- 1,「過料」処分とは何だろうか?
- 2,手続きには略式手続き(当事者の陳述なし)と正式裁判の2つがある
- 3,「過料」処分の発端は、岸田内閣の「(解散命令の要件には)民法の不法行為も含む」という違憲の法解釈変更にある
- 4,統一教会は略式手続きを拒否し、正式な裁判で「過料」処分の妥当性、適法性についてとことん争うべき
1,「過料」処分とは何だろうか?
文化庁(文部科学省)が統一教会に対し、質問に対して「回答拒否」をしているとして、過料を課す方向で検討していると報道された。
素人考えだが、自分の見るところ、文化庁側には、
- 後にやってくる裁判であらかじめ優位な位置に立つこと、
- 国民に「統一教会は不誠実だ」と思わせ、世論操作で統一教会を窮地に追い込む、
という狙いがあると思う。
ところで、この「過料」処分とは何だろうか?
宗教法人法第88条の10号にこうある。
第78条の2第1項(注・報告徴収および質問権のこと)の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。
これに違反した場合、
宗教法人の代表役員、その代務者、仮代表役員又は清算人は、10万円以下の過料に処する。
というものだ。
今回、統一教会は「虚偽の報告」をしたとは報道されていない。文化庁は「報告をしない=回答拒否」を理由に過料処分を科す方向で検討しているという。
「過料」とは、参考ウェブサイトによると、次のような性格を持つ。
過料とは行政罰としての金銭罰であり、宗教法人法上の刑罰はすべて「過料」のみです。行政罰としての過料の性質は「秩序罰」とされています。
「過料」は「科料」(刑法231条「侮辱罪」参照)とは異なり、いわゆる刑法上の刑罰ではなく刑法総則や刑事訴訟法の適用はありませんので、警察としては逮捕や強制捜査などをすることはできません。
なお、過料処分は宗教法人の代表役員など個人に対して課されるものであって、宗教法人それ自体に対する処分ではありません。
つまり、「過料」とは、報道されているように宗教法人世界平和統一家庭連合に対して課されるものではなく、同法人の代表役員などの個人に課されるもの。
しかも、これは刑法上の刑罰ではないから、逮捕されることも強制捜査が入ることもない。行政罰としての金銭罰に相当するそうだ。
2,手続きには略式手続き(当事者の陳述なし)と正式裁判の2つがある
具体的な手続きだが、略式手続きで行われるのが一般的だが、正式な裁判にすることもできる。
所轄庁(注・今回は文化庁)から地方裁判所への通知をもって地方裁判所にて行われ、裁判所が10万円以下の金額にて過料の決定をします。
裁判所から宗教法人の代表役員等宛に通知書が送付されることで過料処分のための手続が始まることになりますが、一般的に過料事件は当事者の陳述を聞かない略式手続での決定でなされることがほとんどです。
略式手続にするか否かは管轄裁判所が判断することになります(非訟事件手続法第122条1項「裁判所は、120条第2項の規定にかかわらず、相当と認めるときは、当事者の陳述を聴かないで過料についての裁判をすることができる」)。
略式手続をする際の「相当と認めるとき」とは、所轄庁に対する一部報告書の提出漏れなど、その違反が比較的軽微なケースです。
上記ウェブサイトの説明によると、過料の決定は、当事者の陳述を聞かない略式手続きでなされる。
なぜ当事者の陳述を聞かないのかというと、違反の程度が比較的軽微だからだという。
しかし、いくら比較的軽微な違反だとしても、当事者からすれば事実無根、もしくは文化庁側との認識の違いということがあるかもしれない。
そこで、違反したとされる当事者が、正式な裁判をやって「我々の陳述も聞いた上で判断して欲しい」と申し立てることもできる。
