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いい加減にしろ!霊感対策弁護士連絡会。高井康行弁護士が「マインドコントロール論」を厳しく批判~月刊「正論」1月号

月刊「正論」23年1月号が「旧統一教会問題に翻弄される」を特集し、2本の寄稿と1本の編集部記事を載せている。

どれも重要な指摘をしており、読み応えがあるが、拙ブログでは2本の寄稿を取り上げよう。

今日は高井康行弁護士(元東京地検特捜部検事)の「拙速な新法議論の問題点を突く」。

「正論」の詳しい目次はこちらから。

1,文科省の「質問権」行使をバッサリ切り捨て

高井康行氏の批判は、タイトルにあるような「被害救済新法」にとどまるものではない。

高井弁護士は、政府の「質問権」行使そのものをバッサリ切って捨てている。

「宗教法人法第78条の2は、宗教法人に解散命令に該当する事由がある疑いが認められる場合は、当該宗教法人に質問等をすることができる旨規定している。

しかし、その質問内容は、その業務または事業の管理運営に関する事項に限られており、仮に、当該宗教法人が回答を拒否したり、虚偽の回答をしたりしても、行政罰である10万円以下の過料が科せられるに過ぎない。

これらを考えれば、質問権行使により、解散命令の根拠となるような事実が明らかになることはほとんど期待できない」

つまり、旧統一教会側は、文科省による質問権行使に対して、「これは宗教迫害である」という抗議の意思表示として、回答を拒否してもよかったのだ。

回答を拒否したところで過料はたったの10万円以下。しかも、オウム事件後の宗教法人法改正で質問権が設けられた当初、過料はなんと1万円以下とされていた。

これでは安すぎるということで、その後の改正で引き上げられたが、それでも10万円以下である。

「信教の自由」を最大限尊重するという憲法の趣旨から、権力の介入は極力抑制されなければならないというのが、宗教法人法の基本精神なのだ。

2,傍若無人な全国霊感商法対策弁護士連絡会。いったい何様のつもりか!

改憲派であろうが護憲派であろうが、弁護士がその業務を遂行するにあたっては日本国憲法に従うのは当然だろう。

ところが、全国霊感商法対策弁護士連絡会の連中は、宗教法人たる旧統一教会を指して平然と「カルト」呼ばわりし、政党も行政機関も関係を持つな、さっさと解散させろとけしかけている。

彼らは一体何様のつもりなのか。全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士らは、日本国憲法よりも偉いのか?

公的機関でもない一民間団体、それも左翼色の強い弁護士団体が集まった全国霊感商法対策弁護士連絡会が、政府・与党、野党、マスコミを焚き付けて、一宗教団体に対し誹謗・中傷の限りを尽くしている様は異様と言うしかない。

中には「統一教会は100%の悪」と罵り、「信教の自由」を踏みにじる暴言を吐いた郷路征記弁護士のような人間もいる。

これを言葉の暴力と言わずしてなんと言う。郷路弁護士は、統一教会の信者一人一人に土下座して謝罪すべきだ。

東京地裁平成17(ワ)第23549号訴訟の判決(2008年1月15日)は、損害賠償請求で勝訴した被害者が信者であることを理由に、「信教の自由」は尊重されるべきとして慰謝料の支払いを認めなかった。

旧統一教会を信仰する自由は何人に対しても保障されている。信者になったからといって公的なペナルティーを科されるわけでもない。

にもかかわらず、「統一教会は100%の悪」とは何という言い草だろう。こんなことを言われて黙っている信者も信者だ。なぜ強く抗議しないのか不思議でしょうがない。

tsurishinobu.hatenablog.com

3,「質問権は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」(宗教法人法第78条の2の第6項)

さらに不思議なのは、「質問権」の行使には厳しい制約があるにもかかわらず、彼ら霊感対策弁護士もマスコミも重要な事実を全く報じようとしないことだ。

岸田総理は10月25日、政府が確認している民法上の法令違反22件では「過去に解散を命令した事例と比較して十分に解散事由として認められるものではない。報告徴収・質問権を行使することでより事実を積み上げることが必要だ」と国会答弁した。

