吊りしのぶ

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「選択的夫婦別姓の導入・議論を求める意見書」の重大な問題点―「賛成・容認66.9%、反対29.3%」は本当か?

選択的夫婦別姓・全国陳情アクションのウェブサイトに「各地の意見書可決状況」というページがある。

そこを見ると、

  • 10月18日に浜松市議会が「選択的夫婦別姓制度についての議論を求める意見書」を可決、
  • 同15日に新宿区議会が「選択的夫婦別姓制度について国会審議の推進を求める意見書」を可決、
  • 北海道恵庭市議会が「選択的夫婦別姓制度の法制化に向けた議論を求める意見書」を可決……

といった具合に、全国の自治体の意見書可決状況が時系列で記録されている。

意見書は、例示した3自治体のように「議論を求めるもの」もあれば、千葉市議会や北九州市議会のようにストレートに「制度導入を求めるもの」もある。

もちろん新潟県議会のように、推進派の意見書を否決した自治体もある。

逆に、岡山県議会は「選択的夫婦別姓制度の導入に反対する意見書」を可決した。

熊本県議会可決したのは「夫婦・親子同氏を維持し、旧姓の通称使用の拡充を求める意見書」である。

これら新潟県議会、岡山県議会、熊本県議会の英断を高く評価したい。おそらく別姓推進派や左派マスコミの妨害、非難、攻撃をはねのけるのは大変だったと思う。

選択的夫婦別姓制導入に反対の意志を示す自治体はまだ少ないが、後に続く地方議会が続々と出てくることを期待したい。

■別姓推進の最大の根拠は、内閣府「家族の法制に関する世論調査」の結果

ところで、別姓制導入や導入の議論を求める意見書を見ていて驚いたのは、判で押したようにある世論調査の数字が使われていることである。

その世論調査は、内閣府が5年ごとに行ってきた「家族の法制に関する世論調査」である。最新版は2018年2月に発表された。

当ブログで何度も取り上げてきたように、この大規模調査では、過去一度も選択的夫婦別姓制への「賛成」が「反対」を上回ったことはない。それは最新調査の2018年2月公表版でも同じである。

ところが、なぜかマスコミは、この最新調査で初めて「賛成が反対を上回った」と事実無根の報道をした。これも当ブログで過去に書いたことである。

同様の指摘は憲法学者の百地章・日大名誉教授がしておられるが、ダイヤモンド・オンラインでもノンフィクションライターの窪田順生氏が「選択的夫婦別姓の議論がスルーする、『実は同姓支持多数』という不都合な真実」という記事を書いている。

窪田氏は、自らは選択的夫婦別姓制に賛成と断った上で、だからといって世論調査の結果を誤って伝えたり、都合の悪い数値を無視したりするのは間違いだ、とマスコミの世論誘導を厳しく批判した。

■「賛成42.5%、反対29.3%」という報道は誤り。正しくは「賛成42.5%、反対53.7%」

マスコミ報道では「(選択的夫婦別姓制の導入に)賛成42.5%、反対29.3%」とされているが、それは意図的な世論誘導、もしくは短絡的な見方で、実際は「賛成42.5%、反対53.7%」が正しい。

調査結果をきちんと読み取れば、誰でもそういう結論になる。

マスコミは、「賛成」「反対」の他にもう一つ用意された第3の選択肢、「夫婦同姓の堅持を前提として通称使用の拡大を認める」(要旨)を、なぜか無視したのである。

この選択肢は、自民党の高市早苗議員がかねてより主張している案に近い。夫婦同姓の制度を堅持した上で通称使用を法制化するのは容認する、という意見だ。

夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない

この回答は「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだ」とか「婚姻によって名字(姓)を改めた人が」などの表現から、選択的夫婦別姓制の導入には反対としか解釈できない。

戸籍上は夫婦同姓にすべきだが、旧姓を通称として使うのはOKと言っているのだ。

2018年2月公表の内閣府調査は、選択的夫婦別姓制の導入に「賛成が42.5%、反対が53.7%」、よって反対する人の方が依然多い、という結論になるわけだが、マスコミはそうは報道しなかった。

これだけでも驚くべきミスリードである。

だが、さらに驚くべきは、別姓推進論者たちはこの第3の選択肢を、なんと「選択的夫婦別姓制導入を容認する意見」とみなして、導入賛成側にカウントしたことである。こんなことは、さすがにマスコミもやらなかった。

