吊りしのぶ

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井田奈穂氏がウェブ論座に寄稿、安倍首相・森法相答弁を無視して「(選択的夫婦別姓制に)賛成・容認66.9%」説を正当化

井田奈穂(「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局長)氏がウェブ論座に奇妙な寄稿をしている。

かねて当ブログで書いてきた、選択的夫婦別姓推進派(特に地方議会で別姓制導入または別姓制導入に向けた議論を国会に求める意見書を採択しようと運動している人たちやニュー選択的夫婦別姓訴訟ウェブの人たち)が内閣府「家族の法制に関する世論調査」の数値を曲解して「賛成・容認66.9%、反対29.3%」という「調査結果」をでっち上げ、世論を巧妙に誘導しているという指摘と同様の内容に対し、反論した内容だ。

この「賛成・容認66.9%、反対29.3%」という数字がデタラメだという点については、前に書いた。

おそらく同じような指摘をする人が増えてきて、椎谷哲夫氏のように精力的に反対運動をする人まで現れたので、放っておけなくなったのだろう。

井田氏は、しきりにこの反対運動が保守系団体「日本会議」が出発点になっていると強調しているが、だからどうだというのだろう。私自身、日本会議とは何の関係もないし、推進派の内閣府調査結果の読み方はおかしいという指摘は、選択的夫婦別姓に賛成するジャーナリストも指摘していることだ。

この記事を書いた窪田順生氏は、「個人的な考えを言わせていただくと、夫婦別姓は大賛成だ」と書きながら、推進派の世論調査結果の利用の仕方が「あまりに杜撰な世論操作」だと厳しく批判している。

選択的夫婦別姓に賛成のジャーナリストまで推進派の世論操作を批判!

同氏は、内閣府の調査結果について、

 実はこの調査にはもうひとつ、「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字を改めた人が婚姻前の名字を通称としてどこでも使えるように法律を改めることはかまわない」という回答があった。要するに、選択的夫婦別姓には反対だが、仕事などで困る人がいないように婚姻前の姓も法的効力があるように法改正しましょう、という「ソフトな反対派」だ。このように答えた方がなんと24.4%もいたのである。

 ここをカウントすると、「反対派」は53.7%。純粋な「選択的夫婦別姓賛成」を上回ってしまうのだ。

と書く。窪田氏の主張は、推進派の言う「賛成・容認66.9%、反対29.3%」を否定するものだ。

夫婦別姓に賛成する窪田氏が日本会議関係者とは思えない。日本会議関係者であろうとなかろうと、おかしいものはおかしいのである。

どんな理屈を並べて「賛成・容認66.9%」を正当化しようと、この数字を「選択的夫婦別姓制度の導入に賛成・容認した割合」と見ることはできない。

もちろん、井田氏が寄稿の中で指摘しているように、単に現行法の改正に賛成・容認した割合ということなら66.9%で間違いはない。

しかし、そこでの現行法の改正には、選択的夫婦別姓制の導入だけでなく、通称使用の拡大のための法改正も含まれる。後者は選択的夫婦別姓制への容認では全くない。「通称」という言葉自体が「戸籍姓」の存在を前提としたものだからだ。

法改正が実現して夫婦別姓を選んだ人には、もはや「通称(婚姻前の名字・姓)」は存在しないのである。結婚しても戸籍姓を変えることなく、そのまま使えばいいのだから。

ところが、井田氏は、内閣府世論調査の選択肢にある「通称使用をどこでも使えるように拡大する」に賛成の人は、選択的夫婦別姓制を「容認」する人だという。そんなことはあり得ない。曲解も甚だしい。

内閣府世論調査で「通称をどこでも使えたらいいな」と考える人は、同時に「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべき」と考える人でもある。ということは、戸籍姓は夫婦同姓であるべきと考えているわけだ。この人たちを、選択的夫婦別姓制を「容認」しているなどと解釈できるわけがない。

夫婦別姓の人がいてもいい」と考える人が、同時に「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべき」と考えるだろうか。ありえない。

総理大臣と法務大臣の答弁を無視する井田奈穂氏

何度も書いていることだが、この内閣府世論調査結果については、政府答弁が出ている。

2020年2月4日、当時の安倍晋三総理は衆議院予算委員会で次のように答弁した。

安倍内閣総理大臣 平成二十九年に内閣府が行った世論調査では、法改正により旧姓の通称使用の機会を広げるべきであるという意見を含め、夫婦は必ず同じ氏を称するべきであるという意見が過半数を占める状況にあったと承知をしております。

 このように、世論調査の結果においても国民の意見はなお分かれており、また、国民の中には、夫婦の氏が異なることにより、子への悪影響が生じることを懸念する方も相当数いるものと認識をしております。

