吊りしのぶ

気の向くまま、思い付くままに。記憶にとどめたいoutputの場として。

紀藤正樹弁護士を痛撃か?『間違いだらけの「マインド・コントロール」論~紀藤正樹弁護士への反論』(魚谷俊輔著)が刊行/【追記】AMAZONで販売開始!

1,『間違いだらけの「マインド・コントロール」論~紀藤正樹弁護士への反論と正しい理解』の刊行

魚谷俊輔著『間違いだらけの「マインド・コントロール」論~紀藤正樹弁護士への反論と正しい理解』(賢仁舎)が出版された。税込1,320円。

現時点ではアマゾンではまだ買えない。アマゾンが仕入れ途中らしく、まだ販売が始まっていないからだ。(賢仁舎では刊行直後から発売している模様)

【追記:アマゾンで販売開始。立民の長妻昭議員や維新の音喜多議員、マスコミ各社の「マインド・コントロール」を信じてる皆さん、そろそろ紀藤正樹弁護士の「だましのテクニック」に気づいた方がいいですよ。紀藤弁護士の“力作”『マインド・コントロール』(出版=アスコム)は説得力ゼロ!】

この本が出ることは、月刊「Hanada」5月号に広告が載っているのを見て知った。

月刊「Hanada」5月号より

福田ますみさんの「統一教会ルポ」シリーズは今号はお休みだった。その代わり、杉原誠四郎氏がこの問題で2回目の登場。「『統一教会』に信教の自由はないのか」というタイトルで寄稿している。

『間違いだらけの「マインド・コントロール」論』の広告は、その杉原氏の寄稿の最終ページに載っていた。

「統一教会」に信教の自由はないのか|杉原誠四郎【2023年5月号】hanada-plus.shop

本の紹介は賢仁舎ウェブサイトより

著者は旧統一教会の関連団体の事務総長を務める人で、その活躍ぶりは宗教ジャーナリストの室生忠氏が著した大著『日本宗教の闇~強制棄教との戦いの軌跡』(アートヴィレッジ、2017年)に活写されている。

2,ICSA(国際カルト研究協会)主催の国際会議に乗り込む。12年5か月監禁された後藤徹氏はスティーブン・ハッサンと論戦

海外では21世紀を迎える前に根絶された「拉致監禁による強制棄教」が、21世紀の日本で堂々とまかり通っていることが国際問題となり、新宗教問題を専門とする国際機関がシンポジウムを開いたことがあった。

魚谷氏はそこに招かれて、旧統一教会の信者で「拉致監禁被害者の会」の代表(後藤徹氏)らとともに発表を行っている。

この会議には紀藤正樹弁護士ら全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)のメンバーも参加し、公の場で議論を戦わせたという。

2011年7月7~9日、スペイン・カタルーニャ地方の中心都市、バルセロナで開催された「ICSA2011国際会議」。

ICSAという国際団体(国際カルト研究協会。本部フロリダ州)は「反カルト」の立場をとっており、それまでは日本からたびたび反統一教会勢力の人たちが参加していた。

ところが、2010年の米ニュージャージー州フォートリーで開かれたICSAの会議で思わぬ“事件”が起きる。

魚谷氏も参加したこの会議で、12年5か月もの監禁体験を持つ後藤徹氏が、反統一教会勢力の中でもとりわけ著名なスティーヴン・ハッサン氏と激論を交わしたのだ。

「自分はディプログラミングを支持しない」と逃げを打つハッサン氏に対し、後藤氏は日本では長い間、ディプログラミング(拉致監禁による強制棄教)が行われており、拉致監禁を正当化するためにハッサン氏の「マインド・コントロール理論」が使われていると鋭く指摘した。

3,拉致監禁が横行する日本の実態を初めて知り、動揺したICSAの関係者たち

ディプログラミングの苦しみを理解しようとしないハッサン氏を、後藤氏が実体験をもとに批判すると、彼は防戦一方になり、困惑の表情を隠せなかったという。

日本でディプログラミングが横行しているという情報は、ICSAの関係者を驚愕させた。当然だろう、反統一教会勢力の連中は、自分たちがやっていることをディプログラミングだとは言わないからだ。

