ルポ統一教会の第1弾「新聞・テレビが報じない“脱会屋”の犯罪」、第2弾「独占スクープ! 統一教会問題の『黒幕』」に続き、第3弾は「スクープ! 両親が覚悟の独占告白 国政を動かす『小川さゆり』の真実」だった。
連載を1回休んで月刊「Hanada」3月号に掲載されたジャーナリスト福田ますみさんの「ルポ統一教会③」。タイトルが2種類あるのが「Hanada」らしい。
新聞広告には、
「岸田総理はじめ全国会議員、朝日、毎日など全メディア人必読!『小川さゆり』の真実 スクープ! 両親が覚悟の独占告白25ページ! 彼女の訴えは本当なのか? 明かされた驚愕の事実と巨悪の存在」
とある。
【スクープ!】両親が覚悟の独占告白 国政を動かす「小川さゆり」の真実|福田ますみ【2023年3月号】 – 月刊Hanada<プレミアム>
アマゾンでは26日の現時点(am1:36)で「予約受付中」になっているが、単品ごとの電子版(PDF)は既に上記リンクの「月刊Hanadaプラスプレミアム」で購入できる。
25ページの力作のせいか値段は600円。自分は紙で読みたいので、雑誌が届くのを待つことにする。
■1,マスコミは小川さゆり証言を、ちゃんとウラ取りして報じたのか?
なお、今号も、
- 今ネット空間で話題を呼んでいる「Colabo」関連の論文2本~有本香「Colabo問題の核心」、池田良子「仁藤夢乃と赤いネットワーク」
- タイトルを見ただけで涙が出そうになる「櫻井よしこ慟哭の30枚 光に満ちた悲劇、安倍晋三とヤマトタケル」
- 萩生田光一政調会長「台湾大講演全文再録」
- 藤原かずえ「岸田『原発再稼働』で日本は復活」
- 川口マーン惠美「ドイツ国家転覆未遂事件の真相」
- 名誉棄損裁判で有田芳生氏に勝訴したばかりの山口敬之「林芳正の研究③ 上海電力への内通者は誰だ!」
等々、どれもこれも我を忘れて読みふけりたくなる寄稿が目白押しだ。
小川さゆりさんの証言に関しては、かねてよりその信憑性に疑問が投げかけられていたが、テレビも新聞も雑誌もことごとく、その証言内容をきちんと検証することなく、彼女の発言をそのまま報じていた。
テレビで涙を流しながら「被害」を訴える姿は、見る者の心を打つものがある。
つい信じたくなるし、「統一教会はなんてひどいところだ。未成年の子供に教義を無理やり押し付けるとは人権侵害も甚だしい」と思いたくなる。
■2,証言を鵜呑みにすることがどれだけ危険か――2つの実例:吉田清治氏と元草津町議・新井祥子氏
しかし、社会の健全な常識では、被害を訴える人がいても、それを鵜呑みにしてはならないのだ。
そのいい例が、戦時中、自ら慰安婦狩りをしたと告白し、その様子を克明に記した本まで出版した吉田清治氏のウソの証言である。
彼のついたウソと、それを見抜けず、ちゃんと検証しないまま大々的に報じた朝日新聞をはじめとするマスコミのフェイク報道により、日本の国益は大きく棄損された。
吉田清治証言のウソを国際的に明らかにし、軍による組織的な慰安婦強制連行説を葬り去ったのが安倍晋三元首相である。
歴史修正主義者と罵られながらもめげずに戦い続けた安倍氏らの努力により、今では慰安婦強制連行説は教科書から消え、「従軍慰安婦」という言葉も死語に近いものとなった。
(このネット記事はたまたま目に付いたもの。朝日新聞の報道の軌跡を整理しているのでリンクした。但し、冒頭で「従軍慰安婦がいたのは事実」と書いているが、事実ではない。従軍看護婦はいても「従軍慰安婦」なるものは存在しない)
また最近では、草津町議だった新井祥子氏が黒岩信忠町長からレイプされたと言って大騒ぎになった事件がある。
町長が事実無根と猛抗議した結果、新井氏はリコール(解職請求)により失職。新井氏がリコールの無効を申し立てた裁判でも、最高裁が上告を退け彼女は敗訴した。
挙げ句に、虚偽告訴罪で在宅起訴され、今後は刑事被告人として法廷に立つことになる。
確かに、「レイプされた」と自ら公表した女性の証言が実は虚偽だったとは、人は普通考えないものだ。ウソをついているのは町長の方じゃないかと勘ぐる人も多いかもしれない。
実際、新井氏を擁護する運動も起きている(参考ウェブ)。
しかし、リコールも成立し、リコール無効を求めた裁判でも町長が勝訴し、「異例の虚偽告訴罪」で在宅起訴までされたことを考えると、新井氏の証言が虚偽である可能性はかなり高いと思う。
以上の2つは、当事者がどんなにリアルな証言をしても、それをそのまま信じるのが危険なことの実例だ。
マスコミはこのような実例を知っているにもかかわらず、なぜ小川さゆりさんの証言について、無条件でそれを真実とするかのように報じるのだろう? 本当に不思議でならない。
■3,被害を訴えて裁判になったら裁判所は必ず双方の言い分を聞く。マスコミは小川さゆりさんの両親の言い分を聞いたのか? それを報道したか?
