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養子縁組の一体どこが「常軌を逸して」いるのか? 報ステ大越キャスターの暴言~元2世信者・小川さゆりさんらヒアリング

16日夜の報ステを見ていて驚いた。旧統一教会の養子縁組の問題を取り上げ、いつもはそれほど尖ったコメントをしない報ステ・大越キャスターが「常軌を逸した行為」と発言していた。

食事をしながらだったので、「行為」と言ったかどうかは定かでないが、「常軌を逸した」までははっきり聞き取れた。

いったい養子縁組のどこが常軌を逸しているというのだろう?

【目次】

  1. 養子縁組あっせん法の施行は2018年。小川さゆりさんの妹たちの頃は法律そのものがなかった
  2. 子どものいない夫婦のための養子縁組。一体どこが問題?
  3. 精子の提供を受けて子どもを授かったレズビアンカップルを「新しい家族の形」として報じたNHKニュースウォッチ9
  4. 「常軌を逸している」と暴言を吐いた大越キャスターは、養子縁組した統一教会信者たちに謝罪すべきだ!
  5. 「子どもの人権」を持ち出す小川さゆりさん。ならば、養子縁組の制度を非難すべきで統一教会を非難するのは筋違い
  6. 小川さゆりさんの発言や非難は、教育基本法第9条と相容れない

  7. 世界の普遍宗教を見て学ぶべき。小川さんの非難を適用すれば、多くの伝統宗教もカルトになってしまう

  8. 養子をもらった夫婦が傷つくことに想像が及ばないのだろうか?

■1,養子縁組あっせん法の施行は2018年。小川さゆりさんの妹たちの頃は法律そのものがなかった

旧統一教会による養子縁組の斡旋に法的な問題があるとしたら、その点は厚労省が調査を行うということだから、結果を待ってコメントすればよいこと。

だが、統一教会信者が行っている養子縁組は、日経の次の記事にあるような、

虐待や経済的事情で実の親が育てられない子供を別の家庭に仲介する

という性格のものではないだろう。

www.nikkei.com

テレ朝の報道を見る限り、子どものいない夫婦に自らの子を養子に出すというのが教団信者間の養子縁組だ。教団がやっているのはあっせんではなく管理だ。

「養子縁組は養子となる2世の幸せを願って進められるものであり、『親の信仰のための養子』といったご指摘は事実に反します。教会が金銭的報酬を受け取ることは一切ありません。本部としては、20年くらい前まで養子縁組の橋渡しをしていたようだが、それ以降は、本部は関わっていません」

報道にあるように、教団が養子縁組をした信者たちに報告を求め、協会長が承認するのは、教団が信者どうしの養子縁組に特別な価値を認めているからだろう。

事後報告になっていることから、教団があっせんしているわけではないことは明白だ。

こうした行為に法律上、問題があるのかどうか。詳しい知識がないから自分にはよくわからない。

ただ、法律違反の疑いがあるとのことだが、そもそも「養子縁組斡旋法」(民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律)が施行されたのは2018年だ。

小川さゆりさんの弟妹の頃は、法律そのものがなかった。

悪質なのは、テレ朝のニュースは、法律が施行されたのが2018年だという事実に触れていないことだ。20年以上前から行われていたという信者の養子縁組が「そもそもの初めから法律違反だったのでは?」と視聴者に思わせる、実に巧妙な印象操作が施されている。

この辺はいつものマスコミの汚いやり口。統一教会バッシングの報道姿勢で一貫している。

法律面については続報を待つとして、養子縁組自体は何の問題もない行為だ。

■2,子どものいない夫婦のための養子縁組。一体どこが問題?

同じ信仰をもつ宗教団体の信者であるから、お互い考え方はある程度共有しているはずだ。

子どもがいなくて困っている家庭に、自分たちのやがて生まれてくるであろう子どもを養子に出す。

お腹をいためて産んだ実の母親は断腸の思いだろう。その思いを断ち切って、あえてよその夫婦の手に委ねる。つらいことだが、こういうことは、以前から親戚の間柄や仲の良い友人の間では行われてきたことだ。

子どもがいないことで苦しんでいる親戚や友人の気持ちが分かるから、その人たちのためになればと思って実子を手放すわけだ。

1つの宗教団体の中で同様のことが行われているとすれば、信者同士の関係がそれだけ緊密で、家族、親族のような親しい共同体ができているということだろう。

そうでなければ、信仰を理由に「やれ」と言ってできることではない。

われわれの世俗社会では、何らかの事情で親の手から離れてしまった子を引き取って養子にするのは、麗しい行為とされている。しかし、そうした子どもは、引き取る夫婦にとっては、見ず知らずの他人の子だ。

中には、「養子をもらうなら、できれば自分の知っている人からもらいたい。それも生まれてすぐ、あるいはまだ小さい子を」という夫婦だっているだろう。旧統一教会のケースはそれにあたる。一体それの何がいけないのか。

