日本共産党書記局長の小池晃氏が、公明党代表の山口那津男氏に発言の撤回を求めているが、その必要はない。なぜ? 山口氏は本当のことを言っただけだから。
山口氏の発言はこうだ。
共産党は日米安保条約廃棄、自衛隊は違憲、天皇制は憲法違反、廃止。こういう政党と閣外協力すると言っても、極めて安定感のない政権に他ならない。
まず「日米安保条約破棄」はまぎれもない事実。今回の公約にしっかり入っている。「自衛隊は違憲」も前々からの共産党の持論だ。
そして問題の「天皇制は憲法違反、廃止」。これは綱領を見れば、山口氏の言い分が正しいことはすぐわかる。
綱領にはこう書いてある。
党は、一人の個人が世襲で「国民統合」の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ。天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである。
確かに小池氏の言うように、綱領には「天皇の制度は憲法上の制度」と書いてあるが、これは単に、現行憲法が天皇制について規定している、という程度の意味しかない。天皇制は憲法上の制度だから、国会で法律を作っても憲法の天皇条項を変えることはできない、ということだ。
一方で綱領は、「(天皇制は)民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく」とはっきり書いている。民主主義と天皇制は両立しないのだそうだ。民主主義と国民主権の原則に立った日本国憲法に天皇条項があるのはおかしいと言っている。行間を読めば、そういう解釈になる。
さらに続けて「民主共和制の政治体制の実現をはかるべき」としている。共産党が目指すのは共和制国家だから、その国に天皇や皇族の居場所はないことになる。すなわち、天皇制の廃止である。
天皇制が違憲でないというなら、共和制国家を目指す必要はない。違憲と考えているからこそ、つまり天皇制が現行憲法の民主主義や国民主権の原則と相容れないと考えているからこそ、共和制国家を目指すのだろう。
極めつけは、「その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきもの」と書いていることだ。
なぜ天皇制の「存廃」が問題になるのか。天皇制の存廃(=存続させるか廃止するか)を問題にするような人は、日本では圧倒的少数派である。今、国民が心配しているのは、このままでは天皇制が終わってしまうのではないか、どうしたら安定的な皇位継承が可能かという問題であり、天皇制の廃止など大多数の国民は求めていない。
それなのに、あえて「存廃」が問題だというのは、天皇制を廃止したいからである。天皇制が民主主義や国民主権と相容れないという綱領の文脈から推して、共産党が「廃止」を望んでいるのは明らかである。
その天皇制廃止をいつやるかといえば、「将来、情勢が熟したとき」だという。共産党が何らかの形で政権の中心部を握り、国民の間に天皇制への不満や批判、非難の声が高まったとき、ということだろう。
共産党が政権の中枢に近づけば、上からの政治宣伝によって、意図的に天皇制廃止の機運を盛り上げることもできる。反天皇制キャンペーンをやるとか、検定方針を変えて天皇制に反感を抱かせる教科書を作らせ、義務教育段階から反天皇制の刷り込みをやるとか、やり方はいろいろ考えられる。
最後に現行憲法を改正して天皇条項を削ればよい。それが「国民の総意によって解決される」の意味だろう。共和制国家を作るには憲法改正は避けて通れない。
こう見てくれば、「天皇制は憲法違反」も「天皇制は廃止すべき」も、デマどころか、共産党の本質を衝いた発言であることが明らかだ。
ついでに言うと、共産党が護憲政党というのもウソだとわかる。くどいようだが、共和制国家を作るには、憲法改正が欠かせないからである。