吊りしのぶ

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NHKBS「キャッチ!」で紹介。ジェンダー平等、LGBT差別禁止の行き着く先は「Ladies & Gentlemen」「父と母」が差別用語になる世界

NHKBSに海外の重要ニュースを紹介する「キャッチ!世界のトップニュース」という番組がある。

いつも録画しておくのだが、3月3日放送分を見ていたら、週1回の「@nyc」コーナーでニューヨーク在住、日本語ぺらぺらのマイケルさんが面白い(実は不愉快でもある)ことを話していた。

最近、こんなことがあったそうだ。以下、画像も含めて番組から引用しよう。

マイケル 今週うちの子供に説明するのに困ったニュースがありました。

聞いたかもしれません、ロアルド・ダールという児童文学の巨匠ですね、『チャーリーとチョコレート工場』以外にも、いくつものベストセラーがあります。『マチルダ』『BFG』など。

その作品の差別的な表現を見直すという名目で、出版社で何百もの言い換えが行われることになりました。

3月3日放送のNHKBS「キャッチ!」より

イギリスの作家、ロアルド・ダールの邦訳は日本でも沢山出ている。『BFG(ビッグ・フレンドリー・ジャイアント)』はスティーヴン・スピルバーグ監督によって映画化されており、他にも映画化された作品がいくつもある。

マイケル 問題は、その差別的な表現の中には例えばこちら、Ladies and Gentlemenが、あのね、最近のジェンダー・ニュートラルの空気に合わないということで、ただの、皆さん、Folksという単語に変わっているとか、あとMother and Father、母親と父親も、同じくジェンダー・ニュートラルのただの親、Parentsに変わっているとか、「おや、おかしくないか、それ。おや?」っていうような、そういうエディット(編集)が多数入ってるんです。

ポリティカル・コレクトネスの、もう強力なやつですね。

うちの10歳の息子にニューヨーク・タイムズとか見せながら頑張って説明したんですけれども、不思議な顔をしてました。

マイケルさんの発言は人間としてごく普通のものだし、自然な感情の発露だと思う。

しかしここで疑問。

ジェンダー・ニュートラルへのこだわりは、「性の多様性尊重」「LGBTの尊重」などから必然的に出てくるものだが、マイケルさんは、自分が出演しているNHKが「性の多様性尊重」「LGBTの尊重」にとりわけ熱心なことを知っているんだろうか?

3月3日放送のNHKBS「キャッチ!」より

3月3日放送のNHKBS「キャッチ!」より

日本人キャスターの反応も見てみよう。

別府 (戸惑いがちに)はい、あの、人種差別的な表現などは使わないことは分かるんですが、父親、母親というその言葉には差別的な意味合いはないと思うんですが、こうした言葉まで議論になっているということですか?

どうやら別府キャスターは、立憲民主党が同性婚の法制化に際して、関連する民法の条文にある「父母」「父」「母」をただの「親」に変えようとしていることをご存じないらしい。

tsurishinobu.hatenablog.com

これが現実のものとなれば、同様の言い換え(=言葉狩り!)を社会のあらゆる領域に広げようという運動が活発化することは間違いない。

マイケルさんの話は、アメリカは既にそうなっていることを教えてくれる。

マイケル あのう、そうなんですけど、まあ、一部では、本当にマイナーな一部の人たちが、性別の区別まで問題視するんですけど、今回、多くの人たちが団結して、書き換えに反対を訴えました。

「半世紀以上も愛されてきた作品をいじるな!」ということで立ち上がったものですから、出版社も押されて、このエディットされた作品と隣り合わせにオリジナル・バージョンも販売し続けると発表しました。(「やったぜ!」という表情)

性別の区別を問題にする声は日本でもよく聞く。実際、そういう声に配慮して性別記入欄の廃止が進んでいる。

公立高校の入学願書から性別欄をなくしたり、履歴書の性別欄を任意記入に変更したり、といった動きだ。

www.sankei.com

おかしなことをするなと思っていたが、ニューヨークの過激な動きについてマイケルさんが、「一部では、本当にマイナーな一部の人たちが、性別の区別まで問題視する」と批判的に語っていたのが印象深い。

サイレント・マジョリティーの声は日米共通なんだと分かったのは収穫だった。