吊りしのぶ

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日刊ゲンダイは「第2、第3の山上徹也容疑者」を出したいのか!~「国会議員112人リスト」

日刊ゲンダイ(デジタル版)がとんでもない記事を公開しているのを読んでビックリした。

夕刊紙の日刊ゲンダイといえば三流大衆紙、デカデカと見出しを打って政府や自民党の批判をしてきたことで有名だが、これはもう「批判のための批判」を通り越し、面白がって社会を混乱させる愉快犯の域に達していると思う。

昨日(7月17日)受け取ったダイヤモンド・オンラインのメルマガ冒頭にはこう書かれている。

宗教団体を憎んでいるはずの山上容疑者の頭の中では、なぜか教団よりも安倍氏の方を自分の人生を狂わせた「主犯」として強い殺意を抱いていた。なぜこんな論理の飛躍をするのか。

実は今、日本でも山上容疑者のような考え方をする犯罪者が起こす事件が急速に増えている。

凶行に及んだ背景と、山上容疑者の飛躍した思考回路を考えれば、これほど典型的なヘイトクライムはない。

「なぜこんな論理の飛躍をするのか」とは、多くの人が感じている疑問だ。

安倍元首相が凶弾に倒れたのは、旧統一教会と「ズブズブ」の関係だったから?

山上容疑者の動機の解明、すなわち、なぜ「こんな論理の飛躍」をおかして凶行に及んだのかという問いへの答えは、警察の捜査が終わり、その後の裁判まで終わらなければ、確定的な答えは得られない。

しかし、日刊ゲンダイ(デジタル版。以下同)は、いとも簡単に答えを出したように見える。

つまり、安倍元首相が旧統一教会とズブズブの関係だったから、というものだ。

はっきりそうとは明言していない。しかし、記事を読む限り、読者にそうほのめかしていることは明らかだ。

日刊ゲンダイは、

山上徹也容疑者(41)の供述によれば、昨年9月に安倍元首相が統一教会の関連団体「天宙平和連合(UPF)」のイベントにリモート出席した動画を見て殺害を決意したという。

と書き、「実際、旧統一教会の政界への浸透は凄まじい」として、ジャーナリスト鈴木エイト氏から「旧統一教会と関係のある国会議員112人のリスト」を入手したという。そのうち98人が自民党議員だそうだ。

そして、第2次安倍内閣以降、これら「旧統一教会と関係のある国会議員」が多く大臣、副大臣政務官などに起用されてきたという。

そして、

大メディアは旧統一教会を糾弾するだけでなく、政治とのズブズブ関係もしっかり報じるべきだ。

と締めくくっている。

教団トップが命を狙われ、教団施設に銃弾が撃ち込まれたのに、犯人ではなく旧統一教会を糾弾せよという日刊ゲンダイ

山上容疑者は、当初、旧統一教会の教団トップ(韓国人教祖の未亡人)を殺害しようとし、計画実行の機会をうかがっていた。また、安倍元首相暗殺の前日、日本の教団施設で試し撃ちを行っている。

この事件では、旧統一教会は被害者ではないか。最初の計画がすんなり実行されていたら、凶弾に倒れたのは安倍元首相ではなく、韓国人の教団トップだっただろう。

いかなる理由があろうと、人殺しは許されないのではなかったのか。戦争などのように合法的に殺人が許される事態を除けば、人殺し、特に殺意を秘めた正真正銘の殺人は絶対悪のはずである。

にもかかわらず、この日刊ゲンダイは、被害者であるはずの旧統一教会を糾弾すべきと言い、「政治とのズブズブ関係」もしっかり報じるべきだという。

要するに、山上容疑者が殺意を抱いた背景には旧統一教会への深い恨みがあり、その恨みの原因を作ったのは旧統一教会だから、同教団は糾弾されて当然というわけだ。

これは自業自得の論理である。

警察は「思い込み」を強調するが、日刊ゲンダイ自民党と旧統一教会は「ズブズブ関係」にあると断言

安倍元首相は旧統一教会関連の団体にメッセージ動画を送ったことで山上容疑者から「旧統一教会と関係がある」と逆恨みされたのだが、警察は「旧統一教会と関係があると思い込んだ」と、あくまで「思い込み」だったとする。

