立憲民主党は旧統一教会だけでは飽き足らず、エホバの証人への批判も強めているようだ。宗教というものを知らず、信教の自由を尊重する気もない政党が、「人権」の名を借りて暴走し続けている。
日本の宗教界は、旧統一教会への魔女狩りを黙認したことを、いずれ後悔することになるだろう。
「宗教2世」は新宗教に限らず、あらゆる宗教に関わる言葉である。それが独り歩きを始めている。
国会議員もマスコミも「被害者」と称する者にしか話を聞かず、取材もしないことは、すでにこれまでの経緯から明らかだ。
この記事で特におかしいと感じたのは次の箇所。
エホバの証人には見逃せない人権問題も存在すると横道氏は指摘する。
「婚前交渉をはじめ多くの禁止事項があり、それに背いた信者は査問委員会のようなものにかけられ、地区のリーダーにあたる『長老』から具体的にどのような行為だったのかを根掘り葉掘り質問されます。
破門に当たる『排斥』を受ければ、信者である親や知人たちと会話することも許されず、それまで一般社会から隔てられて信者コミュニティーのなかだけで生きてきた人は、非常に苦しい状況に追い込まれることになります」
横道誠氏は京都府立大学准教授だそうだが、婚前交渉の禁止など世界の宗教界を見渡せば、いくらでもあること。そんなことも知らないのか。
旧統一教会については、その2世たちが、
- 「恋愛が禁止されている。カルトだ!」
- 「教義を押し付けられた。教団を解散させろ!」
- 「毎月10分の1献金しなきゃいけない。洗脳だ!」
などと騒いだが、そんなもの、宗教の世界では全然珍しくない。
にもかかわらず、こんなたわけた主張をマスコミのみならず立憲民主党までが取り上げ、「問題だ、問題だ」と大騒ぎしているのだから話にならない。
その立憲民主党はエホバの証人も問題視しているらしい。
ところで、イスラム教の国、インドネシアでは昨年末、婚前交渉が法律で禁止された。最長で禁錮1年である。
最初はインドネシアを訪れた外国人にも適用されるということだったが、さすがにこれはやり過ぎということで外国人は除外されたようだ。
インドネシア当局は(22年12月)12日、先に議会が可決した、婚外交渉を犯罪化する改正刑法について、同国を訪れる外国人観光客には適用されないとの見解を示した。
この改正法は3年後に施行される予定で、婚外交渉をした場合は最長で1年、結婚せずに同居したカップルは6カ月の禁錮刑を科せられる。
一連の改正は、イスラム教徒が大半を占める同国で宗教保守の台頭を受けたもの。
海外では婚外交渉の禁止が大きく取り上げられているが、インドネシア国内では、大統領や副大統領に対する批判の禁止など、政治的な自由を制限する改正内容のほうが、不安の声が強い。
日経によれば、この法律は全政党の賛成で成立した。反対する党は1つもなかった。
しかも、インドネシア国内では「婚前交渉・婚外交渉の禁止」よりも、「大統領や副大統領に対する批判の禁止など、政治的な自由を制限する改正内容のほうが、不安の声が強い」という(こちらはBBCによる)。
「婚前交渉・婚外交渉の禁止」なんか当たり前と考えるインドネシア人が多いということだろう。
この法律は基本的に大人を対象にしたものだから、未成年の児童にそのまま当てはまるものではない。しかし、児童に対しても性に関する規範は厳しい。
「インドネシアにおける子どもの性をめぐる問題の解決」(PDF、神内陽子著、2019年)という論文には、こんな話が載っている。
16歳の少年と15歳の少女が合意の上、性的関係を持ち、少女はやがて妊娠した。それぞれの両親と隣組の組長、村長が一同に会して話し合いがもたれ、少年と少女は結婚を望んだが、少女の両親が結婚に反対。
話し合いで解決できず、警察に届け出がなされた。警察でも結婚するよう説得した結果、最終的に若年結婚が成立。
しかし、少年は裁判で禁錮1年の実刑判決を受け、少年収容所に収容された。
これは50年前の話ではない。2010年代に起きた話である。
性に厳しい規範や法律の背景にはイスラム教がある。
インドネシア国内には非イスラム教徒もいるはずだから、法律まで作って罰することには賛成できないが、イスラム教が婚前交渉禁止、婚外交渉禁止の規定を大切にしていること、この事実は動かせない。
イスラム教とはそういう宗教なのだと認めるしかないのである。
信じない者にとってはアンビリーバブルだとしても、信じる者にとっては当たり前のこと。これが宗教の世界である。
旧統一教会やエホバの証人を批判する立憲民主党議員や宗教2世の諸君らは、彼らインドネシア人も「洗脳されている」「マインド・コントロールだ」「虐待だ」と言うつもりだろうか。
「そうだ、その通り」と言うなら、是非インドネシア大使館に行って、かの国の人たちに抗議してみたらいい。どんな反応が返ってくるか直接、自分の目で確かめたらいいと思う。
インドネシアは宗教上の禁止行為を国として犯罪化したのである。それを「被害」と捉え、「虐待」と同一視するなら、インドネシアは国家ぐるみで虐待を行い、国家そのものが加害者ということになる。
横道誠氏は、エホバの証人の婚前交渉の禁止規定を批判した。だとしたら、同様の禁止規定を持つイスラム教も批判しなければ筋が通らない。
「旧統一教会は恋愛を禁じている。これは虐待だ」と非難した立憲民主党は、国家ぐるみで虐待を行うと決めたインドネシアにはどんな態度をとるんだろう?
事の重大さを考えたら、日本政府に対し断交を求めるぐらいのことをすべきではないか。
どうせやらないだろうが、それは結局、イスラム教は批判しないけど、旧統一教会やエホバの証人は批判する、ということだ。
信者数の多い宗教は批判せず、マイノリティー教団や異端とされる教団だけをターゲットにする。これが彼らの陰険なやり口だ。
彼らを見ていると、世の中から「イジメ」がなくならない理由がよく分かる気がする。