- 1,夫婦別姓の問題で公明がやっていることは、自公連立の信義に反する
- 2,「賛成・容認66.9%、反対29.3%」という民意のでっち上げに公明党が加担、推進
- 3,どの意見書も冒頭は一字一句同じかほとんど同じ
- 4,事実は「賛成42.5%、反対53.7%」で反対の方が多い
- 5,21年9月議会で確認できる47意見書のうち、8割以上がでっち上げの調査結果を使用
- 6,「賛成・容認66.9%、反対29.3%」が真っ赤なウソであることを示す根拠
- 7,安倍総理大臣と森法務大臣が揃って否定。この国会答弁は未だに覆されていない
今はやりの選択的夫婦別姓制の問題をめぐって、腹に据えかねることが起きている。公明党のやっていることは自公連立の信義に反するのではないか。
公明党が組織的にやっているかどうかはわからない。しかし、地方議会では一部の公明党議員が、「選択的夫婦別姓の導入・議論を求める意見書」において、内閣府世論調査の結果を勝手にねじ曲げ、民意をでっち上げているのである。
それが「選択的夫婦別姓制に賛成・容認が66.9%」という数字である。
1,夫婦別姓の問題で公明がやっていることは、自公連立の信義に反する
彼らによると、反対する者は29.3%しかいない、とされる。つまり、選択的夫婦別姓制への賛成・容認は反対をダブルスコアで引き離し、圧倒的に多いというのだ。
この主張が世の中にじわじわと浸透したせいか、最近は「これだけ多くの人が選択的夫婦別姓制に賛成しているのに、自民党保守派なぜ反対するのか?」などとテレビでもネットでも平気で発言する者が目立つ。
そこには、「本当にそんなに多くの国民が賛成しているのか?」と疑ってみる姿勢は見られない。
また、賛成している人たちが、夫婦別姓導入に伴う混乱をどこまで理解した上で賛成しているのか確認しようとする声もない。
「自分は別姓にしないけど、したい人はすればいいんじゃない」と言う人が、この別姓制を導入した結果、何かが起こるかについてどこまで理解しているのか、はなはだ疑問である。
推進派には、別姓制導入のメリットとデメリットをきちんと国民に知らせ、その上で判断を仰ごうという謙虚な姿勢が全くない。たたただ「こんなに賛成が多いのに」というだけで、数を頼んで力任せに事を進めようという強引さばかりが目立つ。
常日頃、自民党政治を「少数意見を尊重しないのはおかしい」「数にモノを言わせて多数決で物事を決めるのは乱暴だ」と批判し、はては議論を尽くした上で、これ以上議論しても時間の無駄だからと採決しようとすると「強行採決反対!民主主義の破壊だ!」と騒ぎ立てるマスコミ。
その反自民・野党びいきのマスコミが、なぜかこの問題では、世論の大多数が賛成であるかのように宣伝し、早く夫婦別姓制を導入しろと「数字の力」を頼んで強引に法律を作らせようとしている。
2,「賛成・容認66.9%、反対29.3%」という民意のでっち上げに公明党が加担、推進
左派マスコミのダブルスタンダード、二枚舌には今更驚くこともないが、自民党と連立を組む公明党がこれに加担、推進しているとなると話は別である。
ここしばらく、時間を見つけて意見書を採択した地方議会に電話をかけてみた。それでわかったことがある。
- 町田市議会の場合、意見書の採択(意見書PDF)を主導したのは公明党会派である。山下哲也、園城由久、松葉祐巳、齋藤勝弘、村松俊孝の各議員だ。
- 埼玉県草加市も、公明党の佐々木洋一議員が議案提出者だ。
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大阪市議会は提出者が14名いるが、そこに公明党幹事長の西﨑照明氏、同幹事の永田典子氏が加わっている。(意見書案)
3,どの意見書も冒頭は一字一句同じかほとんど同じ
これらの意見書に共通しているのが、冒頭にほぼ同じ文言が置かれていることである。
まずは町田市議会。
次は草加市議会。
平成30年2月に内閣府が公表した世論調査において、夫婦同姓も夫婦別姓も選べる選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に賛成または容認すると答えた国民は66.9%であり、反対の29.3%を大きく上回ったことが明らかになった。
座間市議会。
平成30年2月に内閣府が公表した世論調査において、夫婦同姓も夫婦別姓も選べる選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に賛成または容認すると答えた国民は66.9%であり、反対の29.3%を大きく上回ったことが明らかになった。
