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千葉市議会が採択した「選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書」が賛成派の割合をでっち上げ

こんなことがあっていいのだろうか。2020年12月15日に千葉市議会が採択した「選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書」の冒頭に、とんでもない事実誤認、もっとはっきり言えばウソが書かれている。

意見書冒頭のくだりはこうだ。

2018年2月に内閣府が公表した世論調査では、夫婦同姓と夫婦別姓を選ぶことのできる、いわゆる選択的夫婦別姓制度の導入に賛成・容認と回答した国民は66.9%で、反対の29.3%を大きく上回り、特に30歳代における賛成・容認の割合は84.4%にも上る結果となった。

初めてこれを読んだとき、本当にビックリした。今年9月に刊行された『夫婦別姓に隠された不都合な真実~「選択的」でも賛成できない15の理由』(椎谷哲夫著、明成社)によると、最近、地方議会で「選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書」が採択されているが、5年ごとに行われる内閣府の「家族の法制に関する世論調査」の数字を“改ざん”して、デタラメな数値を載せているという。

www.hanmoto.com

よもやそんなことはあるまいと思って調べてみたら本当だった。

意見書にある「2018年2月に内閣府が公表した世論調査」は、ネットで誰でも読むことができる。

survey.gov-online.go.jp

survey.gov-online.go.jp

このグラフと説明を読んで、「夫婦同姓と夫婦別姓を選ぶことのできる、いわゆる選択的夫婦別姓制度の導入に賛成・容認と回答した国民は66.9%で、反対の29.3%を大きく上回り」とか「特に30歳代における賛成・容認の割合は84.4%にも上る」などと、どうして書けるのか。

意見書を作成した人たちや意見書を審議した人たちは、基本的なファクトチェックをしなかったのだろうか。

内閣府「家族の法制に関する世論調査」の選択肢をきちんと読んでみよう

「家族の法制に関する世論調査」において、選択的夫婦別姓制に関する質問で、回答の選択肢は「わからない」を除くと3つ。

ア「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」(29.3%)

イ「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」(42.5%)

ウ「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」(24.4%)

千葉市議会の意見書は、イ+ウ=66.9%、ア=29.3%として、選択的夫婦別姓制の導入に賛成・容認が66.9%、反対が29.3%としている。

だが、ちょっと待ってほしい。の文言のどこをどう読んだら「選択的夫婦別姓制導入に賛成・容認」となるのか。日本語の読解力があるのかと言いたい。この24.4%を別姓導入容認としてカウントするのは詐欺も同然だ。でっち上げ、捏造と言っていい。

ウは「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだ」とはっきり書いている。この時点でもう別姓を容認していない。その上で「婚姻によって名字(姓)を改めた人が、婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」としている。

要するに、

戸籍上、夫婦別姓にしたい人がいても、夫婦は必ず同じ姓を名乗るべきだから、それはダメですよ。でも婚姻によって夫または妻の姓に改めた人が、婚姻前の姓を通称としてどこでも使えるように法改正することについては、いいんじゃないですか。

という意見だ。

その意味するところを理解すれば、ウと答えた人が「戸籍上の夫婦同姓を堅持」に分類されることは明らかだ。つまり、正しくは、選択的夫婦別姓制に賛成はイの42.5%、夫婦同姓を堅持すべきがア+ウで53.7%となる。

意見書が言及している30代では、賛成は52.5%、反対(同姓堅持)が45.5%である。意見書は「賛成・容認の割合は84.4%にも上る」などと、何か圧倒的大多数が賛成しているかのような書き方をしているが、実際には賛成と反対の差は7ポイントしかない。

■なぜ、こんなでっち上げがまかり通っているのか?

なぜこのようなでっち上げがまかり通っているのか。これは私の想像だが、別姓推進派は、安倍首相の国会答弁を、言葉の表面だけを見て自分たちに都合良く解釈し、内閣府調査の選択肢ウを「導入容認」に分類したのではないか。

安倍首相は2020年1月31日の参議院予算委員会で、国民民主党の矢田わか子議員の質問に答えて、

選択的夫婦別氏制度の導入については、我が国の家族の在り方に深く関わる事柄であり、国民の間に様々な意見があるのも事実でございまして、平成29年の内閣府による世論調査の結果においては、夫婦別氏反対が29.3%、夫婦別氏容認が42.5%、そして通称名のみ容認が24.4%ということになっている、分からないが3.8%であります。

と述べている。

安倍首相は在任中、選択的夫婦別姓制に関する質問が出たとき、この「通称名のみ容認が○○%」という言い方を何度かしている。別姓推進派は「容認」という言葉に飛びついて、これを選択的夫婦別姓制導入を「容認」する意見と勝手に解釈したのではないか。

実際、冒頭に挙げた意見書には「賛成66.9%」ではなく「賛成・容認66.9%」と書いてあった。安倍首相が言う「通称名のみ容認が24.4%」を、一方的に「選択的夫婦別姓制導入を容認24.4%」と読み替えたのであろう。同じ「容認」でも、容認するものが全く違う。

安倍首相が言う「容認」は、夫婦同氏(同姓)を前提として、旧姓を通称として使うことに法的根拠を与えることを容認する、という意味である。内閣府調査のウはそうとしか解釈できない。ウには、誤解を生まないようにハッキリ「婚姻によって名字(姓)を改めた人が」と書いてあるではないか。

法務大臣が国会で「賛成・容認と回答した国民は66.9%」を否定

しかも、千葉市議会の意見書にある「賛成・容認と回答した国民は66.9%」という解釈は、法務大臣の答弁によって完全に否定されているのである。

2020年2月4日、衆議院予算委員会で選択的夫婦別姓制について質問した日本維新の会足立康史議員に対し、森まさこ法務大臣は次のように答弁している。

今、直近の世論調査(注:2018年2月に内閣府が公表した「家族の法制に関する世論調査」のこと)ですと、同一の姓を名乗るべきという方が、旧姓の使用、通称の使用を認めるべきだという人も含めて、全体の過半数いらっしゃいます。

ここで森大臣は「同一の姓を名乗るべきという方」の中に「旧姓の使用、通称の使用を認めるべきだという人」も含めている。設問の回答選択肢で言えばアとウである。上で見たように、アとウを足せば53.7%になり、夫婦同姓に賛成する人が「全体の過半数いらっしゃいます」という森大臣の発言とピッタリ整合する。

千葉市議会で採択された意見書が、選択的夫婦別姓制を導入すべきと理由として真っ先に挙げた世論調査の「賛成・容認66.9%」という数字は、政府の森まさこ法務大臣の国会答弁によって完全に否定されているのである。

でっち上げられた数字をもとに、最高裁で合憲とされ、既に長きにわたって日本社会に定着している夫婦同姓(同氏)制度の改悪を求めるなど、言語道断だ。意見書を採択した千葉市議会の責任は極めて重大である。どうする? 千葉市議会!

※今日のブログのタイトルにある「賛成派の割合」は、「賛成・容認の割合」のこと。長くなるので圧縮した。