しかし日刊ゲンダイは、旧統一教会と政治、特に安倍元首相を含む自民党は「ズブズブ関係」にあると特筆大書している。

この文脈では、山上容疑者の恨みの矛先が安倍氏に向かったのは別に不思議でも何でもなく、ごく自然なことだという結論が導かれる。

山上容疑者の伯父も週刊新潮で似たようなことを言っていた。

「(徹也は)生活だけではなくて、命まで奪われかけた。普通に見たら、母が統一教会に納めた金が安倍に流れていると、そうなりますわな」

だから山上容疑者は安倍氏銃口を向けたというのである。(昨日のブログ参照)

日刊ゲンダイの場合、そこまではっきり書いてはいないけれど、話の流れから、読んだ者は誰でも上記のような結論を思い浮かべるだろう。

この解釈を裏付けるのは、記事中にリンクされた「惨劇は避けられた…安倍晋三氏は16年前、UPFをめぐる弁護団の公開質問状をスルーしていた」という、同じ日刊ゲンダイの記事だ。

安倍氏が旧統一教会の関連団体UPF(天宙平和連合)との関係を断っていたら、惨劇は起こらなかったと書いてある。

逆に言えば、安倍氏は、このUPFという団体と関係を持っていたからこそ襲撃された、ということになる。

しかし、とここで考えてみる。

関連団体にメッセージ動画を出したこと=旧統一教会とべったりという決めつけ

確かにこのUPFが旧統一教会の関連団体であることは事実らしい。

が、だからといって、これまでにトランプ元大統領やペンス元副大統領、ポンペオ元国務長官カンボジアのフン・セン首相、前国連事務総長潘基文氏らの参加実績があるUPFを、旧統一教会と一体不可分の組織と決めつけることができるのか。

昨年5月の大会では、「2020年にノーベル平和賞を受賞した世界最大の人道支援組織である国連世界食糧計画(WFP)のデビッド・ビーズリー事務局長」もメッセージを寄せたという。

しかも、UPFはアメリカの国連NGOである。

国連NGOはただのNGOではなく、そこら辺の市民団体が簡単になれるものではない。

統一教会と一体不可分の組織が国連NGOになれるはずがないのだ。

UPF(天宙平和連合)が統一教会と一体なら、国連NGO資格を持てるはずがない

ウィキによると、国連NGOには「国連憲章における協議資格を持つNGO」 と「 国連憲章における協議資格を持たないNGO」の2種があり、UPFは前者の「国連憲章における協議資格を持つNGO」だそうだ。

テレビで「旧統一教会と一体の組織だ」とまことしやかに言う人を見たが、おかしいではないか。そんな組織がどうして国連憲章における協議資格を持つNGOになれたのだ。

(ここにNGO<非政府組織>や国連NGOについての説明がある)

UPFが旧統一教会のダミー団体で、同教団はこのダミー団体を隠れ蓑に名声を高め、その名声を利用して霊感商法の被害者を生んでいるとしたら、その加害行為にお墨付きを与えているのは国連ということになる。

そんなことがあり得るだろうか?

それが事実なら、国連はとっくに同団体から国連NGO資格を剝奪しているだろう。

そうなっていないのはなぜか?

答えは簡単だ。このUPFなる団体は、旧統一教会のダミー団体などではないということだ。

創価学会公明党の関係を考えてみよう

設立者が教組で同一人物だとしても、活動目的が違えば、違う団体を作ることはあり得るし、それはごく自然なこと。

創価学会公明党の関係を見れば分かる。公明党創価学会のダミー団体と言う人は、今ではよほどの創価嫌いぐらいしかいない。これは当たり前で、両者は活動目的が違うからだ。

創価学会は布教(折伏)して信者を増やすのが目的の宗教法人。

公明党は、創価学会の教義を下敷きにして、学会員でなくても受け入れられるもっと包括的な政治信条や政策を掲げ、それを実現することが学会員のみならず、他宗教の人も無宗教の人も一般の人も広く幸せにできると信じて活動している政治団体(政党)だ。