被害を訴える人がいたら、もう一方の当事者の話もきちんと聞いて、食い違いがあればなぜ食い違いが生じたのかを調べ、検証し、真実はどこにあるのかと追求するのがジャーナリズムの使命のはずだ。
ところが、どのマスコミもそんな手間のかかることはしない。
小川さんのご両親に話を聞くなどして、彼女の証言のウラ取りをしっかりやったマスコミがあっただろうか。
小川さんだけではない。旧統一教会から被害を受けたという人がいれば、マスコミはその証言をそのまま垂れ流すのではなく、被害を与えたとされる側にも取材し、その言い分も聞かなければいけないはずだ。
ひとたび裁判となれば、裁判官は必ず双方の言い分を聞いて判決を下す。それでも地裁と高裁で判決が180度ひっくり返ることはざらにある。それほど真実を見つけ出すのは難しい。
にもかかわらず、なぜか統一教会の話になると、壺や大理石を買わされた、高額献金を強要された、親に教義を強要された等々の話が、「双方の言い分を聞いて真相を究明する」という手続きを踏まないまま、次から次へとあふれるように流れてくる。
記者たちの態度は、「本人の証言なのだから真実に決まってるじゃないか」と言わんばかりである。
こんなおかしなことはない。
■4,小川さゆりさんの証言には、早くから疑問が投げかけられていた!
小川さゆりさんの証言の問題点は、既に海外の宗教社会学者、マッシモ・イントロヴィニエ氏によって指摘されていた。
ここには実に驚くべきことが書かれている。去年の11月12日の時点で、もうこんなにも多くの批判的な指摘がなされていた。
1つだけ例を挙げよう。小川さゆりさんは、MBS毎日放送の取材にこんなことを語っていた。
MBS報道情報局の山口綾野氏は書いている。
貧しさから洋服などは、お下がりばかりだったこと。その代わりに自宅には、献金の証ともいえる「壺」や「ハンコ」がいくつもあったこと。
学校でいじめられた時にも親からは「神様に期待されているから」という言葉で片づけられたこと。教会の行事で学校や部活を、休まなくてはいけなかったこと。
子ども時代に多くの人が経験する“当たり前”の喜び、楽しみ。旧統一教会はそれすら、奪っていた。
ところが、マッシモ・イントロヴィニエ氏は、彼女の母親の話はこれとは全く違うと言う。
彼女(小川さゆりさん)は、両親は明らかに家庭連合が非難されている「霊感商法」または高額献金の被害者であり、一時期統一教会員が多額の献金をしたときに受け取っていた工芸品をいくつか実家で見たと主張した。
しかし母親は、家族が高額な商品を購入するためのお金を持っていなかったことと、既に亡くなった信徒からお金を払わずに工芸品のいくつかを受け継いだことを小川さん自身が知っていると主張している。
MBS毎日放送の記事には「貧しさから洋服などは、お下がりばかりだったこと。その代わりに自宅には、献金の証ともいえる『壺』や『ハンコ』がいくつもあった」とあるが、マッシモ氏によれば、その壺は亡くなった信徒から無償で譲り受けたものであり、「献金の証」ではないという。
しかも、小川さゆりさんはそのことを知っているというのだ。
マッシモ氏の指摘が正しければ、小川さんの親は、娘に洋服を買うのを諦めさせて、代わりに壺を買って教団に献金したわけではなかったことになる。
さて、どちらの言い分が正しいのだろうか?
