吊りしのぶ

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余ったマスクは「アベノマスク」ではない。フェイクを垂れ流すマスコミ報道の異様

安倍首相(当時)が2020年4月1日に、布マスクの全戸配布を行うと表明し、その年の6月一杯でおおむね配布を終了したとされる。

ところが、安倍氏が旗を振って配布した布マスクは「アベノマスク」と揶揄され、これまでさんざん批判されてきた。

そして今回、会計検査院の調査で余剰在庫が8000万枚もあり、その保管費用(2020年8月~21年3月)が6億円に上ることが判明すると、マスコミは「無駄遣いだ」と一斉に政府批判と安倍叩きに走った。

私が知る限り、多くのマスコミは「アベノマスクが大量に余って無駄な出費を招いている」という趣旨で記事を書いていた。

また岸田首相が、希望者に提供した後、廃棄すると発表したときも、「アベノマスクの廃棄決定」というような報じ方が多かったように思う。

しかし、これは真っ赤なウソであり、フェイクニュース以外の何物でもない。フェイクニュースの拡散をどう防ぐかを論じているマスコミが、嬉々としてフェイクニュースを拡散しているのだから世も末だ。

■余ったのは介護施設向けのマスク。始めたのは厚労省

高橋洋一氏が指摘しているように、余ったのは「アベノマスク」ではなく、安倍氏が布マスク全戸配布を表明した2020年4月1日以前から配布が始まっていた、介護施設向けの布マスクである。

これは安倍氏が音頭を取って始めた施策ではなく、厚生労働省の音頭によるものだ。したがって、これを「アベノマスク」と呼ぶのは不適切でありフェイクである。

当時の厚労相、加藤勝信氏が介護施設向け布マスクの配布を発表したのは2020年3月19日のこと。

また小学校、中学校、高等学校などへの配布は、全戸配布の発表後になるが、4月10日に文科省から発表されている。

4月1日の新型コロナウイルス感染症対策本部会議で安倍首相(当時)はこう発言している。

 マスクについては、政府として生産設備への投資を支援するなど取組を進めてきた結果、電機メーカーのシャープがマスク生産を開始するなど、先月(=3月)は通常の需要を上回る月6億枚を超える供給を行ったところです。更なる増産を支援し、月7億枚を超える供給を確保する見込みです。

 他方、新型コロナウイルス感染症に伴う急激な需要の増加によって、依然として店頭では品薄の状態が続いており、国民の皆様には大変御不便をお掛けしております。全国の医療機関に対しては、先月中に1,500万枚のサージカルマスクを配布いたしました。

 さらに、来週には追加で1,500万枚を配布する予定です。加えて、高齢者施設、障害者施設、全国の小学校・中学校向けには布マスクを確保し、順次必要な枚数を配布してまいります。

■全戸配布のアベノマスクが2枚単位になった理由

介護施設などへの布マスク配布(厚生労働省)と学校などへの布マスクの配布(文部科学省)が先行して企画され、介護施設への配布はすでに3月下旬から始まっていた。

この動きを受けて安倍氏は布マスクの全戸配布を決断したのである。

朝日新聞は当時、次のように報じた。

首相はまた政府対策本部の会合で、マスク不足対策の一環として、洗濯して繰り返し使える布マスクを1億枚配る方針を明らかにした。日本郵便のシステムを使い、全国すべての世帯に、1住所当たり2枚を再来週以降、感染者の多い都道府県から順次配るとしている。

来週決定する緊急経済対策にその費用を盛り込む。首相は「急激に拡大しているマスク需要に対応する上で極めて有効であると考えている」と述べた。(朝日デジタル2020年4月1日)

この時点ではまだ予算措置がなされていないことから、布マスクの全戸配布と厚労省、文科省の動きとは、別立てであることがわかる。

これを頭に置けば、なぜ全戸配布が2枚単位になったのか、その理由もわかるはずだ。すなわち、文科省による学校への布マスク配布が全戸配布よりも先行するため、小学生や中学生、高校生のお子さんのいる家庭に対して、子どもたちの分まで配布する必要はないのである。

仮に小学生と中学生の子ども2人に両親の4人家庭を考えた時、全戸配布するマスクは2枚でいいということになる。

■アベノマスクをボロクソ批判した週刊文春、同じ号で医療専門家は評価

全戸配布される「アベノマスク」については、国民の間では不評だったものの、当時、きちんとその意義を評価する記事も出ていた。たとえばITmediaの次の記事。

末尾を次のように締めくくっている。

使い捨てマスクの品薄はすぐには解消できない。マスクを常用するなら、しばらくは布マスクを洗って再利用することも考えなければならない。各家庭に配布する2枚の布マスクには、その啓発という意味もありそうだ。

私自身の経験を言えば、当時、週刊文春が「アベノマスク」批判を大々的にやっていたが、ある号で丸々1ページ使ってボロクソに批判していた。

ところがページをめくると見開きで医療専門家が答えるQ&Aのコーナーがあり、そこに「不織布マスクが入手困難な状況では、マスクをしないより布マスクをした方がずっといい。ウイルス対策では、布マスクにも一定の効果がある」という意味の回答が書かれていて、ひどく驚いた記憶がある。