彼らはそれを臆面もなく「保護説得」と呼ぶ。そうした報告ばかり聞かされていたICSAの関係者たちは、後藤徹氏の体験と統一教会側がまとめた報告を聞いて、動揺したのである。

4,2011年7月のICSAの会議(バルセロナ)で「日本におけるディプログラミング~事実か虚構か」と題する討議が実現

翌2011年7月の上記国際会議では、「日本におけるディプログラミング~事実か虚構か」という討議が実現した。

この時、統一教会側でプレゼンを行ったのは4人。その1人が魚谷俊輔氏である。魚谷氏は「日本における『青春を返せ』訴訟と強制改宗の関係」という発表を行っている。

この時の様子について『日本宗教の闇』には次のように書かれている。

「日本における強制改宗」セッションは、樋口*1、後藤の臨場感あふれる実体験報告に続いて、魚谷のプレゼン『日本における「青春を返せ」訴訟と強制改宗の関係』に突入していた。

5,英語でのプレゼン「日本における『青春を返せ』訴訟と強制改宗の関係」

「札幌における『青春を返せ』裁判の原告(脱会信者)総勢21名のうち8名が明確に監禁された事実を認めている。

また、8名は『監禁』という表現は否定したが、部屋に内側から鍵がかけられて自由に出入りできなかったことを認め、2名が軟禁状態にあったと証言している。

物理的な拘束を事実上認める証言が、全体の75%を越えていることは特筆に値する。『軟禁』も含めれば、実に86%の原告が、何らかの拘束を受けた状態で脱会を決意したことになる」

 魚谷は次の3点を挙げて、「青春を返せ」裁判原告の脱会信者に存在した“自由の拘束”を立証したのである。

  1.  統一教会を訴えた元信者たちの大部分が、脱会する前に物理的な拘束を受けていた。
  2.  脱会を決意するにあたって、「脱会カウンセラー」と称する第三者の介在と働きかけがあった。
  3.  「脱会カウンセラー」の目的は、信者に対する神学的、教義的な批判を通して、統一教会の信仰を捨てさせることにあった。(『日本宗教の闇』p.326)

といった具合である。

魚谷氏は、「カルト」を差別用語として否定し、ICSAとは異なる立場をとる国際的な新宗教研究団体CESNUR(新宗教研究センター。設立者はマッシモ・イントロヴィニエ。本部イタリア・トリノ)が2011年6月に台湾で開催した国際会議でも同様のプレゼンを行った。

この論文(「日本における『青春を返せ』訴訟と強制改宗の関係」)は現在、CESNURのウェブサイトで公開されている。

www.cesnur.org

  • "Lost Youth" Compensation Cases and their Relation to Forced Conversion in Japan, by Shunsuke Uotani - A paper presented at the 2011 International Conference in Danshui, Taiwan(PDF

6,プレゼンに反論して拉致被害者の怒りを買った紀藤正樹弁護士

この分科会には紀藤正樹弁護士も参加していたらしく、質疑応答の際に発言したようだ。紀藤弁護士は言う。

「魚谷氏らの話は、虚構と誇張に基づいていると思う。私が担当した東京の『青春を返せ』裁判の原告たちの中には、拉致監禁された人はいなかった」

ここを読んだとき、「本当か? ハッタリじゃないのか」と思ったが、案の定、紀藤発言を聞いて憤慨した人物がいた。それが「拉致監禁被害者の会」代表の後藤徹氏である。

紀藤弁護士の言い分と後藤氏の言い分、どちらが正しいかは、同書の以下のくだりを読めば一目瞭然だ。

7,東京「青春を返せ」裁判に拉致監禁された人はいない? 紀藤発言への反証

「私は12年5か月にわたって、元統一教会信者だった実兄、兄嫁、妹らにマンション等に監禁されましたが、兄は、紀藤弁護士が担当した東京『青春を返せ』裁判原告団の一人でした。その兄本人が拉致監禁によって脱会したのです」