そして大阪市議会。
平成30年2月に内閣府が公表した世論調査の結果において、夫婦同姓も夫婦別姓も選べる選択的夫婦別姓制度の導入に、賛成または容認すると答えた国民は66.9%であり、反対の29.3%を大きく上回ったことが明らかになった。
以上のように、4市議会ともに、意見書冒頭の3行が一字一句ほとんど同じであり、しかもそこで使われた内閣府の世論調査の結果が、既に各所から指摘され批判の声が上がっている「賛成・容認66.9%、反対29.3%」という捏造された数値なのである。
公明党は、選択的夫婦別姓制の推進に熱心だ。衆院選の党首討論でも賛成の立場を打ち出していた。
だからといって、こんな噓っぱちの数字を使い、あたかも7割もの世論が賛成・容認で、反対は3割しかいないという露骨な世論誘導を行うことが許されるのだろうか。
許されるはずがない。これはフェイクニュースの拡散に公明党議員が進んで加担したことに他ならないのである。
自公連立への信義違反にとどまらず、民意を捏造したという点において断じて容認できない。
これは私が町田市民、草加市民、座間市民、大阪市民であろうとなかろうと関係ない問題だ。国民世論の民意をでっち上げているのだから、国民の1人として異議申し立てを行う権利がある。
議案提出者となった公明党議員、議案に賛成した公明党議員は、胸に手を当ててよく考えてもらいたい。自分は言いたい、こんなでっち上げを堂々とやって、神や仏の前に恥ずかしくないのか、良心の呵責を感じないのか、と。
4,事実は「賛成42.5%、反対53.7%」で反対の方が多い
問題の内閣府の「家族の法制に関する世論調査」は、「賛成・容認66.9%、反対29.3%」という数値を正当化しない。
事実は全く逆で、調査から読み取れるのは「賛成42.5%、反対53.7%」である。反対の方が多いのである。
これが事実であり、ここに解釈の余地はない。まともな国語読解力を持って調査結果を読むなら、そういう結果しか出てこない。
当然のことだが、内閣府は同調査の結果にコメントを付けて公開しているが、そのどこにも「賛成・容認66.9%、反対29.3%」などとは書いていない。
この民意の捏造を行っているのは上記4市議会にとどまらない。日本政策研究センターの小坂実研究部長の調査では、同センターが調べた130意見書中、実に43意見書(33%)がこの間違った数値を意見書に載せていたという(「明日への選択」21年9月号)。
その自治体は、
府中市、武蔵野市、国立市、西東京市、町田市、立川市、東村山市、調布市、多摩市、三鷹市、武蔵村山市、葛飾区、狛江市、江戸川区、渋谷区(以上、東京都)、幕別町、士幌町、登別市、芽室町(以上、北海道)、伊達市、福島市(以上、福島県)、奥州市(岩手県)、つくば市、鹿嶋市(以上、茨木県)、流山市、松戸市、千葉市(以上、千葉県)、富士見市、志木市、松伏町(以上、埼玉県)、上田市、長野市、千曲市(以上、長野県)、橿原市(三重県)、摂津市(大阪府)、長岡京市、井出町(以上、京都府)、豊岡市(兵庫県)、瀬戸内市(岡山県)、北九州市、中間市、福岡市、飯塚市(以上、福岡県)。
なお、このうち陳情アクションの働きかけによるものは7割近い30にも上る(渋谷区議会の意見書には「賛成・容認と答えた国民が約7割」とあるが本質は変わらない)。
このうちどれだけに公明党が関わっているのかは、調べる時間がないので私には分からない。
日本政策研究センターは、公明党の働きかけに着目するよりも、選択的夫婦別姓・全国陳情アクションの関与を疑っているようだ。
5,21年9月議会で確認できる47意見書のうち、8割以上がでっち上げの調査結果を使用
そして、同センターの最新調査では、2021年9月議会で可決された65意見書(調査時点における数)のうち、中身を確認できた47の意見書の8割以上にあたる39議会が、「賛成・容認66.9%、反対29.3%」というでっち上げられた数値を使っていたという。
- 北海道歌志内市、苫小牧市、釧路市、八雲町、登別市、芦別市、伊達市、恵庭市
- 青森県青森市
- 東京都東久留米市、小金井市、町田市、立川市、葛飾区
- 埼玉県草加市
- 千葉県市川市、佐倉市、松戸市
- 神奈川県座間市
- 群馬県安中市
- 静岡県伊豆市
- 岐阜県可児市
- 愛知県津島市
- 大阪府大阪市、泉大津市、枚方市、藤井寺市、富田林市、吹田市、箕面市
- 奈良県大和高田市、大和郡山市
- 京都府八幡市
- 岡山県高梁市
- 福岡県中間市、北九州市
- 佐賀県唐津市
- 大分県熊本市、別府市