布マスクに対する評価が同誌編集部のそれと真逆であり、とても同一の雑誌に掲載された記事とは思えなかったのだ。

以上のように、全戸配布されたいわゆるアベノマスクと、介護施設や小中高校など向けに配布された布マスクは分けて考える必要がある。

■初期の日経はちゃんと区別して書いていた

実際、大量の余剰が出たという当初の記事を見れば、余ったのは「アベノマスク」ではなく、主に介護施設向けのものだとはっきり書いてある。

日本経済新聞の報道を引用しよう(ウェブ版2021年10月27日)。

政府は2020年3月以降、全世帯向けのいわゆるアベノマスク約1億2千万枚と、介護施設や保育所用などとして約1億4千万枚の計約2億6千万枚のマスクを調達。新型コロナの感染状況と需要に応じて柔軟に配布する態勢をつくれず、約3分の1に相当する物資の余剰を招いた形だ。

検査院は結果を11月公表予定の20年度決算検査報告に盛り込む。会計検査院法に基づく意見表示などは見送るが、コロナを巡っては来年度以降も多額の対策費の計上が見込まれ、厚生労働省に適正な予算執行に向けて注意を促す。

複数の関係者によると、検査院は厚労省が介護施設や障害者施設、保育所などに配布するため、20年夏ごろまでに調達した布マスクについて点検。今年3月の段階で約8200万枚が配られないまま倉庫に保管されていた。

平均単価は約140円で総額約115億円相当。政府は20年春以降、段階的に介護施設などにマスクを配布。3回目となる8千万枚の配布の方針が明らかになった20年7月ごろには、既に市中でマスク不足が解消されつつあったことが余剰につながったとみられる。

この記事は正確に書かれている。「全世帯向けのいわゆるアベノマスク約1億2千万枚」「介護施設や保育所用などとして約1億4千万枚」と、きちんと分けている。これが正しい報道だ。

■会計検査院は厚労省に「注意を促した」のみ

さらに、会計検査院が11月公表の正式報告で「会計検査院法に基づく意見表示」を行わないとも書いている。

つまり、会計検査院としては、問題にするほどの無駄遣いではないと判断したわけだ。厚労省に対して「注意を促す」にとどめている。

上記のNHK7月28日の報道からは、厚労省がその時点で余剰在庫が約8000万枚あることを把握しており、何とかしてこれを配り切ろうとしていることが読み取れる。しかし、介護施設側のコメントでわかるように、現場の需要はもうなくなっていた。

厚労省はここらあたりで発想を切り替え、在庫処分か、本来の形とは別の活用法を模索し、実行に移すべきだった。

そうしておけば、問題が岸田内閣まで持ち越されることはなかっただろう。

■三流紙なみの安倍氏への中傷記事を書いた東京新聞(ウェブ版)

いずれにせよ、余ったのは「アベノマスク」ではない。介護施設向けの布マスクである。このことを知ってか知らずか、東京新聞ウェブ版などは、安倍氏へのひどい中傷記事を書いている。

もうほとんどペンによる嫌がらせ、ペンの暴力と言っていい。

世間が「アベノマスク」と介護施設向けマスクの区別がつかない(そこまで厳密にニュースを聞いていないか読んでいない)のをいいことに、安倍氏に矛先を向け、安倍氏に余った布マスクを引き取れと言わんばかりの書きっぷりだ。

やはり気になるのは、あのマスクを猛プッシュした安倍晋三さんが手を挙げるかという点だ。調達した当時の首相として、引き取る気概はあるのか。

よくこんなことが書けるものだ。8000万枚のマスクを安倍氏がどうやって引き取るというのか?

「気概はあるのか」とは、要するに「引き取る気概を見せろ」と言いたいのだろう。

ところが、その舌の根も乾かないうちに、今度は「安倍さんや事務所が国からアベノマスクを引き受けたとしても、扱いに困るかもしれない。地元の有権者に『おすそ分け』しようとすれば、寄付行為を禁じた公職選挙法に抵触しかねないからだ」などと書く。

東京新聞ウェブは、安倍氏が余剰マスクを引き受けるはずがないことは百も承知で記事を書いている。

一応、選挙区以外で配れば法律に抵触しないと“提言”しているが、今や布マスクに需要がないことはわかりきった話だ。記事を書いた記者は、全く意味の無い“提言”を活字にして悦に入っている。

■単に安倍氏の評判を落としたいだけ

こんな下らない記事を平気で公にするのが東京新聞(ウェブ版。念のため。紙媒体に載ったかまではわからない)である。

本来なら、世間の「アベノマスク」と介護施設向け布マスクの混同を正し、「余ったのはいわゆるアベノマスクじゃありませんよ。混同したらダメですよ」と書くのが新聞の務めだろう。

それをしないで、とにかく安倍氏の評判を落としたいものだから、利用できる手段は何でも使う。さすが「マスゴミ」の面目躍如といったところか。