■推進派がでっち上げた「賛成・容認66.9%、反対29.3%」というあり得ない数値

大胆不敵というべきか、厚顔無恥というべきか。私はこの事実を、サイボウズの青野慶久社長が運営している「ニュー選択夫婦別姓訴訟」のウェブサイトで知った。

そこに掲載されたグラフを初めて見たときは、思わず目を疑った。

グラフの説明には、「『夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが、旧姓を通称として使える法改正は容認する』との回答の22.4%」を「(選択的夫婦別姓制)容認」に分類すると明記されている。

「旧姓を通称として使える法改正」と書きながら、なぜこれを「選択的夫婦別姓制容認」とするのかさっぱり分からなかった。今も分からない。

選択的夫婦別姓制が実現した場合、別姓を選択した人には「旧姓」も「通称」ももはや無用の概念である。戸籍姓をそのまま使えばいいからだ。

しかし、従来通り、戸籍上の夫婦同姓を選んだ人の中には、仕事上の都合などから旧姓を通称として使いたい人はいるだろうし、法制化を望む人もいるだろう。しかしそれがなぜ「選択的夫婦別姓制の容認」ということになるのか? なるわけがない。

「ニュー選択夫婦別姓訴訟」掲載のグラフを見て、世論工作のためなら何をやってもいいのかと暗澹たる気持ちになったものだ。

しかし、上には上がいるものである。事態は私が考えるよりはるかに深刻だと知ったのは、『夫婦別姓に隠された不都合な真実~「選択的」でも賛成できない15の理由』(明成社)を読んだことによる。

Q&A形式で、50ページほどの小冊子に15の質問と解説が載っている。

■でっち上げの世論調査結果を鵜呑みにする地方議会、文言までほとんど同じ

それによると、まず「ニュー選択夫婦別姓訴訟」と同じやり方で内閣府調査の第3の選択肢を「容認」に分類し、その割合24.4%と「賛成」42.5%を足した計66.9%を「賛成・容認」と位置付ける。

次に、66.9%の人が別姓推進派で「反対」はたったの29.3%、ダブルスコアで推進派が多いという結果をでっち上げる。

その上で、これを主たる根拠にして選択的夫婦別姓制の導入を求める意見書(または導入に向けた議論を求める意見書)が、地方議会で次々に採択されているというのである。

信じられなかった。地方議会がろくにファクトチェックもしないで議案を通してしまうとは!

同書が挙げているのは、千葉市議会はじめ、福岡市、北九州市、長野市、東京都江戸川区、所沢市である。

だが、いやいやどうして、冒頭の「各地の意見書可決状況」にリンクされた地方議会の意見書を上から順番に見ていくと、東京都新宿区、北海道恵庭市、東京都文京区、佐賀県唐津市、大阪府箕面市、東京都葛飾区、静岡県伊豆市、大阪府吹田市、東京都立川市など、十中八九が「66.9%対29.3%」の数字を使っている。

文言もほぼ同じだ。例えば北九州市議会

平成30年2月に内閣府が公表した世論調査において、夫婦同姓も夫婦別姓も選べる選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に賛成又は容認すると答えた国民は66.9パーセントであり、反対の29.3パーセントを大きく上回ったことが明らかになりました。

次は東京都葛飾区議会

平成30年2月に内閣府が公表した世論調査において、夫婦同姓も夫婦別姓も選べる選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に賛成または容認すると答えた国民は66.9%であり、反対の29.3%を大きく上回ったことが明らかになった。

佐賀県唐津市議会は以下のごとく。

平成30年2月に内閣府が公表した世論調査において、夫婦同姓も夫婦別姓も選べる選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に賛成または容認すると答えた国民は66.9%であり、反対の29.3%を大きく上回ったことが明らかになった。

この3自治体に限らず、どの意見書も金太郎飴のようにほぼ同じ文言と数値が意見書の冒頭に置かれている。

■こんなことが許されるのか! 地方議会がフェイクニュースの拡散に積極的に加担

これはもう地方政治における一大スキャンダルではないだろうか。

ここに見られるのは世論操作、世論誘導などという生やさしいものではない。あからさまな世論調査結果の歪曲であり、民意のでっち上げである。

実際は「反対が過半数」なのに、「ダブルスコアで賛成多数」というウソの数字をもとに別姓制推進の意見書を議会で可決したということは、地方議会がフェイクニュースにお墨付きを与えたも同然である。

いや、地方議会がフェイクニュースの拡散に積極的に加担しているのである。

民主主義国家で白昼堂々、こんなことが行われているとは驚き呆れるばかりだ。フェイク情報で国政を左右しようとする試みは許しがたい。