信者でなくたって、その政治信条に共鳴すれば選挙で票を入れる。

公明党の公約に共感した人は、創価学会の教義を信じたことになるだろうか。信者になったも同然などと言えるだろうか。

そんなことはあり得ない。冷静に考えれば誰でも分かる理屈である。

公明党に票を入れたり、公明党の集会に参加したり、公明党の集会でメッセージを述べたりする人が、創価学会と「ズブズブ関係」にあると決めつけることはできない。

早い話、「公明党はいいが、創価学会は嫌いだ」と言う人もいる。

全く同じことが旧統一教会とUPFの関係についても言える。

いや、そんなことはないと言う人は、日本における旧統一教会のすさまじい霊感商法被害の実態が、過去に日本の弁護士団体やマスコミによって広く報道され、アピールされたにもかかわらず、なぜUPFが「国連憲章における教義資格を持つNGO」になれたのか、なぜいまだにその資格を剝奪されていないのか、なぜ前国連事務総長ノーベル平和賞受賞団体までがメッセージを寄せたりするのか、その理由をきちんと説明すべきだ。

同じ人物が設立したとしても、そのことを公にしている以上、活動目的が違えば、それは別個の組織である(同一人物が設立したことを隠していれば話は別だが)。

その別個の組織を旧統一教会の関連団体、友好団体と呼ぶのは正しい。だが、UPFをはじめいくつもあるそれらの団体とつながりを持ったからといって、旧統一教会と「ズブズブ関係」にあると断じる根拠にはならない。

リストに載った国会議員たちは本当に旧統一教会と「ズブズブ」なのか?

さて、問題はここからだ。

日刊ゲンダイが公にしたリストに載っている国会議員は、本当に統一教会と「ズブズブ」なのか?

リストを見ても、全く説得力が感じられない。

まず世界日報統一教会の「機関紙」と書いている時点でデタラメだと分かる。世界日報は無料のウェブ版が公開されている。これを見て旧統一教会の機関紙と思う人がいたら、よほど想像力のたくましい人だ。

統一教会がらみの記事などほとんどない。ごくたまに目に入る程度。

宗教団体の機関紙なら、信者向けの宗教講話や、信者予備軍を信者にするためのありがたいお話や、教団本部の近況、全国各支部の状況、活躍する信者の紹介など、信者にとって有益な(しかし信者でない人にとっては意味のない)情報をたくさん載せるのが普通だろう。

世界日報の記事にはそんなものは全くない。これを「旧統一教会の機関紙」とヌケヌケと書ける神経は、想像を絶するものだ。意図的なレッテル貼りと言うべきか。

日刊ゲンダイの記者は、おそらく世界日報を読んだことがないのだろう。電子版は月1000円プラス税だから、試しに読んでみることをお勧めする。

世界日報には、たまに与党議員や野党議員がインタビュー、対談などで登場する。同様に、文化人も大勢登場する。

一例を挙げよう。世界日報は過去に『日本の針路を問う』という本(インタビューや対談を集めたもの)を出しているが、そこには、中曽根康弘氏、渡部昇一氏、中西輝政氏、岡崎久彦氏ら保守政治家、有識者と並んで、焼き物で人間国宝伊藤赤水氏や世界的に有名なコシノジュンコ氏、東大教養学部学部長の浅島誠氏、東京藝大副学長の宮田亮平らの名前が並んでいる。

世界日報にインタビューで登場しただけで旧統一教会と「ズブズブ関係」にあるというなら、伊藤赤水氏、コシノジュンコ氏、浅島誠氏(現東大名誉教授)、宮田亮平氏(元東京藝大学長、元文化庁長官)らも旧統一教会と「ズブズブ関係」にあると見なければ筋が通らないが、日刊ゲンダイはそういう事実があると証明できるのか?

