトップや社説に至るまで」この話題に紙面の多くを割き、とりわけ「判決で『違憲』と判断した4人の裁判官、いわば朝日の主張に傾く彼らの判断については詳しく報じ」たそうだ。
(追記:新潮の記事は拙ブログの「立憲民主党に告ぐ。家族否定の『選択的夫婦別姓』導入に明確に反対します」の末尾に画像を貼り付けた。発売から一定期間経っているので、週刊新潮も許してくれるだろう)
さて、紙と同じかどうか分からないが、朝日新聞デジタルにも、補足意見を書いた最高裁判事3人、意見を書いた1人、共同反対意見を書いた2人、反対意見を書いた1人の要旨が出ている(うち4人が違憲判断)。
夫婦同姓を合憲とする最高裁判決は2015年に続いて2度目だ。それだけ重みのある判断だと思うが、おそらく朝日新聞の狙いは、最高裁判決の不当性をアピールし、選択的夫婦別姓制度への支持者を増やして、世論を変えることにあるのだろう。
選択的夫婦別姓制度に賛同する人がじわじわ増えていけば、いずれ国民の意識が変化したと最高裁も認めて違憲判決を出すだろうと見込んでいるに違いない。
「選択的夫婦別姓への賛成は今や反対を上回っている」というのが、朝日新聞や他の多くのメディアの主張だ。
内閣府の「家族の法制に関する世論調査」に基づく朝日新聞作成のグラフを見ると、確かに一見、賛成派が反対派を上回ったように見える。
しかし、グラフを注意深く見れば分かることだが、反対派の数は2001年に約30%に下がったものの、2006年、2012年には35%前後に増えている。2017年調査でまた下がったが、次回調査でどうなるのか確定的なことは言えない。また上がるかもしれない。
さらに問題なのは、朝日のグラフは「旧姓通称使用」の割合を別立てにして、事実上無視していることだ。これについては21日の拙ブログ「内閣府の選択的夫婦別姓の調査は、同姓支持派が多数―マスコミ報道はミスリード」で書いた通り、巧妙な印象操作、ミスリードであって、実際は夫婦同姓堅持の主張であり、「選択的夫婦別姓への反対派」に分類すべきものだ。
なぜなら、この「旧姓通称使用」の考え方は、自民党保守派の高市早苗議員の提唱する考え方とほとんど同じだからである。
週刊新潮には、憲法学者の百地章氏がこの点を指摘して、私と同じ趣旨のコメントを寄せている。
「朝日のような『夫婦別姓』を支持するメディアが根拠とするのが、平成29年に行われた内閣府の世論調査の数字です。
ここでは“夫婦別姓を支持する人”、いわゆる『賛成派』の割合が42.5%に対して、“夫婦は同じ名字を使うべき”だとの『反対派』は29.3%に過ぎない。
そう報じられることが多いのですが、実はこの調査には第三の選択肢があって、“夫婦は同じ名字を使うべき。しかし、旧姓の通称使用は認める”と考える人たちが24.4%いる。このような『通称使用拡大派』を合わせると、夫婦別姓に反対する人々は53.7%で半数超えとなり、国民の多数は別姓を望んでいないわけです。」
まさに仰せごもっともである。
この「第三の選択肢」を含めて賛否を計算すると、選択的夫婦別姓賛成派が反対派を上回ったことは、過去一度もない。
それどころか、法制審議会が選択的夫婦別姓の導入を答申した1996年は、導入反対派が賛成派の約2倍と60%を超えていたのである。
つまり、別姓賛成論者は、世論の大多数が反対しているときでも「選択的夫婦別姓を導入せよ」と叫んでいたことになる。これは、答申が世論の高まりを受けて出されたものではなく、イデオロギー的背景から出ていることを意味する。
実は彼らにとって、世論はどうでもいいのだ。
世論の大多数が反対していても「いや、夫婦同姓は男女平等ではない。おかしい」と言い張るのが(筋金入りの)別姓賛成論者である。
ところが、反対する人が減ってくると、「世論の多くは導入に賛成している。さっさと導入すべきだ。世論を無視するのか!」と平気で言う。自分たちに都合良く世論を利用することしか考えておらず、実に身勝手だ。
世論がどうあろうと結論が変わらないのなら、世論調査の結果を持ち出すなと言いたい。
ただし、今述べたように、これまでの内閣府の世論調査では、一貫して夫婦同姓堅持が多数と出ている。これが動かしがたい事実だ。よこしまな印象操作で「選択的夫婦別姓賛成派が反対派を上回った」などとデタラメを言うのはやめるべきだ。
続けて、以下をお読みいただきたい。