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「35年で被害総額1,237億円」は6倍に誇張された数字~解散命令請求の理由公表で全国弁連とマスコミのウソが暴かれた!

1,「35年で被害総額1,237億円」と報じていた毎日新聞

毎日新聞22年8月16日付けは、「『旧統一教会、今も違法行為』09年「法令順守」宣言逸脱 全国弁連指摘」と題する記事で、こう書いていた。

全国弁連は、87~21年に全国の消費者センターへの相談と合わせて計3万4,537件の被害相談があり、被害額は約1,237億円に上るとしている。コンプライアンス宣言後の10年以降でも2,875件の被害相談があり、被害額は約138億円に及ぶという。

2021年までの35年間の「被害額約1,237億円」は、産経新聞はじめ大半のマスコミが横並びで報じてきた数字だ。このことは拙ブログで何度も指摘した。

横並びになるのは、①数字の出所が全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)であり、②マスコミはこの数字の信憑性(しんぴょうせい)を一切検証していない、という2つの理由による。

2,「被害相談額」を「被害額」と言い換え、「35年で被害総額1,237億円」と大ウソをついた全国弁連とマスコミ

しかし、ここで言う「被害額」は「被害相談件数」に対応する金額であって、正しくは「被害相談額」もしくは「被害相談金額」と言うべきものだ。

相談してきた内容には、勘違いがあるかもしれないし、到底被害とは呼べないようなものもあるかもしれない。

お店を経営している人、接客を担当している人なら、不当なクレームを言ってきたり、無理筋の相談をふっかけてくる客に悩まされた経験があるはずだ。

買った証拠となるレシートがないのに返品・返金を要求したり、明らかに使用した形跡があっても「一度も使っていない」と主張して別の商品との交換を求めたり。

客が要求が通らないから腹を立てて消費生活センターにクレームを入れると、こんなのでも「被害相談」としてカウントされてしまう。

消費生活センターは「被害相談は相談者の申し出情報に基づいており、事実関係が必ずしも確認されたものではないとウェブサイトで謳っているから安心だが、全国弁連のウェブサイトにそのような説明はない。

以下は、消費者庁「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」に提出された資料から取ったもの。

「いわゆる霊感商法」とあるのは、開運商法の全てを含んでいる。このうち統一教会関連の相談件数は別の資料*1に載っていて、例えば2020年度は33件、21年度は27件しかない。

ひどいもので、産経新聞はかつてこの「いわゆる霊感商法等」の相談件数を、統一教会がらみの相談件数と曲解して報じていた。つまり、このグラフの「2012年度3,267件~2021年度1,435件」を全て統一教会の霊感商法に対するクレームとして報じたのだ。実際には上に書いた通り、そのうちのごくごく一部に過ぎないのに。(22年10月18日拙ブログ参照)

その程度の理解力しかない産経新聞が、全国紙では統一教会批判の先頭ランナーとなってきた。

消費者庁「第1回霊感商法等の悪質商法への対策検討会」の消費者庁提出資料より

産経新聞の話は別として、このあたりの詳しいことは、だいぶ前に以下の拙ブログで書いたのでそちらに譲る。

tsurishinobu.hatenablog.com

さて、以上からも明らかなように、被害相談の内容をその如く信じてよいかどうかは、相手方の言い分も聞かなければ分からないはずだ。

ところが、全国弁連は相手方の話は確認せずに、被害を訴えてきた人の言い分だけで「被害額」を算出してきた。

よって、全国弁連の言う「被害額約1,237億円」は、「被害相談額約1,237億円」と言い換えるべきものである。

ルポライターの米本和広氏は、かつて全国弁連に取材を申し込んだが拒否されたという。そのため、被害相談額の合計ではなく解決金額の合計を知ろうとしたが、知ることができなかった。

全国弁連がやたらと「35年間の被害額約1,237億円」を強調するのは、言うまでもなく統一教会による「巨額の被害」を強調して、世間に「莫大な被害を生んできた教団」というイメージを浸透させるためだろう。