新聞なのだから、いろんな人が登場するのは当たり前。世界日報にインタビューが載ったから旧統一教会と「ズブズブ」なんてことはあり得ない話だ。

かつて「赤旗」日曜版に自民党古賀誠自民党幹事長が登場したことがある。あの時は、元幹事長ともあろう者が天敵の共産党の機関紙に出てどうするんだと大いに話題になった。

これに日刊ゲンダイの論理を適用すれば、「赤旗」日曜版にインタビューが載った古賀誠氏は日本共産党と「ズブズブ」だったことになる。しかし、自民党を離党したわけでもない古賀誠氏が、共産党の賛同者になるとか、共産党系の組織から献金を受け取るとか、そんなことがあるはずがない。

リンクされたリストを見ると、山谷えり子議員は、「機関紙」(世界日報のこと)にインタビューで載っただけで、旧統一教会と「ズブズブ関係」にある1人にされてしまっている。バカじゃなかろうか。論理の飛躍も飛躍、いくら飛躍しても手が届かないくらいの大飛躍だ。

ワシントン・タイムズの全面意見広告に名を連ねると旧統一教会「ズブズブ」とされてしまう不思議

麻生太郎副総裁は、ワシントン・タイムズの全面意見広告に名を連ねたことで、旧統一教会と「ズブズブ」だとされた。

ワシントン・タイムズ統一教会系のアメリカの日刊紙。共和党寄りで有名だけれど、アメリカの保守系紙として、日本の大手紙にも時々、名前が載る。

例えば、朝日新聞の「コラムニストの眼」(ニューヨーク・タイムズからの抄訳)執筆者、デイビッド・ブルックスは、2017年9月8日の紙面に、

1984年から2003年にかけて、私は、(いずれも保守系メディアの)ナショナル・レビュー誌やワシントン・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルの論説ページ、ザ・ウィークリー・スタンダード誌で仕事をしていた。

と書いた。

ニューヨーク・タイムズのコラムニストも、以前はワシントン・タイムズで仕事をしていた。そしてそういう経歴を持つ人物のコラムを、朝日新聞が抄訳で連載していたのだ。

では、ワシントン・タイムズで直接働いたことのあるこのデイビッド・ブルックス氏は、旧統一教会と何か関係があるのだろうか? インタビューが載ったどころじゃない。そこで働いていたのだ!

日刊ゲンダイの論理からすると、この人物は旧統一教会に体ごと浸かっていたことになるのでは?

しかし、朝日新聞がコラムを転載しているくらいだから、そんな事実はないはずだ。

また、ワシントン・タイムズで最近まで記者をしていたビル・ガーツ氏はスクープ記事を連発した人で、『誰がテポドン開発を許したか―クリントンのもう一つの“失敗”』という著作が、かつて全米ベストセラーになったそうだ。

では、この本を翻訳出版した会社はどこでしょう?

答えは文藝春秋。1999年に邦訳が出ている。アマゾンの解説には、

北朝鮮には基本合意を破られ、中国やロシアにはその弱腰を見すかされ…。リークされた国家機密をもとにクリントン外交のまやかしを暴いた衝撃の全米ベストセラー

とある。

政治家がワシントン・タイムズの全面意見広告に名前を出しただけで旧統一教会と「ズブズブ」と言うからには、日刊ゲンダイは、ワシントン・タイムズ記者が書いた本をわざわざ翻訳して日本で売り出す文藝春秋も、当然、旧統一教会と「ズブズブ関係」にあると言わなければおかしい。

そういえば、文藝春秋は安倍元首相の著書『美しい国へ』の版元だった。

日刊ゲンダイが、文藝春秋と旧統一教会との「ズブズブ関係」を指摘も批判もしないのはなぜ?

日刊ゲンダイの論理を適用すると、こういうおかしなことがたくさん出てくる。それはそうだ。そもそも矛盾だらけの論理なのだ。子供じみていると言ってもいい。

ちなみに、昨年、NHKの国際報道がアメリカメディアの思想的偏りを紹介した際、次のような図を出していた。

2021年4月30日のNHK国際報道2021より

詳しくは、以下の拙ブログを読んでいただくとして、この図にワシントン・タイムズの名前があることに注目してほしい。

ワシントン・タイムズは右から2番目のRの一番下に赤字で書かれている。

図は右から「超保守、保守、中道、リベラル、超リベラル」と分類することもできるし、「右派、準右派、中道、準左派、左派」と分類してもいい。

とにかく、この図を見るとワシントン・タイムズは、FOXニュース(オピニオン)ほど右寄りでないことが分かる。

ちなみに、日本でお馴染みのCNNやバズフィードニュースやハフポスト、ニューヨーク・タイムズ(オピニオン)は、全部一番左、つまり左派ないし超リベラルという位置付けである。

なぜ旧統一教会「ズブズブ」リストに、ジェンダー平等推進論者の猪口邦子氏の名前があるのか?