宗教法人側が簡易な略式手続ではなく、正式な過料の裁判(地方裁判所が当事者の陳述を聴いたうえで裁判する方式)をして欲しいと希望する場合には、略式手続での決定について一定期間内に異議を申し立てることで、正式な裁判手続が改めて開始されます。
こうやって、正式な裁判をやって、それでも敗訴した場合、当該宗教法人は高等裁判所に即時抗告(異議申し立て)ができる。
たとえ高裁で敗訴しても、さらに最高裁へ特別抗告ができる。
3,「過料」処分の発端は、岸田内閣の「(解散命令の要件には)民法の不法行為も含む」という違憲の法解釈変更にある
最高裁へ特別抗告するには一定の条件を満たす必要がある。それについて上記ウェブサイトは、次のように述べている。
但し、最高裁への特別抗告については、憲法違反の場合、従前の最高裁判例と相反する判断がある場合、法令の解釈に重大な事項を含む場合など一定の事由がある場合のみに限定されます。
自分は、文化庁が「過料」処分を決めた場合、略式手続きにせず、異議申し立てを行って正式な裁判を起こし、最高裁まで徹底して争うべきだと考える。
なぜか。それは、
- 今回の質問権行使に始まる岸田内閣のやり方が、解散命令に関する法解釈を一夜で180度変え、「信教の自由」を定めた日本国憲法に違反する疑いが濃いこと、
- それは同時に、「法令の解釈に重大な事項を含む場合」に相当すること、
- 「従前の最高裁判例と相反する判断がある場合」に相当すること、
という点で、「過料」処分という判断に至るまでの一連のプロセスに重大な疑問があるからだ。
それに、質問権は警察の捜査権とは違う。刑事被告人でさえ黙秘権が認められているのだから、宗教法人側が後々の裁判で自分の不利に作用するかもしれないようなことを答える義務はないはずだ。
岸田内閣が本気で統一教会をつぶしにかかっている今、
文化庁&裁判所「過料処分が出ました」
統一教会代表役員「はい、わかりました。仰せの通り、10万円払います」
なんて間抜けなことをやっている場合ではない。
繰り返す。所轄庁の質問権行使に対し、刑事被告人でもない宗教法人が、何でもかんでもペラペラ回答しなければならない義務はない。
そして、ここが肝心だが、文化庁が「過料」処分とか言い出したそもそもの発端は、岸田内閣の宗教法人法の法解釈変更にある。
解散命令の要件は宗教法人本体の刑事事件とされていたのに、岸田内閣は「民法上の不法行為も含む」という驚天動地の解釈変更を行った。
それ自体、合理的に説明の付く解釈変更ではないのである。
安倍内閣が集団的自衛権の行使に関する憲法解釈を変えたのとは訳が違う。あれには極めて合理的な、正当な理由があった。
しかも、解釈変更を正式決定するまで、首相直属の懇談会で検討させ、議事録も公開するなど、長い時間をかけている。
4,統一教会は略式手続きを拒否し、正式な裁判で「過料」処分の妥当性、適法性についてとことん争うべき
しかし、今回の宗教法人法の法解釈変更には根拠がない。沸騰した世論に流されただけ。
審議会での議論や検討も一切なく、一夜にして「ノー」を「イエス」に変更するなど、あってはならないことだ。
まさに「法の支配」を揺るがし、「信教の自由」をないがしろにした行政権の濫用である。
岸田内閣の法解釈変更がどれだけ異常かについては、何度でも紹介するが、中山達樹弁護士のブックレットに詳しい。
違憲の疑いが濃く、なおかつ、宗教法人法の条文と趣旨になじまない法解釈変更が行われ、その結果、出てきた過料処分なのだから、統一教会は断固として拒否し、争うべきではなかろうか。
金額が小さかろうと、違反の程度が軽微であろうと、そんなことは関係ない。不当なものは、どこまでいっても不当である。
統一教会には、単に自分の教団を守るというようなケチな考えではなく、日本の「信教の自由」を守り、日本の反宗教的風土、権力の介入を歓迎する異様な風潮と戦うのだ、という気概を持って取り組んでほしい。
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