<1987年5月頃、まず、兄が、自宅に帰った際に、両親らによって拉致・監禁され脱会説得を受けました。兄が後日話したところによると(中略)、突然、父の手が兄の体にかかり、父が「それ!」と叫ぶと、物陰から見知らぬ男たちが突然襲いかかってきて、兄は、付近に停めてあった車の中に拉致されたそうです。(中略)

誰かが警察に通報したらしく交番に連れて行かれ、兄が、拉致されたことを警察官に必死に訴えて助けを求めたにもかかわらず、結局、警察は親の言い分を聞き入れ、再び車に乗せられて監禁場所に連れて行かれたとのことでした>(後藤「陳述書」)

「結局、兄は脱会して東京『青春を返せ』裁判の原告団に入り、私を監禁する実行犯と化したのです。

プレゼン席の私を目の前に、東京裁判の原告に拉致監禁体験者は皆無だったと、ヌケヌケと証言する紀藤弁護士とはいかなる人間なのでしょうか。」(後藤氏)

紀藤弁護士の言い分とは異なり、東京の『青春を返せ』裁判の原告たちの中に、拉致監禁された人がいたのは明らかだろう。

8,櫻井義秀・中西尋子著『統一教会―日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会)をブログで徹底的に批判!

以上、今回はまだ『間違いだらけの「マインド・コントロール」論』を読めていないため、著者の魚谷俊輔氏の名前が出てくる室生忠著『日本宗教の闇』のエピソードを記すにとどめた。

この人は個人ブログを運営している。

昨年来、反統一教会の宗教社会学者として引っ張りだこの櫻井義秀氏が、彼の協力者中西尋子氏と組んで著した約600ページの大部な書籍に『統一教会―日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会、2010年)がある。

魚谷氏は同書を自らのブログで全207回の連載によって検証し、総じて厳しく批判しているのだ。

毎週1回、プライベート時間を使ってコツコツ書き続け、積もり積もって207回(!)になったという。期間にして4年以上に及ぶ。よくもそんなに長期間、続けられたものだ。

文字数をざっと数えてみたら約80万字あった。これを本にしたら、604ページの櫻井・中西本をはるかに上回る700~800ページ(?)の大著になるのではないか。

suotani.com

櫻井・中西本には評価できるところもあるそうで、魚谷氏のスタンスはあくまで是々非々である。しかし、結果的に厳しい批判が多くなったのは、ごく自然な成り行きと言えるだろう。

新聞に載る櫻井氏のコメントや雑誌などの比較的短い文章を読んだだけでも、櫻井氏が相当に偏っていることが分かるからだ。宗教社会学者とは名ばかりの反統一教会活動家、というのが自分の受けた印象である。

9,櫻井・中西本を高く評価する東大名誉教授・島薗進氏は、批判や反論に目を通したのか?

同じ宗教社会学者の東大名誉教授・島薗進氏は『統一教会―日本宣教の戦略と韓日祝福』を学術研究として高く評価するのだが*2、同書への批判、反論には目を通したのだろうか?

大学に籍を置かないNGO、それも統一教会のダミー団体と言われるNGO関係者の書いたものなんか取るに足りないと甘く見ていると、いずれ手痛いしっぺ返しを食らうと警告しておこう。

いずれにせよ、櫻井・中西本を論じるからには、上記リンク先の全207回の「書評」を熟読して、その批判に答えなければならないだろう。そうでなければ、学問的に誠実な態度とはいえない。

もっとも、批判への回答を求められているのは、直接的には櫻井義秀氏とその協力者、中西尋子氏である。

*1:韓国人女性と祝福結婚したため、両親、親戚らによって精神病院に強制入院させられ、ベッドと便器だけの牢獄のような狭くて暗い病室で3か月間過ごした。その間、薬物投与を受け続けた。心身衰弱のため、親戚の家に移された後、プロテスタント福音派の西日本福音ルーテル青谷教会執事の尾島淳義氏から約1か月間、執拗で一方的な統一教会の教理批判を受け続けたという。

*2:『情況』2023年冬号p.58「統一教会と現代日本の政教関係」