養子に出す方だって、まさか自分たちの第一子を養子に出すわけではあるまい。

2世の元信者、小川さゆりさんの話では、彼女の親は4番目以降の子を養子に出したという。

ということは、もう3人の子がいるのだから、

「まだ小さい4人目のお子さん、あるいはもし5人目を産むのだったらその子を養子にもらえないか(養子にあげたらどうか)」

という話があったのだろうと自分は推測する。

養子をもらう方とあげる方で何らかの交流があれば、養子をもらった方は、より強い責任をもって、実の親を悲しませることのないように大切に育てようと思うのではないか。

養子をもらった夫婦は子どもを“授かって”ハッピーになり、養子に出した親は、自分の子が大切に育てられているのを見て安心できる。いわばWin-Winの関係だ。

養子となった子は、いずれ実の親と思っていた父母がそうでないことを知ることになるだろう。

告知は、子どもの発達段階を見ながら、適切なタイミングで上手に話して聞かせる必要がある。

だが、なぜ養子縁組が行われたのかという明確な理由があり、出自もはっきりしているのだから、事実を包み隠さず話せば比較的納得しやすいと思う。

もちろんうまくいかないケースもあるだろうが、それはもう仕方がないとしか言いようがない。うまくいかなかった原因を分析して教訓とするしかない。

だいたい一般の子育てだって、育てる親にとっては初めての経験だ。上手な子育てができないことだってある。だからといって「子育てするな」と言う権利は誰にもない。

■3,精子の提供を受けて子どもを授かったレズビアンカップルを「新しい家族の形」として報じたNHKニュースウォッチ9

これを、例えばレズビアンカップルが、第三者の男性から精子の提供を受け、それによって妊娠し、子どもを授かり、2人の女親によって育てられる子どもの場合と比べてみよう。

少し前、NHKニュースウォッチ9は、こうしたレズビアンカップルを新しい家族の形として、大変喜ばしいことのように報じていた。

www.worldtimes.co.jp

この種の報道や紹介は「性の多様性」「家族の形の多様化」ということで、多かれ少なかれ他局もやっている。元NHKの大越キャスターも当然知っているはずだ。

とすると、大越さんは、精子提供によるレズビアンカップルの子育ては素晴らしいが、実の子を養子としてもらい受けて育てるのは異常な行為だとでも言うのだろうか?

第三者の精子の提供による妊娠、出産は、既に数多く行われている。

中には、女性が第三者と何の愛情関係もないまま性交して妊娠し、生まれた子どもを夫婦が自分たちの子として育てるケースもある。

これについてはかつて書いたことがある。

tsurishinobu.hatenablog.com

子どもは成長するにつれ、自分が父親に似ていないことに不信の念を持つことは十分あり得る。

あるいはレズビアンカップルの子の場合、「自分の父親は誰なんだろう?」と出自に疑問を持つ可能性は高い。

真相を明かされた時、男女間の相思相愛によって生まれてくる他の子どもたちと自分を比較して悩むかもしれない。

■4,「常軌を逸している」と暴言を吐いた大越キャスターは、養子縁組した統一教会信者たちに謝罪すべきだ!

そうしたケースと比べ、同じ信仰共同体の中で、お互いに交流がある親同士の間で、子どものいない夫婦のために、あえて自分たちの最愛の子を養子に出すということは、麗しすぎて涙が出るくらい尊い行為ではないか。

これのどこが常軌を逸しているというのだろう。

「あなたには子どもが欲しくてもできない夫婦の苦しみ、悲しみが分からないのか」と言いたい。全く不愉快極まりない。

営利目的ではない養子縁組は、少なくとも第三者が非難するようなことではないし、非難してよいことでもない。

大越キャスターはこうした暴言を吐くことによって、養子を出した夫婦、もらった夫婦、養子として育てられた子ども、その全員を侮辱したことになる。

ハッキリ言って、公の場で謝罪すべきだ!

「常軌を逸した」というなら、第三者が単なるモノのように精子を提供したり、直接の性交渉によって妊娠させたりすることの方が、よほど常軌を逸していると自分は思う。大越キャスターはこのようなケースについてはどのような考えをお持ちなのか? 是非見解を明らかにしてほしいものだ。

■5,「子どもの人権」を持ち出す小川さゆりさん。ならば、養子縁組の制度を非難すべきで統一教会を非難するのは筋違い

小川さゆりさんも、「子どもの人権が無視されている」などと不穏当なことを言うべきでない。

伝統宗教であれ新興宗教であれ、どの宗教にも固有の戒律があり、ルールがある。親はそれを子どもにも守らせながら信仰の継承をはかっていくものであり、これは普遍的に見られる現象だ。

  • イスラム教なら婚前交渉の禁止が原則であり、ユダヤ教も同様。
  • ユダヤ教の場合、男児は幼くして割礼を行い、そこに子どもの意志の入り込む余地はない。
  • カトリックは幼児洗礼を行い、本人の意志とは無関係に信者にされる。教義上、離婚は認められない。
  • イスラム教も信者夫婦の子どもは自動的にイスラム教徒になる。さらに、改宗や棄教は死刑宣告されることもある重罪だ。