最後にもう1人だけ。

このリストがナンセンスだと思うのは、猪口邦子議員の名前が載っていること。

猪口氏はジェンダー平等の推進論者。自民党内ではリベラル派だ。

しかし、旧統一教会は反対派から男尊女卑だと批判されている。それが事実なら、この分野に関する限り、水と油のような関係のはずで、こんなリストに名前が載ったのを見て一番驚いているのは猪口議員本人ではないだろうか。

長くなってしまったけど、ここからこの投稿の一番重要な論点に入る。

日刊ゲンダイはいともあっさり政治家リストを公開した。公開にあたって裏付けはとったのか? これらの政治家たちが本当に旧統一教会と「ズブズブ関係」にあるという証拠はつかんでいるのか?

世界日報にインタビューが載ったとか、ワシントン・タイムズの意見広告に名前を出したとか、イベントに祝電を送ったとか、会報に対談記事が載ったとか、そんなものは何一つ「ズブズブ関係」の立証にはつながらない。

イベントに祝電を送るなんて、どの政治家もいろんな宗教の関連団体に対してやっていることだろう。その程度で「ズブズブだ」と断じるようでは、山上容疑者が抱いた「思い込み」と大して変らない。

根拠のあやふやな政治家リストを公開して、霊感商法の被害者の恨みの矛先が彼らに向かったら、日刊ゲンダイは責任を取れるのか!

恐ろしいのは、旧統一教会霊感商法で被害を受けた者たちが、この政治家リストを見て「思い込み」を募らせ、その恨みの矛先をリストに上がった政治家たちに向けることだ。

リストを見た元信者やその家族らが、「第2、第3の山上徹也」となって要人暗殺を仕掛けるかもしれないと日刊ゲンダイは考えなかったのだろうか。

日刊ゲンダイの記事とこの政治家リストは、彼らの怒りの火に薪をくべるようなものだ。山上容疑者同様に、非合法的手段によって恨みを晴らそうと考える者が出ない保証はない。

かつて、政治学者の山口二郎氏が、安倍内閣憲法解釈の変更を行ったとき、反対集会の場で「安倍に言いたい。お前は人間じゃない!叩き斬ってやる!」と叫んだことがあった。

この「叩き斬ってやる!」には「民主主義の仕組みを使って」という前段があるけれど、その後「叩き斬ってやる!」という言葉だけが独り歩きした。「民主主義の仕組みを使って」という前段があることを多くの人は知らないだろう。

この発言について、日大教授で思想史家の先崎彰容(あきなか)氏が、産経新聞「正論」で「テロを煽るもので非常に危険。山口二郎に代わって俺がやってやる、という人間が出てくる恐れがある」という趣旨の批判をしていた。

全くその通りと思った。日刊ゲンダイの政治家リスト公開は、これと同じ過ちを犯している。

安易に、ろくな根拠もなくこんなリストを公開して、万が一彼らがテロの標的にされたら日刊ゲンダイはどう責任をとるつもりなのか?

冒頭の方で引用したダイヤモンド・オンラインの指摘にあるように、今は「日本でも山上容疑者のような考え方をする犯罪者が起こす事件が急速に増えている」という状況だ。

そんな中でこんなリストを出せば、テロを誘発する危険性が高まるかもしれない。そう考えるのが正常な理性ではないだろうか。

彼らが本当に旧統一教会と「ズブズブ関係」にあって問題だというなら、誰が見ても納得できる証拠をそろえ、本人の弁明なり反論なりも聞いた上で、慎重の上にも慎重を期して報じるべきだ。

そういう努力をせず、全く説得力のない理由で彼らが旧統一教会と深い関係があるかのように報じれば、それを真に受けて「こいつらが統一教会とズブズブなのか。許せねえ!」と考える人間が出てくるかもしれない。

第2、第3の山上容疑者の出現だ。

もしもそんなことが起こったら、日刊ゲンダイはどう責任を取るつもりか! 起こってからでは遅いのだ。

記事は、反統一教会機運の高まりという時流に便乗した、極めて底の浅い、無責任なペンの暴力である。ただちに政治家リストを撤回すべきだ。猛省を求めたい。