遅ればせながら、三流大衆紙として有名な日刊ゲンダイのDigital版が、韓国「世界日報」をベタ褒めする寄稿を載せていることを知った(紙媒体の方は不明)。
書いたのは三流大衆紙の記者ではなく、一応日本の2大通信社の1つとされている共同通信の編集委員兼論説委員・佐藤大介氏。
「一応」と書いたのは、共同通信もかなり左翼がかった通信社だからだ。日本のメディアは左巻きだらけで本当にため息が出る。
【目次】
- 1,韓国「世界日報」と日本の世界日報を区別できなかった月刊誌『選択』が、名誉棄損裁判で日経新聞に敗訴!
- 2,韓国「世界日報」は特ダネも少なくない中堅の一般紙とベタ褒め
- 3,特ダネなら日本の世界日報も負けていないが、共同通信・佐藤氏はご存じないらしい
- 4,朝日新聞を痛撃した2019年「昭和天皇の直筆御製」発見報道
- 5,韓国「世界日報」は統一教会色を出していないが、日本の世界日報は「教団色を前面に出している」は本当か?
- 6,韓国「世界日報」よりもはるかに評価の高い米紙「ワシントン・タイムズ」
- 7,「ワシントン・タイムズ」は「極右」にあらず。ただの「右」、すなわち保守系紙と「NHK国際報道」が紹介
- 8,「ワシントン・タイムズ」に意見広告を出した国会議員は統一教会とズブズブの関係? 寝言は寝て言え!
■1,韓国「世界日報」と日本の世界日報を区別できなかった月刊誌『選択』が、名誉棄損裁判で日経新聞に敗訴!
しかし、さすがに共同通信の佐藤氏は、日本の世界日報と韓国の世界日報が別の会社ということは理解していた。この国には、その違いも分からずに記事を書く記者と、それを活字にするとんまなメディアもあるのだ。
問題のメディアの名は「選択」。三流月刊誌らしく、
統一教会系の新聞社として知られる世界日報。一九七五年の創刊時には、朝鮮日報や東亜日報など韓国大手新聞社の記者が多数引き抜かれた。
と、いまだにウソ記事を公開し続けている。
日本人読者を対象とした新聞を創刊する時に、どうして韓国大手紙の記者(当然、韓国人だ)を引き抜くんだ?
そんなことあり得ないだろう。中学生でもわかるフェイクを堂々と書いて恥じないのが、この「選択」という月刊誌だ。
こんなことをやっているくらいだから、名誉棄損で日経新聞に訴えられ、あっさり敗訴したのもうなずける。
勝訴した日経(ウェブ版)の今年1月17日付け報道によると、
月刊誌「選択」の記事で名誉を傷つけられたとして、日本経済新聞社が同誌を発行する選択出版(東京・港)に3300万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁(野村武範裁判長)は17日、同社に220万円の支払いを命じた。
とのこと。
判決の理由を呼んで大笑いした。いや、これが笑わずにいられましょうか。
判決理由で野村裁判長は、日本経済新聞の特報を「誤報だった」などとした同誌記事について「被告は裏付け取材を行ったり、行おうとしたりしたとは認められない」などと指摘。
裏付け取材こそ報道の命だ。この「命」を持たないマスコミやメディアは多いが、裁判長にここまで言われるとは!
裏付け取材をしないどころか、しようともしなかったという。もはやメディアとしての存在価値を完全に否定されたと言ってもいい。お金を払って「選択」を購読した人は「カネ返せ」と怒っているのではないか?