はっきりしていることは、MBS毎日放送の記述には、小川さんの親に取材してファクトチェックをした形跡が見られないことだ。
小川さんの証言について親は何と言っているのか? その通りだと認めたのか、それとも認めなかったのか? MBSの山口綾野氏は何も書いていない。
自分は実際の放送を見ていないので、あくまで推測でしかないが、MBSは小川さんの親には取材しないまま放送した可能性がある。
小川さゆりさんに取材するだけでなく、親にも取材し、彼女の友人たちにも話を聞くなどして、しっかりファクトを固めるというプロセスを踏んだのだろうか? 自分にはそうは思えないのだ。
しかし、今更そんなことを問うても意味がないかもしれない。彼女の両親が月刊Hanadaの取材に答え、「覚悟の告白」をしているのだから、内容は推して知るべしだ。
両親の告白により、これまで小川さゆりさんが語ってきたことには重大な疑問符が付くことになるだろう。
公の場であれだけ親の悪口を言い、親が信仰する教団を罵倒してきたのだから、ある意味、当然の成り行きだと言える。
【マッシモさんのプロフィール】
Massimo Introvigne (1955 年 6 月 14 日ローマ生まれ)は、イタリアの宗教社会学者です。彼は、新宗教運動を研究する学者の国際ネットワークである新宗教研究センター(CESNUR)の創設者であり、マネージング・ディレクターでもあります。
Introvigne は、宗教社会学の分野で約70冊の本と100以上の記事の著者です。彼はイタリアの百科事典(イタリアの宗教百科事典)の主な著者でした 。彼は、Interdisciplinary Journal of Research on Religionの編集委員会のメンバーであり、カリフォルニア大学出版局のNova Religioの執行委員会のメンバーでもあります。
2011年1月5日から12月31日まで、欧州安全保障協力機構(OSCE)の「キリスト教徒や他の宗教のメンバーに対する差別に特に焦点を当てたレイシズム、外国人排斥および差別との闘いに関する代表」を務め、2012年から2015年まで、世界規模で「信教の自由」の問題を監視するために、イタリア外務省によって設立された「信教の自由の天文台」の議長を務めました。
今度の福田ますみさんの論文は、マッシモ・イントロヴィニエ氏の指摘がどこまで正しいか、その内容を超える新たな指摘や事実があるか、彼女の背後にいるとされる「巨悪」とは誰(何)か、などが読みどころになると思われる。
■5,文鮮明教祖は「体を売ってでも献金しろ」と本当に話したのか? 真実はとっくの昔に明らかになっていた(追記1)
まだ3月号が届かないので福田ルポは未読だが、ネットで見かけたツイートについて追記する。
Deep seaさんのこんなツイートを読んだ。
Deep seaさんが引用しているツイートに、
「体を売ってでも献金しろ」という文鮮明本人が語っているみ言葉をどうぞ。
とある。
これについては、マッシモ氏が上記リンクの論文で既に反論済みだ。
小川さんはまた、一夜にして統一教会の問題の専門家になり、彼女が生まれるかなり前に文師が行った説教で、「統一教会に献金するために日本の信者にお金を借金してでも、体を売ってでもするよう」勧めたという言葉を引用した。
文師がそのようなことを語ったことはない。彼女が言及した説教は韓国語で行われたものであり、文師は韓国人の男性信者(日本人ではない)に、一般的な韓国の表現を使って、教会の仕事に「身も心も」捧げるように促したのであって、これは売春とは何の関係もない。
小川さんは1988年の説教に言及していたが、彼女は1995年生まれだった。明らかに、彼女はその説教を直接聞くことはできなかったし、彼女を「操っている」反カルト運動から聞いたことを繰り返しているに過ぎない。
彼女は、父親が自身の説教でこれらの言葉を引用したと主張して、この反論に答えようとした。
しかし、彼女の父親はそれをきっぱりと否定し、小川さんが参加していたのは子供や学生向けの礼拝であり、そこでは献金に関わることはまったく語られないと述べている。
韓国語の語学力のない者が適当に訳した文章を、小川さんは信じ込んでしまったようだ。真相はマッシモさんが書いている通りだろう。
どちらの言い分が正しいかは、韓国語のできる人が検証すればいい。自分はマッシモさんの指摘を信じる。
既にある主張を崩すために、わざわざ韓国語を誤読、誤訳して反論するのは愚かだからである。反論にあたっては、韓国語のわかる専門家に頼んで訳文を慎重に検討したに違いない。
■6,拉致監禁による強制棄教の現場で効果的に利用されてきたらしい、意図的な誤読、誤訳、曲解(追記2)
自分が調べた範囲で言うと、実は拉致監禁の現場では、こうした誤読、誤訳、曲解が信者を「落とす(棄教させる)」手段として効果的に使われてきたようだ。
反統一教会勢力にたぶらかされた親たちは、信者である息子・娘を身体的に拘束して拉致し、マンションの一室などに監禁する。
そこに現れた「脱会カウンセラー」(多くの場合、キリスト教の牧師)は、この種の誤訳、誤読、曲解をあたかも真実であるかのように信者に語り、信じ込ませてしまうという。
なぜなら、話を聞かされた信者は、それが事実かどうか確かめるすべを持たないからだ。
例えば、文鮮明教祖の説教集が韓国語で書かれていて、監禁された信者が韓国語ができないと、
「あんたが再臨のメシアと信じている文鮮明は『体を売ってでも献金しろ』と言ってるんだ。そんな教祖を信じるのか?」
と言われても、本当かどうか確かめようがない。
この種の偽情報を次々に繰り出されたら、信者は「あなたの言っていることが本当だとは思えない」と言い続けられるだろうか?