選択的夫婦別姓・全国陳情アクションは、意見書が可決されるたびに、ホームページ上で報告し、公開できる意見書をリンク1つで公開しているが、「賛成・容認66.9%、反対29.3%」がでっち上げだということにはひと言も触れない。
本来なら、「こんな間違った数字を使ったらいけませんよ」とたしなめる立場だろう。ところが、意見書さえ通れば勝ちとばかりに、まさにでっち上げだろうが捏造だろうが、何が書かれていようと、とにかく議会を通してしまえばこっちのもの、というわけである。
実際、私が確認した限りでは、一度、議会で可決された意見書は、後日その内容に誤りが見つかっても、撤回されることはない。どの議会事務局に聞いても、取り下げや撤回に関する規則が存在しないから、できないという。
つまり、各自治体に居住する市民が、「この意見書にはウソが書かれているから撤回すべきだ」と声を上げても、直ちにそれを実現するすべはないのだ。
但し、方法が全くないわけではない。当該市民(市外の人を受け付ける自治体もある)が「意見書の間違いの訂正を求める請願」を議会に出すという方法である。
請願が議会で可決されれば、意見書を出した議員たちは、間違った箇所を訂正して意見書を議会に再提出しなければならない。残念だが、でっち上げを公的に修正する方法は、このくらいしかないようだ。
6,「賛成・容認66.9%、反対29.3%」が真っ赤なウソであることを示す根拠
「賛成・容認66.9%、反対29.3%」が民意のでっち上げであることは、既に当ブログにおいて再三指摘してきた。
活字になったものとしては、『夫婦別姓に隠された不都合な真実~「選択的」でも賛成できない15の理由』(椎谷哲夫著、明成社、600円+税)がある。
以下のリンクでは在庫切れになっているが、アマゾンでは買える。
また日本政策研究センターが月刊誌『明日への選択』21年9月号で取り上げていた。記事は11月に入ってネットで公開されている(「最高裁決定で迫られるこれだけの別姓賛成意見書」)。
百地章・日大名誉教授(憲法学)は産経新聞「正論」コラムで、内閣府の世論調査結果は「別姓反対が過半数で、賛成を上回っている」と書き、「賛成・容認66.9%、反対29.3%」の間違いを間接的に指摘しておられる。(産経ニュース7月6日「国民の大多数は夫婦別姓望まず」)
7,安倍総理大臣と森法務大臣が揃って否定。この国会答弁は未だに覆されていない
ついでに、決定的な根拠を挙げておこう。
公明党議員らが議会に提出した意見書に書かれている平成30年2月公表(調査は平成29年実施)の内閣府「家族の法制に関する世論調査」について、2020年2月4日、当時の安倍晋三総理は衆議院予算委員会でこう述べている。
○安倍内閣総理大臣
平成二十九年に内閣府が行った世論調査では、法改正により旧姓の通称使用の機会を広げるべきであるという意見を含め、夫婦は必ず同じ氏を称するべきであるという意見が過半数を占める状況にあったと承知をしております。
このように、世論調査の結果においても国民の意見はなお分かれており、また、国民の中には、夫婦の氏が異なることにより、子への悪影響が生じることを懸念する方も相当数いるものと認識をしております。
同日、同じ委員会で森まさこ法務大臣(当時)も、
○森国務大臣
国民の声に耳を澄ましていくということだと思いますが、今、直近の世論調査ですと、同一の姓を名乗るべきという方が、旧姓の使用、通称の使用を認めるべきだという人も含めて、全体の過半数いらっしゃいます。そして、別姓の制度を認めるべきという方も徐々にふえてはおりますが、まだ過半数には至っておりませんので、そのような状況も見てきて、旧姓の併記を進めて不便を解消しているところですが。
と答弁している。
2人とも「夫婦は必ず同じ氏を称するべきであるという意見」「同一の姓を名乗るべきという方」が過半数を占めると述べており、意見書が言う「賛成・容認66.9%、反対29.3%」とは真逆の答弁である。
ちなみに、この国会答弁が公明党の国会議員、あるいは他の国会議員によって批判、論破され、撤回・修正された事実はない。
公明党の地方議員は、一般国民のあずかり知らないところで、姑息な数値でっち上げを行い、民意の捏造をする前に、同党には優秀な国会議員が大勢いるのだから、まずは国会でこの政府答弁を真正面から批判し、撤回・修正に追い込んだらどうか。
1つでも多く地方議会で意見書を採択して、数の力を頼んで政府に選択的夫婦別姓制の導入を迫ろうという腹なのだろうが、いい加減卑怯な手を使って国民の目を欺くのは止めるべきである。