しかし、これはあくまで被害相談額の合計であって、一方当事者の主張にすぎない。「間違いなく被害があったと確定した金額」ではないのである。

こうした虚偽の主張については、これまで何度も論じてきた。

tsurishinobu.hatenablog.com

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3,全国弁連とマスコミは「被害規模」を件数で20倍、金額で6倍に誇張して統一教会を窮地に陥れた

「被害総額1,237億円」を真に受けた報道は、昨夏以来後を絶たない。後を絶たないどころか豪雨の如く日本列島全体を襲ったと言うべきか。

次の日テレ「news zero」もその一例だ。

news.ntv.co.jp

(「去年は3億円超」とも報じているが、これも去年、すなわち2021年に3億円超の被害相談があったというだけで、それは全国弁連側の主張にすぎない。消費者庁の注記にある通り、「相談者の申し出情報に基づいており、事実関係が必ずしも確認されたものではない」のである。

また、この3億円超は被害相談額であるから「2021年に支出された金額」ではないが、番組はそのことにも触れていない。文脈から察するに、番組は「去年に支出された被害額」と思い込んでいるようだ。

何度も書いているように、実際に支出されたのは21年かもしれないし、5年前かもしれないし、10年前、20年前の可能性もある。10年、20年前の支出を持ち出して「被害を受けた」と訴えた場合、そんな昔の支出をなんで今になって「被害」と言うのか、「被害」認識があったのなら、なぜもっと早く教団側と返金の交渉をしなかったのか、という疑問が生じる)

さて、自分はこうした被害額の水増しやデマを、統一教会がなぜ大々的に世間にアピールしないのか不思議に思っていたが、*2解散命令請求を受けて教団が記者会見を行った後に発表した「10月16日記者会見における声明全文―宗教法人解散命令請求に対して」には、被害額の誇張を強い調子で非難したくだりがある。

その箇所を引用しよう。

また、全国霊感商法対策弁護士連絡会、いわゆる全国弁連はこれまで、過去35年間に寄せられた当法人に関する「相談件数」は約3万4000件、「被害金額」は1200億円以上と吹聴してきました。

ところが、文科省がこのほど発表した当法人による「被害規模」は、1980年以降において約1600件、金額は約226億円でした。

この文科省の数字と比べると、全国弁連が主張する件数は約20倍、金額は約6倍であり、全国弁連が当法人による「被害」をいかに誇張してきたかを示しています。

なお、文科省が発表した「被害規模」も交渉の上で和解や示談が成立した金額が多数含まれており、「被害」の実態とはかけ離れています。

全国弁連は1987年~2021年までの被害総額を約1,237億円と言ってきた。

だが、文科省は被害の起点を全国弁連の集計開始より7年も前の1980年に置いた。

統一教会を解散に追い込むには、被害件数も被害額も多い方がいいに決まっている。期間を長めに取って被害件数・金額を増やそうとしたわけだが、文科省が最終的に公にした数字は「被害件数約1600件」「被害金額約226億円」であった。

教団の主張では、文科省の出した数字も「実態からかけ離れている」という。ただ、どのようにかけ離れているのか自分には分からないので、ひとまずその点は脇に置く。

すると、少なくとも次のことは確実に言えるはずだ。

全国弁連はこれまで「被害規模」を件数で約20倍、金額で約6倍に誇張してきたということである。

「35年で被害総額1,237億円」は約6倍に誇張された数字だったのだ。

なお、念のため付け加えると、文科省が公表した「被害金額約226億円」は全て清算が終わっている。今も分割払いで返金が続いているものがあるかもしれないが、基本的には清算済み(と教団は説明している)。

これは極めて重要な点だ。多くの国民はこの「被害件数・被害金額」について、まだ救済されていない人たちがこれだけいて、彼らを一刻も早く救済しなければ可哀想だ、などと勘違いしているのである。

*1:消費者庁「旧統⼀教会に関する消費⽣活相談の状況について」(令和4年9月30日)。消費者庁お知らせ

*2:23年春に出た「私たちの声を聞いてください」冊子にはその旨が書かれている。