毎週、愛読している「週刊新潮」までが事の本質を見失い、旧統一教会叩きに血眼になっていてガッカリした。
また、「政府自民党そして日本社会を震撼させる巨大な疑惑の一部」とか、「この国の統治機構を根底から揺るがすような『大スキャンダル』」とか、おどろおどろしい言葉で世論を煽っているツイッターを見たが、呆れて物も言えない。
この問題について、産経新聞のコラムで元「週刊文春」編集長、現「月刊Hanada」編集長の花田紀凱氏が書いているのを読んだ。
これが偏りのない妥当な見方だろうと思う。
話が妙な方向に逸(そ)れてきた。
安倍晋三元総理を射殺した、山上徹也容疑者の母が統一教会信者だった。多額の寄付で山上容疑者が統一教会に恨みを持った。統一教会は悪。選挙で応援してもらった議員はケシカラン。
テレビのワイドショーが例によって大騒ぎ。『赤旗』が張り切っている。
たかだか現在の信者は10万人(8万人とも)、多額の献金をしているわけでもない。選挙ともなれば、その程度の組織でも、反対に回られるよりは。それだけの関係だろう。
共産党の志位和夫委員長はツイッターで、「〝何が悪いのか〟と開き直りを始めた」と書いているが、実際「何が悪いのか」。
統一教会の名称変更問題もそうだ。じゃ、新聞はその時(平成27年)に反対キャンペーンでも張ったのか。
で、今週の週刊誌。
『週刊文春』(8月4日号)の右柱が「統一教会の闇 自民党工作をスッパ抜く!」、左柱が「安倍元首相暗殺 山上徹也の570日」。
『週刊新潮』(8月4日号)「底なし政界汚染 安倍元総理と『統一教会』ズブズブの深淵(しんえん)」。
両誌ともワイドショーレベル。「闇」とか「深淵」はオーバー。
「週刊新潮」までが「国会議員112人」リストを無批判に取り上げ、「底なし政界汚染 安倍元総理と『統一教会』ズブズブの深淵」なんてくだらない特集をやるとは!
「週刊新潮」で一番ガッカリしたのは、例の日刊ゲンダイ(デジタル版。以下同)が載せた「国会議員112人」リストを無批判に取り上げ、特集「底なし政界汚染 安倍元総理と『統一教会』ズブズブの深淵」の根拠に使っていることだ。
「新潮」は実際にリストに上がったメンバーを取材している。112人のうち何人取材したのか知らないが、このリストをもって「底なし政界汚染」の根拠にすることなんかとてもじゃないができない。
それは日刊ゲンダイ掲載のリストをざっと見ただけで一目瞭然だ。
「新潮」は取材して裏取りをしたわけだから、この112人のリストはいい加減なものだと気が付いたはず。
それでも、素知らぬ顔で誌面に載せている。
前にも書いたように、このリストは日刊紙「世界日報」を「統一教会の機関紙」と書いている。これだけで「はあ? 何言ってんの!」と、開いた口がふさがらない。
世界日報については、河村たかし・名古屋市長が記者会見を行った。
名古屋市の河村たかし市長は27日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と関係が深いとされる「世界日報」の取材を受けたことについて「旧統一教会と世界日報社は別法人で、特定団体の機関紙ではないと聞いている。マスコミの取材に応じることは、当然の務めだと認識している」と述べた。
しごく真っ当な認識だ。
世界日報は「統一教会系」の日刊紙で有名だが、「統一教会の機関紙」ではない。そんなのは実物を読めば分かることだ。ウェブ版もあるし、安価な電子新聞(紙媒体の新聞をそのままPDF化したもの)もある。
日刊ゲンダイは、この新聞にインタビューで登場した山谷えり子氏(当時、国家公安委員長)を「旧統一教会と関係アリ」「ズブズブ関係」にある国会議員の一人としている。
しかし、そんな理屈が通るなら、世界日報にインタビューで載った人物はみんな旧統一教会と関係アリということになるだろう。
わかりきった話だけれど、統一教会系とはいえ一般新聞なのだから、政治家を含め著名人、有識者、自治体首長、文化人、芸能人らはしょっちゅう紙面に載る。彼らはみんな旧統一教会と深い関係があるのか!!