棄教の強制は、本人が監禁され、外部との連絡を遮断され、教団とはもちろん、親しい信者仲間、非信者の友人や知人とも、結婚や婚約をしていれば配偶者、婚約者とも、一切、連絡を取れない中で行われるのである。
自分で本屋に行くことも図書館に行くこともできないし、インターネットも当然、使えない。
監禁下にある信者は絶対的な弱者である。逆に、監禁した者の側に立つ「脱会カウンセラー」は、絶対的な強者である。
カウンセラーの牧師たちは、誤訳、誤読、曲解と知ってかどうかは不明だが、信者を「落とす」ためにそれを使う。本当かどうかは二の次で、信者を落とすのに効果があるなら何でもいい。手段を選ばないのが彼らのやり方だ。
「脱会カウンセラー」が「話し合い」「説得」と称し、偽情報を駆使して信者を追い詰めていく時、その場には大勢の親族がいたり、既に棄教した元信者たちがいて、よってたかって責め立てるという。
例えば、こんなふうに。
「こんなひどいことを言う文鮮明を、お前はまだ信じるというのか。人間として恥ずかしくないのか!」
「牧師さんも、ここにいる親類も、元信者の皆さんも、みんなお前のためを思って、わざわざ時間を取って来てくださっているんだ。その気持ちがわからないのか!」
「信じられないと言って頑張っている間は、ここから出られないぞ。1年でも2年でも、いや一生ここにいたっていいんだぞ!」
もはやパワハラなんてものじゃない。人権侵害、人権蹂躙という言葉も生ぬるいと感じる。凄絶と言えばこれほど凄絶な体験はなく、宗教2世の体験を指して使われる「凄絶」という言葉は、言葉の使い方を間違えているんじゃないかと思うほどだ。
「キリシタンへの宗教迫害に匹敵する悪魔の所業」という表現も、決して大げさではない。
これだけのことをされたら、どんな信心深い信者も「落ちる」しかないだろう。落ちなければ自由になれない以上は、他に選択肢はないのである。
しかし、そうやって脱会した人が、自由になった後、わざわざ韓国語を勉強して、自分が聞かされた言葉が正しい翻訳だったかどうかを確認するだろうか? おそらくしないだろう。
誤訳、誤読、曲解の数々をシャワーのように浴びせられ、ついに反統一教会勢力の軍門に降った元信者が、後からそんなことをするとは思えない。
誤訳、誤読、曲解の数々は、このように信者を落とすツールとして、反統一教会勢力の内部で語り継がれ、利用され続けてきたと思われる。
しかし、それがいったん外部に流出してしまうと、決して長続きはしないものだ。
世の中には韓国語の語学力のある人間はいくらでもいる。マッシモさんや福田さんのように、「この情報は本当なのか?」と思って本気で調査を始める人間もいる。
遅かれ早かれ、誤訳、誤読、曲解は暴かれ、真実が明らかになる。「体を売ってでも献金しろ」はその一例だろう。
だが、恐ろしいのはこれが氷山の一角かもしれないということだ。反統一教会勢力は、この種の偽情報をいくつ持っているのか、10個? 20個? いや100個か?
さらに問題なのは、統一教会による「被害」を吹聴しているのが、拉致監禁を「保護」と言い換え、監禁現場で行われる偽情報による棄教の強要を「話し合い」と呼んで正当化し、そうした行為に直接関与したか、幇助したか、知らない振りをしたか、うわさは聞いても真相を確かめようとしなかったか、統一教会の宣伝だからウソだと決めつけたか、とにかくそういう類いの連中だということだ。
こんな連中の吹聴する「被害」を素直に信じられるはずがない。水増しされ、誇張され、中にはデッチ上げられたものもあるに違いない。
彼らの言うことは、疑ってかかるのがむしろ自然な態度である。
そして、「被害」の背後に隠された闇にこそ光を当てなければならないのだ。