書いた記者をクビにして済む話ではなく、編集幹部そろってクビ、社長もクビ、「さて会社はどうしようか」と相談しなければいけないほどの不祥事である。
もっとも、「選択」側は控訴するだろうから、まだしばらくは延命するんだろう。判決が確定した時の同社の対応が見ものである。
■2,韓国「世界日報」は特ダネも少なくない中堅の一般紙とベタ褒め
本題に戻ろう。取り上げたいのは三流大衆紙に載った次の記事である。
なんとこんなことを書いている。
韓国では世界日報は、朝鮮日報や東亜日報などの有力紙と同じく大統領府や各省庁に記者を常駐させ、東京や北京などに特派員を送っている。
朴槿恵政権下では、側近による国政介入問題をスクープするなど、特ダネも少なくない。
大手メディアへの就職が難しい韓国では、中堅メディアと位置付けられている世界日報に就職し、経験を積んだうえで「より大手の新聞社に転職するケースもある」(世界日報記者)という。
いいんですかゲンダイさん、こんな寄稿を載せて。
確かおたくらの論理によると、
- 旧統一教会系の関連団体と接点を持ったり、誌紙面などに載せて評価すると、その団体、ひいては旧統一教会にお墨付きを与えたことになる。
- そのお墨付きゆえに旧統一教会に勧誘された人はうっかり信じてしまい、マインドコントロールされて多額の金銭をむしり取られる。
- 即ち、旧統一教会や関連団体にお墨付きを与えると新たな「被害者」を生むことになる。
- だから、お墨付きを与える行為は現に慎むべきだ。
こういうものではなかったっけ。
こんな理屈もあった。
被害者から巻き上げた巨額の資金は日本の植民地支配の罪を償うため、韓国に貢ぎ物として送られる。
おたくらの理屈によると、韓国「世界日報」の経営も、日本の信者や「被害者」から巻き上げ、収奪した多額の献金によってまかなわれており、だから許しがたい、ということだったのでは?
■3,特ダネなら日本の世界日報も負けていないが、共同通信・佐藤氏はご存じないらしい
気になった箇所は他にもある。
朴槿恵政権下では、側近による国政介入問題をスクープするなど、特ダネも少なくない。
とあるが、特ダネなら日本の世界日報も負けていない。
1980年代の教科書誤報事件のスクープは特に有名だ。当時、文部省が教科書検定で「侵略」を「進出」に書き換えさせたとマスコミが報じたが、そんな事実はなかったというものだ。
故・渡部昇一氏が文藝春秋の月刊誌『諸君!』に「最初に誤報を指摘し大々的に報じたのは世界日報」と書いて評判になり、直後に出版された単行本『萬犬虚に吠える』(文藝春秋)にも収録された。
今、文藝春秋は朝日新聞と並んで旧統一教会批判の急先鋒だが、皮肉にも日本の世界日報の評判を劇的に高め、世界日報ならびに旧統一教会に決定的な「お墨付き」を与えたのは、文藝春秋だったのである。
このように、渡部昇一氏の『萬犬虚に吠える』は版元を変えて長く読み継がれてきた。
教科書誤報事件における世界日報のスクープを高く評価したのは、産経新聞も同様だ。故・石川水穂記者が紙面で何度かこの事件とスクープに触れて世界日報を称賛していた(「統一教会系の新聞だが」と断ったうえで)。
世界日報のスクープは他にもたくさんあるようだ。
最近では、「日本人拉致被害者とその家族は全員が平壌市内に居住か。元北朝鮮工作機関幹部が証言」(2022年6月)が記憶に新しい。
この記事は家族会の目に留まり、西岡力氏が大きく取り上げて話題になった(記事内容への賛否あり)。
■4,朝日新聞を痛撃した2019年「昭和天皇の直筆御製」発見報道
自分にとって印象深いのは、「昭和天皇の直筆御製を発見、岸信介元首相を悼む歌3首など朝日報道にない視点を突く」(2019年1月)だ。
その内容たるや文句なしに素晴らしいものだった。
同じ原資料を入手していた朝日新聞は、元旦のスクープで「昭和天皇、直筆原稿見つかる 晩年の歌252首、推敲の跡も」と報じ、岸元首相の死に関連した御製を1首のみ取り上げていた。
これに対し世界日報は、3日付けで岸元首相の死を悼んだ御製3首を全て載せた。世界日報の後追いをして朝日が3首全てを載せたのは1月7日だった。
紹介文に、