あるはずがない。日刊ゲンダイの使った理屈がいかにムチャクチャで、理屈に合わない、気に入らない人物の信用を落とすためのコジツケか、ちょっと考えれば誰にでも分かることだ。
「宗教団体の機関紙」と言えば、創価学会の機関紙、聖教新聞を思い浮かべる人が多いと思う。ああいうのが宗教団体の機関紙だ。
たまたま8月2日の一面が公開されていた。「東西創価学園生が躍動の舞」が一面中央。左に「韓国迎日希望文化会館が誕生」の記事がある。
いかにも宗教団体の機関紙らしい紙面だ。
ところが、世界日報は全然違う。
上がウェブ版。下が電子新聞版。
世界日報を「統一教会の機関紙」と書いた「国会議員112人」リストのデタラメ
どちらを見ても、聖教新聞的な紙面作りとはかけ離れていることが分かる。この新聞を「統一教会の機関紙」と平気で書ける人の気が知れない。
宗教団体の機関紙なら、その教団内の動向や教団と直接関係する記事、教祖や幹部のありがたい教え、信者の体験記などで紙面が埋め尽くされていなければおかしい。
世界日報にそういうものはほとんどない。時折、「この新聞は統一教会系だな」と分かる記事が載る程度。統一教会関係の書籍の広告が出ることからも統一教会系と分かる。
つまり、正体を隠しているわけではない。しかし、紙面を見たら「機関紙」なんてとても言えない。
こんな信憑性に疑問符が何個も付くリストを使って、週刊新潮ともあろう老舗週刊誌が、「底なし政界汚染 安倍元総理と『統一教会』ズブズブの深淵」なんていう特集を大々的にやってしまうのだから世も末だ。
「なんだ、結局は売れればいい。それだけなんだな」というのが正直な感想だ。
しかし、週刊新潮にはひと言言っておきたい。
統一教会系イベントに「週刊新潮」編集次長やNHKの名物キャスター磯村尚徳氏も参加の過去
おたくが取り上げた「カルト宗教と関係『国会議員112人』」リストには、統一教会系の日刊紙「世界日報」にインタビューで載っただけの国会議員の名前があるが、「週刊新潮」だって1990年4月に旧ソ連の首都モスクワで開かれた第11回世界言論人会議に、岩佐陽一郎「週刊新潮」編集次長が参加してますよね。
世界言論人会議……統一教会の教祖、文鮮明さんが創設した国際会議。つまり、同教団の関連団体。
反安倍勢力によると、統一教会の関連団体はみなダミー団体で、その実態は統一教会そのものだそうだから、それが事実なら「週刊新潮」も統一教会のイベントに参加していたことになる。
ということは、日刊ゲンダイの理屈に従うならば、「週刊新潮」は編集幹部が統一教会イベント、それも日本から遠く離れたソ連のモスクワで開かれた国際イベントに、わざわざ足を運ぶほど統一教会とは「ズブズブ」の関係にあった、ということになりませんか?
当時は、霊感商法批判が燃えさかっていた頃。そんな中で編集幹部を統一教会イベントに堂々と参加させるとは、「週刊新潮」はいい度胸をしている。
ちなみに、この会議にはNHK放送総局特別主幹の磯村尚徳氏(かつての超有名なNHK名物キャスター)や平田明隆読売新聞編集委員、和田正光テレビ東京解説委員らが参加している。肩書はいずれも当時のもの。
NHKの磯村尚徳氏に至っては、第1分科会でスピーチまで行っている。
(イベント参加者名の出典は国際勝共連合の機関誌「世界思想」1990年6月号。以前、図書館で調べてコピーしておいたのが、探したら出てきた。)
そして、文さんはこの会議のさなかにゴルバチョフ大統領と会談して、二人が握手している写真が大々的に宣伝された。
「旧統一教会とズブズブ」だったのは安倍元首相だけではなく、ノーベル平和賞を受賞したゴルバチョフ氏もそうだったのだ!?
安倍氏はイベントにメッセージ動画を送っただけだが、ゴルバチョフ氏は直接教組夫妻と会談した。「統一教会へのズブズブ度」は、安倍氏の比ではない!!!
さて、「週刊新潮」は「取材で行っただけ」と言い訳するかもしれない。しかし、山谷えり子参院議員だって「インタビュー依頼を受けただけ」と言うだろう。それでも統一教会とずぶずぶにされてしまっている。
こんなレッテル貼りが無意味だということくらい、「週刊新潮」なら分かるだろうと思っていた。それだけに、こんなバカげた特集を打つとは本当に残念だ。