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消費者庁公表、2021年度の旧統一教会相談件数は全体の0.003%でした(たったこれだけ!)

消費者庁が「旧統一教会に関する消費生活相談の状況について」を公表した。

その表を見て驚かない人がいるだろうか。

全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の山口広弁護士、紀藤正樹弁護士はじめ、多くの旧統一教会を非難する人たちが、

「霊感商法被害は今も多い。深刻な被害が続いている」

という意味のことを言って、旧統一教会批判を煽ったのが今年の7月半ば以降。

しかし、消費者庁公開の相談件数の資料を見ると、2021年度の相談件数はわずかに27件。全体の相談件数は846,922件だから、その割合はたったの0.003%である。

消費者庁公開資料より

表に「いわゆる霊感商法(開運商法)」とあるのは、そのほとんどが旧統一教会とは関係がない。

その数字も、2021年度のケースでは1441件(全体の0.17%)と少ない。

ではなぜ、ほとんど関係ないと言えるのか?

まず、下の資料でわかるように、消費者庁自身が、「いわゆる霊感商法」という分類は「開運商法」という言葉をキーワードにしたものだと言っている。

第1回消費者庁検討委資料より

旧統一教会信者の「霊感商法」は文字通り「霊感商法」であり、「開運商法」はそれと区別するために他の宗教団体や占い師、販売業者が使っている言葉である。

彼らは旧統一教会と一緒にされたくないのである。

したがって、相談者が「開運商法」という言葉を使った事例は、旧統一教会とは無関係の可能性が高い。

実際、消費者庁が公開した別の資料に、この種の相談例が載っているが、どれも旧統一教会とは関係ないものばかりだ。

第1回消費者庁検討委資料より

原資料は消費者庁のサイトにある。

上から順に見ていこう。

1つめ。旧統一教会信者の「霊感商法」で、占い師の姓名判断なんて聞いたことない。

占い師の姓名判断とは、街中の通りに占い師が机を出して営業したり、デパートの物産展などでフロアの一画でスペースを借りて行ったりしているものと思われる。

テレビや雑誌などは、しょっちゅう取り上げてきたではないか。

2つめ。ネットの占いサイトも一般に広く行われているもので、旧統一教会とは関係ない。

3番目の「宗教の信者がやってきて入会させられ」も関係ない。旧統一教会は正体を隠して勧誘するわけだから、「宗教の信者が押し寄せてきて」はあり得ないだろう。

4番目の「浄霊」というのも、旧統一教会信者とは関係ない。旧統一教会がらみでよく聞くのは「先祖の因縁の清算」「先祖の救い」という言葉だ。「浄霊」という言葉を使うのは他の宗教団体の信者。

そもそも旧統一教会は2009年以来、霊感商法はやっていないと言っており、やっているとしたら、わざわざパンフレットを渡して証拠を残すようなことをするわけがない。

しかも、この例では入会金1万円が被害相談額である。旧統一教会の「霊感商法」は、もっと高額ではなかったのか? 

もし今なお旧統一教会信者が「霊感商法」をやっているのなら、この第1回消費者庁検討委は、なぜ相談例に「壺」「大理石」「印鑑」「多宝塔」などを入れなかったのか? 

検討委は旧統一教会問題を主に扱う委員会である。その委員会に提出された消費者庁の資料に、「壺」「大理石」「印鑑」「多宝塔」などお馴染みの商材が1つも入っていないのはなぜなのか?

考えられる答えは1つしかない。そんな相談はない、ということだ。

唯一、旧統一教会と関係がありそうなのは、最後の「母は宗教を信じており献金したのだと思う」。これは旧統一教会がらみの可能性がある。

しかし、「宗教を信じており」とあるから、当然その宗教団体名はハッキリしているわけで、それが旧統一教会ならば、この相談は、今回公表された冒頭に出した資料(「消費生活相談の状況について」)では「旧統一教会」の項目に入ることになる。

ということで、弁護士らが「霊感商法被害は今も多い。深刻な被害が続いている」と大騒ぎするような被害実態は、全く存在しないことが明らかだ。

今年の7月、8月、9月に相談件数が増えたのは、あらゆるマスコミが「霊感商法」を大々的に報じたことによるものだろう。

それでも8月の旧統一教会関連の相談は、全体の0.16%しかない。

全体の件数が60,425件、旧統一関連は98件だ。

さらに、最も重要なことは、表に載っているのは「被害」件数ではないこと。あくまで「被害相談」である。

本当に被害と言えるかどうかは、1つ1つのケースにつき、当事者双方の話を聞かなければ決められない話である。

そもそも相談したのが本人ではなく、その家族や親族であれば、なおさらだ。

だから、消費者庁も「消費生活相談の事例」の最後に載せた「母は宗教を信じており献金したのだと思う。今まで献金したお金を取り戻したい」という相談に対し、

「ご本人(母親)の気持ちもよく聞き話し合うように」

とアドバイスしている。

納得ずくで献金している人を、献金額がいくら高額であろうと「被害者」と呼ぶことはできない。

だいたい、世の中には「子孫に美田を残さず」を信条とし、全財産を(相続人でなく)慈善団体や宗教団体に寄付してしまう人はいくらでもいるのだ。

と、ここまで書いてきて、「0.003%を強調するのは印象操作だ」と言われかねないので、1点補足しておく。

消費者庁発表の分類方法には若干疑問が残るのだが、一応それは脇に置いて、「いわゆる霊感商法(開運商法)」の相談件数の中に、旧統一教会関係の相談件数が含まれるものとする。

すると、2021年度の旧統一教会がらみの相談件数が「いわゆる霊感商法(開運商法)」の相談件数全体に占める割合は、1.87%である。

  • 2022年度4~6月 2.09%
  • 2021年度 1.87%
  • 2020年度 2.80%
  • 2019年度 4.34%
  • 2018年度 3.91%
  • 2017年度 4%
  • 2016年度 5.19%
  • 2015年度 4.76%
  • 2014年度 3.99%
  • 2013年度 5.31%
  • 2012年度 7.01%

「いわゆる霊感商法(開運商法)」に占める旧統一教会関連の相談は年々減少しており、2%前後まで落ちていた。

これが7月半ば頃から全国弁連の弁護士らが「霊感商法はまだ続いている。深刻な被害が出ている」と言い出した時の「被害相談」(=被害ではない!)の実態である。

彼ら弁護士たちは「いわゆる霊感商法(開運商法)」のうち、全体の2%だけを問題にして、残りの98%はきれいに無視したわけだ。

そこに政治的意図がなかったと見る方が不自然だろう。

繰り返しになるが、7月以降、たしかに教会関連の相談件数は激増した。8月は50%を超えている。

しかし、これはマスコミや全国弁連や消費者庁などが旧統一教会だけをクローズアップした結果である。他の開運商法は一切取り上げられなかった。猫も杓子も統一教会ということで起きた一時的な現象だ。

消費者庁がリストアップしたような他の開運商法も公平に取り上げて、旧統一教会についてやったように、微に入り細をうがち、その問題点なるものを大きく報じていれば、出てくる数字は全く違ったものになったはず。

また、テレビや新聞、雑誌、ネット情報などで煽られて「とりあえず相談してみよう」と思って相談した人たちも多いだろう。

前に弁護士ドットコムで弁護士会の相談電話の様子を取材した記事を読んだが、そこに載っていた相談者全員が、家族か親族だった。

周りの人間の相談だから、本人が被害者と思っているかどうかは不明だ。

この段階では、まだ「被害(かもしれない)相談」であり、本当の「被害」については何もわからないのである。