昭和天皇の御製(和歌)の草稿の直筆原稿とメモを公表した。昭和天皇に近い人物が保管していたもので、世界日報社が写真撮りし分析調査を進めていた。
朝日新聞も同じ資料を入手し、元旦付、3日付などで報じたが、その内容が昭和天皇の戦争責任問題へ誘導する紙面づくりだった。
これに対し、世界日報は岸信介元首相を追悼する3首に焦点を当て、昭和天皇が安保改定時の岸氏の孤独な戦いに深い同情を寄せていたことを明らかにした。
月刊誌『正論』2019年3月号で、世界日報の報道を「すごいですね」と称賛。続いて月刊誌『Hanada』6月号特集トップで「直筆御製」を紹介した世界日報編集局長の寄稿を掲載。さらに、虎ノ門ニュースで紹介され、「週刊ダイヤモンド」5月25日号のコラムでは櫻井よしこ氏が同論文を評価した。
とある通りだ。
もし世界日報が報じなかったら、昭和天皇が岸信介元首相の死を悼んで詠まれた御製の深い意味は、読者にきちんと伝わらなかっただろう。
朝日にとっては、日本国民統合の象徴たる天皇が、A級戦犯(被疑者)であり、かつ日米安保条約改定を強行した岸元首相を追悼するなど、あってはならないことだったに違いない。
ここには出ていないが、一時期、世界日報は教育問題にも力を入れていた。
- 公教育における「平和教育」が反日思想と自虐史観の押し付け、刷り込みに終始していること。
- 同じく「人権教育」が、教育における規律を軽視し、子供の自己決定権を過度に尊重したため、学力低下、校内暴力と荒れた学校の増加を招いたこと。
などを大きく報じていた(と記憶する)。
■5,韓国「世界日報」は統一教会色を出していないが、日本の世界日報は「教団色を前面に出している」は本当か?
執筆者の共同通信編集委員兼論説委員・佐藤大介氏は、世界日報は旧統一教会の御用新聞で一般紙ではないと言いたげだが、事実は全く違う。
この人は、同紙を継続して読んでこなかった“にわか読者”なのではないか。
最も特徴的なのは、日本の世界日報が旧統一教会への批判を「宗教弾圧」と記すなど教団色を前面に出しているのに対し、韓国の紙面にはそうしたトーンは見られないということ。
という箇所は、とりわけ笑える。
世界日報が「教団色を前面に出し」たのは、旧統一教会に絡んで魔女狩りが始まり、同紙も関連団体として標的にされたために、自然にそういう紙面になったと考えるのが自然である。
何しろ同紙は鈴木エイト氏や立憲民主党の石垣のりこ議員から「統一教会の機関紙」と決めつけられ、ありとあらゆるマスコミから、同紙にインタビューや対談でたった1回載ったに過ぎない議員ですら「統一教会とズブズブの関係にある」などと非難されたのだ。
こんなバカげた誹謗・中傷を受けたら、社を挙げて反論するのは当然ではないか。
佐藤大介氏は、ちょうどそんな事件が起きた時期の紙面をクローズアップして「教団色を前面に出している」と書いた。
なんと愚かな。頭を使って書いているのかと言いたくなる。もし頭を使って書いたというなら、それは悪知恵の類いだろう。
旧統一教会への魔女狩り報道が起きているのは日本だけ。韓国では起きていない。だから韓国「世界日報」は報じない。それだけのこと。スタンスがどうのこうの以前の問題だ。
その証拠に、昨年前半の日本の世界日報の紙面を調べてみればいい。継続して読んでいればわかるはずだ。旧統一教会に関連する記事はほとんどなかった(と思う)。
日本と韓国の世界日報のスタンスを比較するなら、日本で魔女狩りが始まる前の時期を選ぶべきだった。それがフェアな態度である。
日本の代表的通信社の一つ、共同通信の編集委員兼論説委員にして、この程度の公正さしか持ち合わせていないのだから、日本のメディアのレベルの低さがよく分かる。
文化欄などで宗教関連の記事が多いのを除けば、また日本共産党批判記事が時々載るのを除けば、世界日報は一般紙とほとんど変わらない。但し、論調は明らかに右寄りであり、反共の立場は明確だ。
もう一つ「但し」を加えるなら、世界日報は記事のボリュームが少なく、これ一紙で十分とはとても言えない。いや、これ一紙では全然足りない。
