吊りしのぶ

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毎日新聞がフェイクニュース、「中等症と軽症は自宅療養 政府方針」と拡散。倉持仁医師も引っ掛かったのか。

8月3日の上念司氏の動画を見て驚いた。捏造なのか、政府批判のための煽りなのか、それとも単なる記者の能力不足なのか、真相はわからないが、とにかくこれはひどい。新型コロナに関する政府の方針転換で、毎日新聞が「中等症や軽症者は自宅療養を基本 政府病床確保方針」と報じたらしい。その数時間後に訂正したようだが、第一報の致命的な誤りについては何の釈明もなく、フェイクニュースを拡散したことへの謝罪もないという。

上念氏は毎日新聞ツイッターに「捏造じゃないですか! (AERAルールに基づき)100分以内に回答をください」と書いたそうだが、期限内には回答がなかったという。

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毎日が当初報じたニュースが事実ならとんでもないことだが、少し考えれば「何だかおかしい」と気づくはずだ。菅首相は「重症化リスクの高い人は確実に入院できるように必要な病床は確保する。それ以外の方は自宅療養を基本に……」と説明していたからだ。

毎日の記者は、なぜこんな基本的な誤りを犯したのか。「政府がとんでもない方針転換を打ち出した。1分1秒でも早く報じて政府を糾弾しなくては!」と思い込んで、喜び勇んで記事をアップしたのだろう。

こういうフェイクニュースの罪が重いのは、それを読んだ人が、記事の内容を信じ込んですぐさま拡散し、多くの人に伝わってしまうからだ。訂正記事を読まない人は、頭の中にフェイクニュースがそのまま定着してしまう。だから、これほど大きな間違いを犯したのなら、訂正記事は多くの人が気づくようにデカデカと報じ、なぜ誤りが起きたのかについてもきちんと説明すべきなのだ。もちろん謝罪もするべきだろう。記者の処分も必要だ。

そこまでやれば記者もデスクも慎重にならざるをえないし、そこまでやってこそフェイクニュース発信への抑止力になる。

今回の政府方針は、重症化リスクは低いと考えられる一部の軽症患者や中等症患者が病床の数割を占有しているため、重症化リスクの高い患者や重症化した患者が入院できないという事態を防ぐのが目的だ。しごくもっともな方針だと思うし、状況を冷静に把握している医師は政府方針に賛成しているという。

感染者が大幅に増えている以上、これまでと同じ方針でやっていたら医療崩壊が起きるに決まっている。そうならないように、改善の余地のあるところは改善するのが当たり前だ。

毎日新聞の問題の記事(訂正後)を出しておく。

mainichi.jp

いつの時点で釈明が加わったのかわからないが、記事の末尾にフェイクニュースを流したことへの釈明が加筆されている。

 本記事では、当初「重症者については入院のための病床を確保するが、中等症や軽症者に関しては自宅療養を基本とする内容」としていたのを「入院対象者を重症患者や特に重症化リスクの高い人に絞り込み、入院しない人を原則自宅療養とすることを可能とする方針」と修正しています。取材の過程で、中等症の人を一律自宅療養とするわけではないことが判明したためです。

上念氏らからの抗議や批判を受けて、釈明せざるをえなかったのだろう。ただし、謝罪の言葉はない。

なお、上念氏のメルマガによると、この問題と関連して、そもそも政府の方針転換は正しいのか、という点について冷静で参考になるツイートをしたのが、呼吸器専門医・感染症専門医のインヴェスドクター(@Invesdoctor)さんだ。

8月2日の一連のツイートでこう指摘している。

ハイリスク因子を持っているだけの軽症は基本的に入院しなくてよいと思いますが、「在宅で急変したら保健所の責任」と非難されるフシもあり、保健所がハードルを下げて入院依頼してくる自治体はたくさんあります。なので、現実的に軽症ハイリスク例が今もたくさん入院しています

「療養中に呼吸困難、酸素飽和度93%」という触れ込みで、いざ入院してきたら全然元気、肺炎もない、というパターンも、「じゃ今回の入院はナシで」というわけにはいかず、退院基準を満たさないとコロナ病棟から出られません。

大阪府の第4波で問題だったのは、『入院するほどではない軽症〜中等症Ⅰが、入院を要する中等症Ⅰ〜重症のベッドを奪う構図』があったことです。そのため、本当に必要な人だけにベッドをしぼって、「原則自宅療養」という流れにする案には賛成です。

インヴェスドクターさんの評価は、TBSのNスタ(3日夕方)に出演して「こんな方針では国民の命は守れない。菅首相小池都知事もすぐ辞めたほうがいい」と語った宇都宮市のインターパーク倉持呼吸器内科院長・倉持仁医師とは真逆だ。

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言論プラットフォーム「アゴラ」の編集部は、倉持医師は、毎日新聞とTBSのフェイクニュースに影響されたと見ているようだ。

agora-web.jp

Nスタの画面右上の見出し「中等症では入院できない?」がそのことをよく表している。クエスチョンマークが付いているが、視聴者は「中等症でも入院できないんだ。それはひどい!」と思うに違いない。

実際、TBSニュースのサイトには、

政府が2日に示した、入院対象者の方針転換。“原則自宅療養”だと言います。中等症では入院できないのでしょうか。医療現場の前線からは憤りの声も・・・。 

とある。

明らかに「中等症で入院はできなくなる」と思わせる書き方だ。フェイクもしくは巧妙な誘導と言わざるをえない。

閑話休題

このところの感染者の急増は東京五輪とは全く関係ない。その証拠に、感染者は沖縄でも増加が顕著だ。東京五輪と沖縄には何の接点もない。

結局、感染者数の急増は東京五輪が起こしたのではなく、政府や自治体の外出自粛要請や酒類を伴う飲食、会食の自粛要請を無視して自由奔放に行動している国民自身が引き起こしたものだ。

マスコミも、要請に従わない飲食店を取材して不満の声を伝えたり、「オリンピックをやっているのに、なんで俺たちが自粛しなきゃいけないんだ」みたいな街の人の声を報じているが、なぜ彼らをたしなめないのか不思議で仕方がない。そうした声を伝えるだけでは、逆に彼らの行動にお墨付きを与えることになるではないか。

要請に従わない飲食店には客が入り利益が出て、要請に正直に従った飲食店はただひたすら忍の一字というのは、明らかに不公平だ。「要請に従わない飲食店の皆さん、考え直してください」とはっきり言うべきだろう。だが、テレビ各局のニュース番組でそんな言葉は聞いたことがない。

オリンピックを理由に自由行動をしている人にも、「オリンピックと今の感染急拡大は関係ないんですよ。オリンピックをダシに使うのはやめましょう」と言うべきだ。でも言わない。

言えば、言われた人たちから反発され、批判されるからだろう。だから、何でも政府のせいにして、「政府の説明が足りない、政府の努力が足りない、政府の声が国民に届いていない」と政府を批判する。

今は国民が一丸となって難局に立ち向かわなければいけない時なのに、政府批判に終始し、国民の政府に対する不信感を煽り、政府と国民との間に溝を作ることばかりやっている。愚かなことだ。