吊りしのぶ

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凶弾に倒れた元首相を「安倍」と呼び捨て。山上容疑者の伯父はなぜ遺族に謝罪しないのか?

週刊新潮7月21日号で安倍元首相射殺に関する特集記事を読んだ。容疑者の伯父が、旧統一教会と容疑者の母親との関係、過去の家庭の不幸、献金の実態などについて証言している。

しかし、これを読んで強い違和感があった。いや、違和感どころか憤りと言うべきだ。

この伯父なる人物は元首相射殺犯の親族である。自殺した山上容疑者の父親の兄(だから「叔父」と書かず「伯父」と書くのだろう)であり、破産した山上家を経済的にも支援してきた。

しかも、事件直後、その日のうちに容疑者の母親を自宅に呼び出してかくまっている。

それだけ射殺犯とは近い関係の親族でありながら、新潮の記事をいくら読んでも、自分の甥が凶悪な犯罪を犯したことについて謝罪の言葉がないのだ。

本来なら母親が直接、事件を起こした本人に代わって謝罪するのが筋だろう。別に会見を開いて世間に謝罪せよとまでは言わない。容疑者はもう40歳を過ぎた成人だ。犯した犯罪の責任は全面的に容疑者本人にある。

しかし、「母親の宗教へののめり込みがもとで旧統一教会に恨みを抱いた。最初は教組の妻を狙い、それができないので安倍元首相を狙った」という供述が事実なら、原因を作ったのは母親である。

「このたびは息子がとんでもない犯罪を犯してしまい、申し訳ありません」

凶弾に倒れた安倍氏の遺族に、容疑者本人に代わって謝罪するのが筋ではないのか。社会常識に照らして、最低でもこれだけは必ずやるべきと自分は思う。

ところが、この伯父なる人物は、その謝罪をすべき母親を自らの意志でかくまったのだ。それならば、母親の保護者として、この伯父が代わって謝罪しなければおかしい。

しかし、週刊新潮の記事をいくら読んでも、この伯父は、自分の身内が安倍氏射殺という許しがたい凶悪犯罪を犯したことについて一言も謝罪の言葉を述べていない。安倍氏の遺族に向けた謝罪もない。

伯父の証言は、ただただ旧統一教会が悪いの一点張り。息子の不祥事を巡って母親に「息子の代わりに世間に対し、安倍元首相の遺族に対し、ちゃんと謝罪しなさい」と促してもいない。母親がそれをしないなら、自分が代わりにしようというそぶりも一切見せない。

これっておかしくないか?

しかも、こんなことを言っている。

「(徹也は)生活だけではなくて、命まで奪われかけた。普通に見たら、母が統一教会に納めた金が安倍に流れていると、そうなりますわな」

なんと安倍元首相を「安倍」と呼び捨てにしている。

母親が旧統一教会献金したお金が安倍元首相に流れている、それは普通に見たらそうなるなどと、あり得ないような暴言を吐いている。

甥の抱いた妄想を、さも自然なことのように弁護しているのだ。

報道では、私が見たテレビや新聞は一様に、「旧統一教会に対する恨みがなぜ安倍元首相に向かったのか? そこには飛躍がある」として、その飛躍の原因の究明が捜査の焦点の一つだとしている。

警察が流す情報も「容疑者は安倍元首相が旧統一教会と関係があると思い込んだ」というものだ。安倍氏に銃弾を向けたのは容疑者の「思い込み」によるもの、というのが警察の判断である。

普通に見たら、旧統一教会への恨みが安倍元首相に向かうとは考えられないからだ。

まして、旧統一教会に納めた献金がそのまま安倍氏側に渡っているなどと誰が考えるだろうか。

妄想も妄想、ふざけたことを言うなと言いたい。一体何の根拠があるのか?

ある意味では、容疑者が抱いた妄想よりも、もっと妄想の程度がひどいと思う。

容疑者は「安倍元首相が旧統一教会と関係がある団体に送ったメッセージ動画を見て犯行を決意した」と供述しているのであり、「母が統一教会に納めた金が安倍に流れていると思った」などとは供述していない。

伯父は、ここまで開き直る以上、「旧統一教会に納めた献金が安倍元首相に流れている」と述べたことについて立証する責任がある。

この人は、自分の身内が安倍元首相を殺害したにもかかわらず、殺害された当人を「安倍」と呼び捨てにし、謝罪もお悔やみも述べず、不当に奪われた献金を受け取ったのは安倍氏なのだから、悪いのは旧統一教会安倍氏だ、甥っ子がそう考えたのは当然だと言わんばかりだ。

こういうのを責任転嫁というのではないか。

どんな事情があるにせよ、一国の総理大臣の命を奪った事実は消えることはない。情状酌量の余地が見られるにせよ、殺人は殺人である。

謝罪するどころか呼び捨て。悪いのは甥ではなく安倍氏の方であり、安倍氏は襲撃されて当然とでも言いたげな語り口には、強い怒りを覚える。

繰り返す。

伯父は、容疑者がそんな供述をしていないのに、「容疑者の母親が納めた献金が安倍元首相に流れた」と述べた点につき、具体的な証拠を挙げて立証せよ。

これについては、「母親が納めた献金が直接、安倍元首相への献金として使われた」という事実を証明する必要がある。

普通に見たら、旧統一教会が安倍元首相を応援していたのなら、同教会が安倍氏に政治献金することは十分考えられる。しかし、その献金の原資に容疑者の母親から不法・違法に取り立てた献金が使われたかどうかは全く自明ではない。

そこには、とてつもない飛躍がある。同教会が信者から受け取っていた献金の中には、合法的なものもあったはずだ。全てが違法、不法、不当なんてことがあるだろうか? いくら何でもそんな決めつけをするのは、マイノリティー宗教への差別だろう。

15日の産経新聞で読んだが、「日本で集めた現金は、発祥地の韓国などでの活動に使われているという指摘もある」そうだ。

「普通に見たら、母が統一教会に納めた金が安倍に流れていると、そうなりますわな。」

こんな見方をするのは全然普通じゃない。自分には、この伯父もまた途方もない妄想をしているように思えてならない。