しかし、宗教法人法は第78条の2の第6項で、

第1項の規定による権限(引用者注=報告徴収・質問権)は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

と釘を刺している。

新たな不法行為を見つけて解散事由を積み上げるといった、犯罪捜査のようなことはしてはいけない、と言っているのだ。

岸田総理自ら宗教法人法の条文を無視しているわけで、自分がこれは紛れもない宗教迫害だと断じる理由の1つでもある。

4,「マインドコントロール」論に執拗にこだわる野党を厳しく批判

高井康行弁護士の「マインドコントロール」論批判も手厳しい。野党や霊感対策弁護士、マスコミがさも当然のように使う「マインドコントロール」という言葉に厳しい目を向けているところはさすがだ。

野党案には、マインドコントロール下においてなされた寄付も取り消すことができるとする考え方が導入されている(法案では「マインドコントロール」という言葉ではなく、「特定財産損害誘導行為」という新しい言葉を使っている)。

マインドコントロールにしても、特定財産損害誘導行為にしても、二義を許さないほど明確な定義は難しく、その概念の外延は曖昧である。

ある人が多額な寄付をしたとして、その人が自律的で熱心な信仰に基づいて寄付したのか、その人がマインドコントロール下に置かれた結果寄付したのかを明確に判別することは難しい。

もし、多額な寄付をした人はすべてマインドコントロール下にあるというのであれば余りにも乱暴過ぎる。

この「余りにも乱暴過ぎる」ことを執拗に政府・与党に要求しているのが、立憲民主党であり、霊感対策弁護士たちだ。

www.sankei.com

彼らの代弁者と化した産経新聞は、月刊「正論」とは明らかに異なる立場で記事を書いた。

上の記事にはこうある。

連絡会の川井康雄弁護士は、実際には正体を隠すなどの不当な勧誘行為で教義を植え付けられた結果、使命感などから進んで寄付をしたように見えるケースが多く存在すると説明。こうした勧誘も規制対象に含めるべきだ…

この考え方がどれほど危険かは、オウム真理教事件を考えればすぐわかることだ。

5,野党や霊感対策弁護士の論理に従えば、オウム事件の実行犯はみな無罪になるだろう

「不当な勧誘行為で教義を植え付けられた結果、使命感などから進んで寄付をしたように見える」を、次のように言い換えてみよう。

「教団内の閉鎖的空間で、教祖への絶対的な帰依を繰り返し強調され、教義を植え付けられた結果、使命感から進んでサリンをばらまいたように見える」

つまり、霊感対策弁護士や野党が言うマインドコントロール論をもってすれば、サリンをばらまいて多数の人命を奪ったオウム真理教の実行犯たちは、加害者ではなく、被害者となってしまうのだ。

当然、マインドコントロールにより罪を犯した可哀想な実行犯たちに責任はなく、無罪とすべきだ、という結論が導かれる。

旧統一教会の献金問題で彼らが主張していることは、「オウム事件の実行犯を無罪にしろ」と言っているのと何も変わらない。

マインドコントロールされた可哀想な信者たちは、進んで、喜んで、自分の意志で献金をしているように見えるが、実際には「自分の意志でやっている」と錯覚させられているだけ。

それは「本当の自分」ではない。だから信者たちは被害者なのであり、政府は被害者を生まないように規制をかけるべき。

また、被害者が献金したお金は全額返金されてしかるべきだ。

被害者本人が返金を求めないのなら、家族が代わって返金を求め、取り返せるようにしなければならない。

これが野党や霊感対策弁護士らの主張である。

そして、この倒錯した論理の恐ろしさに何の疑念も抱かず、彼らの主張を無批判に垂れ流しているのがマスコミなのである。

刺激的なマスコミ批判を含む原英史氏(政策シンクタンク代表)の寄稿については、次に書く