さらにあと一つ「但し」を加えるなら、時事通信社の配信(と思われる)記事が多い。大手紙ではないから仕方のないことではあるが。
「世界日報は併読紙として読んでこそ価値がある」
というのが自分の見解だ。
佐藤氏の寄稿には、他にもまだ批判すべき論点がある。
■6,韓国「世界日報」よりもはるかに評価の高い米紙「ワシントン・タイムズ」
それは、韓国「世界日報」を評価するなら、なぜアメリカの統一教会系日刊紙「ワシントン・タイムズ」を評価しないのか、ということだ。
佐藤氏が韓国「世界日報」を評価した論点の全てが、米日刊紙「ワシントン・タイムズ」にそのまま当てはまる。
アメリカにおける「ワシントン・タイムズ」への評価の高さは韓国「世界日報」以上だ。
レーガン大統領の時代には、毎朝、大統領の寝室(執務室ではない!)に届けられる新聞として話題になったと聞く。
Youtubeには、レーガン大統領が退任後、「ワシントン・タイムズ」の創刊10周年に寄せたと思われるお祝いのメッセージ動画がアップされている(9分あたりから)。
これを見ると、
- 「ワシントン・タイムズ」がアフガニスタンに侵攻したソ連軍の撤退に貢献したこと、
- 中米ニカラグアの左翼政権と戦う「自由戦士」の支援キャンペーンを行ったこと、
- ブッシュ大統領(父親)の単独インタビューを実現したこと、
なども紹介されていて、同紙がアメリカのメディア界に一定の地位を築くに至った理由が分かる。
アメリカのメディアは主義主張、党派的立場を明らかにすることが多く、「ワシントン・タイムズ」は一貫して共和党支持らしい。論調は右寄り。しかし、極右ではない。
■7,「ワシントンタイムズ」は「極右」にあらず。ただの「右」、すなわち保守系紙と「NHK国際報道」が紹介
前にも書いたように、そのことはNHKの「国際報道2021」(平日夜BSで放送)が明らかにしてくれた。
その日の放送は、英米メディアの思想的傾向を分析し、各紙の記事を左右5段階で評価して配信するサービスを始めた企業を紹介していたが、途中で次のようなボードが出てきた。
見れば分かるように、「ワシントン・タイムズ」は一番右の「レッドR」ではなく、右から2番目の「ブラウン(ピンク?)R」に分類されている。FOXニュース(オピニオン)を含む一番右を「極右」と呼ぶならば、「ワシントン・タイムズ」はただの「右」である。
ちなみに、この分類法だと、
- 「極左」=バズフィードニュース、CNN、ハフポスト、msnbc、ニューヨーク・タイムズ(オピニオン)など。
- 「左」=abc、AP、ブルームバーグ、CBS、エコノミスト、ガーディアン、NBC、ニューヨーク・タイムズ(記事)、ワシントン・ポスト、タイムなど。
となる。
日本でお馴染みのメディアが、軒並み「極左」と「左」に分類されることに気付くだろう。
日本でよく「保守系紙」という言い方をされる「ウォール・ストリート・ジャーナル」が、アメリカでは記事が「中道」、オピニオンが「右」である。
「ワシントン・タイムズ」は、このようにアメリカでは「右」の一般紙として認知されている。
■8,「ワシントン・タイムズ」に意見広告を出した国会議員は統一教会とズブズブの関係? 寝言は寝て言え!
それなのに、こともあろうに鈴木エイト氏と日刊ゲンダイDigitalは、国会議員がこの新聞に意見広告を載せただけで「統一教会とズブズブの関係にある」と断じ、統一教会と接点のある議員として公表、非難した。
半年前に書いたことだが、何度でも言おう、バカげていると。(以下の見出しの8を見よ)
佐藤氏は、このような非難がいかに的外れで非常識であるかについても率直に書き、鈴木エイト氏や日刊ゲンダイDigital、その他同様の非難をしたマスコミを厳しく批判すべきだ。
なお、魔女狩り報道のさなか、かつて某テレビ局が韓国「世界日報」を引用して解説したことを指摘して大騒ぎした阿呆な連中に比べれば、佐藤氏はまだましだと言える。
もっとも、褒め殺しかもしれないが。
「つづく」の記事で、佐藤氏は何を書いたのだろうか。(公開されているが、まだ読んでいない)
1月5日の寄稿を読んだだけであれやこれやと感想が浮かんだ。「つづき」は読むべきか、読まざるべきか…。