宗教とはそういうものなのだから、どうのこうの言っても始まらない。

「子どもの権利」を持ち出しても、これらをやめさせることはできない。親の宗教教育の権利は国際条約で保証されているからだ。(世界人権宣言、自由権規約B規約)

■6,小川さゆりさんの発言や非難は、教育基本法第9条と相容れない

また、日本の教育基本法も第9条 (宗教教育)で、

宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。

と定めている。

この「宗教に対する寛容の態度」について文部科学省は、

他宗教ないし他宗派をそれと認めつつ、侮べつ、排斥をしないこと、ゆるしいれることであり、さらに反宗教者に対しても寛容の態度をとること。

と解説している。

注意すべきは、教育基本法も文科省の解説も「宗教とカルトは区別できる」とはひと言も言っていないことだ。

宗教に対しては、「侮べつ、排斥をしないこと、ゆるしいれること」(=勝手にカルトなどと決めつけてはならない)と説明しており、反宗教者も同様の態度を取るべきだとしている。

もちろん、宗教を信じる者が反宗教者に対して取るべき態度も同じだろう。

■7,世界の普遍宗教を見て学ぶべき。小川さんの非難を適用すれば、多くの伝統宗教もカルトになってしまう

あれをするな、これをするな、あれをしろ、これをしろと細かく規定があるのが宗教であり、「そんなことをするのはカルトだ」と言えば、ユダヤ教もカトリックもイスラム教もみんなカルトになってしまう。

小川さんは、いろいろ大変だったのかもしれないが、旧統一教会を脱会することができた。しかし、イスラム教には脱会の自由はないのである。

ja.wikipedia.org

ここにはっきりと、

イスラームの決まりでは、ムスリムがイスラームをやめることはできません。

と書いてある。

さすがに日本では棄教しても死刑になることはないが、それでもイスラーム文化センターはこのように書いて「原則として棄教はできない」としているのだ。

「そんなのはおかしい」と短絡する前に、宗教とはそういうものと認識すべきだろう。

統一教会を批判する前に、そもそも宗教とは何なのか、世界の普遍宗教のあり方を見てよく学ぶべきだ。

宗教には悪い点もあるが、良い点もある。多くの信者は良し悪しのバランスを取りながら、また試行錯誤しながら生きている。

そして、共産主義、社会主義の国を除く、いわゆる西側諸国にあっては、「信教の自由」は最も大切な基本的人権として最大限尊重すべきものとされている。これは国際常識だ。

news.tv-asahi.co.jp

話を戻すと、養子縁組は既にある合法的な仕組みだ。教団の教義に基づいていようがいまいが、強制でない限り、社会的に認められている。

いいかげん「旧統一教会が関わってやることは悪」という二重基準は、宗教差別と知ってやめたほうがいい。

自分の妹や弟、あるいは生まれてくる子は養子に出してほしくないと思ったとしても、おそらく親には親の特別な事情があってそうしているのであり、「親は子どもの気持ちを100%尊重し、子どもの思う通りにすべきだ」というなら、それは子ども中心主義、いや子ども絶対主義である。

「子どもを中心に家庭を動かせ」と言っているようなものではないか。

小川さんの非難を聞いていると、子どもがただひたすら自分の気持ち、自分の事情だけを訴えているように聞こえる。

成人しているのだから、子どもの気持ちや事情と共に、親の気持ちや事情も察して、その両方を自分の中でよく咀嚼してから発言すべきと思う。

親と親が信じた宗教は憎悪の対象であり、一切和解の余地はなく、今後も憎み続けて生きていくのだと、そう決意しているのなら、それもまた一つの生き方だが、それで心の平安が得られるとは自分には思えない。

■8,養子をもらった夫婦が傷つくことに想像が及ばないのだろうか?

自分の想像だが、小川さんの発言を聞いて、いちばん傷つき、つらい思いをしているのは、養子をもらった夫婦だと思う。また、養子となった子と養父母との間に不必要な亀裂を生むことにもなりかねない。

養子縁組にも、おそらく不幸な事例やうまくいかなかった事例があると思う。しかし、幸福な事例、円満に運んだ事例も多いはずだ。

物事は白か黒かで割り切れるものではない。肉親の元で育った子だって、虐待され悲惨な目に遭う子もいれば、大切に、愛情たっぷりに育てられて成長する者もいる。

前者の例を指して、「そもそも家庭なんてものがあるからいけないんだ」とは決して言えないように、養子縁組も、それ自体で「常軌を逸している」ということはありえない。

それぞれの人、それぞれの夫婦を取り巻く事情や環境、物の見方・考え方、サポートがあるかないか等々によって結果は変わってくる。

一方的に断罪するような性質のものではない。

大越キャスターは、日頃から「多様性尊重」を叫んでいるテレビで仕事をしているのに、自分の常識の範疇にない出来事に出くわしたからといって、養子縁組をした人たちに偏りなく取材することもしないうちから「常軌を逸した行為」などと言うのは、冷酷無比で、偏見にまみれた、それこそ常軌を逸した発言だと思う。