同日、同じ委員会で森まさこ法務大臣(当時)も同様の認識を示した。

○森国務大臣 今、直近の世論調査(注=上記内閣府世論調査のこと)ですと、同一の姓を名乗るべきという方が、旧姓の使用、通称の使用を認めるべきだという人も含めて、全体の過半数いらっしゃいます。そして、別姓の制度を認めるべきという方も徐々にふえてはおりますが、まだ過半数には至っておりませんので、そのような状況も見てきて、旧姓の併記を進めて不便を解消しているところですが。

と答弁している。

これは国会会議録で検索すれば、誰もが確認できる事実だ。

安倍首相も森法相も、通称使用拡大のための法改正に賛成と答えた人を「選択的夫婦別姓制の導入を容認」とは受け取っていない。井田奈穂氏とは違って、夫婦同姓を支持する意見とみているのである。

「賛成・容認66.9%、反対29.3%」説を取る井田氏は、総理大臣と法務大臣の答弁を真っ向から否定したわけだ。

しかし、事前質問がある場合、首相や大臣の答弁は関係する官僚がチェック済みである。つまり、内閣府世論調査の結果について、内閣府法務省などは「(夫婦同姓制であるべきという意見に)賛成が過半数を占める」と理解しているのである。これが正しい理解だ。

この政府答弁を無視して「(選択的夫婦別姓制に)賛成・容認66.9%、反対29.3%」(=夫婦同姓制に賛成する人は29.3%しかいない)という虚偽の数値を世間に流布している推進派は、あからさまな世論誘導を行っているとしか私には思えない。

ここ2、3年、選択的夫婦別姓制に賛成する人が増えたように見えるのは、そうした虚偽宣伝や世論誘導に乗せられた人が増えたためだろう。

利用される「何だかよくわからないけど……賛成」の人たち

マスコミは、選択的夫婦別姓制を導入した場合の悪影響や同制度の問題点については、ほとんど言及しない。要するに、この制度の導入に伴うデメリットや推進派の隠された狙いが世間には周知されていないのである。

私の周りでも「何だかよくわからないけど、夫婦別姓にしたい人がいるなら、そうさせてあげればいいんじゃない」程度の認識しか持たない人がほとんどだ。

実際、「選択的夫婦別姓制度の法制化に向けた議論を求める意見書」を採択した某地方議会でさえ、私が「賛成・容認66.9%、反対29.3%」というでっち上げ記述について抗議したところ、市議会で抗議内容を検討した結果を伝えてくれた事務局の人は、「うちは選択的夫婦別姓に賛成でも反対でもない。中立ですから。国会でよく議論してほしいという意味で採択しただけ」と、市議会議長だったか議院運営委員長だったか忘れたが、偉い立場の人の発言を伝えてくれた。

「法制化に向けた議論を求める意見書」に賛成した地方議員が、実際には選択的夫婦別姓制に「賛成でも反対でもない。中立だ」と言うのである。つまり、よくわかっていないのだ。

選択的別姓制を導入すれば、もはや後戻りのできない重大な制度改革になる。

それなのに、推進派は「何だかよくわからない」とか「賛成でも反対でもないけど議論するのはいいんじゃない」と言う人をうまく丸め込んで、「とにかく世論調査で賛成・容認している人が多いんだから早く法改正すべき」と、ウソがばれないうちに、またデメリットや問題点が周知される前に押し切ってしまおうと考えているのだろう。

しかし彼らがやっているでっち上げが白日の下にさらされ、選択的夫婦別姓制のデメリット、弊害などについての情報が周知されれば、自ずと反対する人は増えるはずだ。今はまだ自分事として考えていない人が多い。

井田氏は、全国陳情アクションなどによる「『選択的夫婦別姓』意識調査」を“ゴミ”と呼んだ社会調査論の専門家に公の場で反論すべき

週刊新潮の昨年6月24日号に「噓だらけ『世論調査』の大半はゴミ」という特集が載り、大阪商業大学学長の谷岡一郎氏(専門は社会調査論)が、選択的夫婦別姓・全国陳情アクションと早稲田大学法学部・棚村政行研究室が合同で行った「47都道府県『選択的夫婦別姓』意識調査」(インターネットモニター調査)を“ゴミ”と呼んで批判した。

一定の結論を誘導するための調査としか考えられないわけで、はっきり“ゴミ”とわかる点で教材としてはおもしろい。

“ゴミ”とは、文字通りのゴミのことではなく、ゴミのように価値がないものという比喩的表現だ。

同調査は「選択的夫婦別姓に賛成が7割を超えた」として多くのマスコミで報道されたのだが、谷岡氏の分析が正しければ、利用価値はないということになる。

井田氏には、是非とも公の場でこの批判に反論してほしいものだ。