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「被害総額1237億円」は壮大なウソだった! 対策弁護士連絡会にまんまと利用されたマスコミは恥を知るべき(1)

1,「(2021年までの)被害総額1237億円」という壮大なウソ

統一教会による過去35年、1987年~2021年までの被害総額は1237億円に上る――とマスコミは繰り返し報道してきた。どのマスコミも横並びで、被害総額となると大抵この数字が出てくる。

出所は全国霊感商法対策弁護士連絡会(対策弁護士連絡会、全国弁連)。

「情報源が同じなのだからアウトプットも同じになるのは当たり前」

と思った人は、メディアリテラシーのない人だ。

昨夏7月以来の報道で、この数字に疑問を投げかけたのは、ノンフィクション作家の福田ますみさん(「月刊Hanada」4月号)ぐらいだから、それ以外の人は、教団関係者を除けば、全員メディアリテラシーがないことになる。

結論からいえば、この「被害総額1237億円」という数字は壮大なウソ、でっち上げである。

これを全国弁連の言う通り、何の検証もせずにあらゆるマスコミが紙面やネット、公共の電波を使ってばらまいたために、ただでさえ悪い統一教会のイメージは急落し、井戸の底まで落ちていった。

もちろん、イメージ悪化の要因はほかにもあり、「被害」の個別事例の手口や「被害者」の証言なども大きく影響している。

2,弁護士連絡会の世論工作に、まんまと利用された産経新聞

では、なぜ「被害総額1237億円」という数字は壮大なウソであり、でっち上げなのか?

断片的に何度か書いてきたが、ここでまとめてみよう。

まず、産経ニュース22年8月8日の記事に出てきた次のグラフに注目したい。

産経ニュース22年8月8日より

このニュースは紙版では産経新聞22年8月9日に掲載された。見出しは、

旧統一教会霊感商法被害1,237億円 対策弁護士連絡会、3万人を確認

本文には次のような記述がある。

霊感商法は事件化などによって被害人数は減少したものの、いまもなお続いており昨年(令和3年、2021年)は約3億円の被害が確認された。

不安をあおり、壺(つぼ)や置物などに超自然的な霊力があるように思わせ、不当に高い値段で売り込む霊感商法。昭和60年ごろから社会問題化し、全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、旧統一教会による霊感商法の被害62年には約164億円にのぼった。

同会の渡辺博弁護士によると、霊感商法を行っている団体は他にも存在するものの、全国で大規模に行っているのは旧統一教会だという。

平成21年には不安をあおり高額の印鑑を購入させたとして、警視庁公安部が特定商取引法違反の疑いで、旧統一教会と密接な関係にあった印鑑販売会社社長らを逮捕。これ以降、大々的な勧誘は鳴りを潜めたものの、同会が確認した被害はこれまでに3万人以上、1237億円以上にも及ぶ。

冒頭の「霊感商法」の説明は、対策弁護士連絡会の説明そのままで、宗教的価値を否定する唯物論の立場で書かれている。

もうここからして産経新聞記者は弁護士連絡会に取り込まれていることが分かる。

「霊感商法」の定義としては間違いだと言わざるをえないが、本題から外れるのでここではこれ以上踏み込まない。

この記事を読んだ読者は、対策弁護士連絡会が言う「被害」が実は「被害相談」であり、金額も「被害相談額」のことだと想像できるだろうか?

普通に記事を読む限り、まずそうは思わないだろう。グラフにもしっかり「被害金額」「被害総額は1237億円以上に及ぶ」と書いてあるからだ。

弁護士連絡会のイメージ操作(端的に言ってウソ)に産経新聞がまんまと引っ掛かったか、もしくは分かっていて弁護士連絡会に同調し、そのウソを垂れ流したか、どちらかであろう。

あの当時はどのマスコミもこんな調子で報道していた。反統一教会機運を盛り上げたい弁護士連絡会によって、産経新聞ほか大半のマスコミが都合よく利用されたことは確かである。

3,「被害額」でないと言える理由①=AERAがかつて「被害相談額」だと報じていた

では、なぜ1237億円は被害額ではなく、被害相談額に過ぎないと言えるのか?

理由を4つ挙げておこう。

1つは、継続的に統一教会問題を追いかけているAERAが、2007年11月19日号ではっきり「被害相談額」と報じていたこと。

AERA2007年11月19日号より

AERAの記事には、2006年までの「約20年の被害相談額は約963億円」とある。「被害額」とは書いてない。

弁護士連絡会などに被害の相談をした人がいて、その人の申告に基づいて算出した金額の合計が2006年までで約963億円ということだ。

「被害の相談をした人」が被害を受けたと主張する金額だから「被害相談額」である。これが正しい書き方だ。

4,「被害額」でないと言える理由②=米本和広氏によれば、注目すべきは「解決金額」。だが、弁護士連絡会は取材を拒否した

2つめは、ルポライター米本和広氏の指摘である。

米本氏が2008年に刊行した『我らの不快な隣人』(情報センター出版局)に、「ジャーナリストはこうでなくては」と感心させられる、次のような記述がある。

米本和広『我らの不快な隣人』(単行本)p.386より

2006年までの累計を約963億円としたAERAに対し、米本氏は、弁護士連絡会のウェブサイトで公開されている「被害集計」から2007年までの累計額を算出し、「1000億円」と書いた。

この963億円と1000億円、そのどちらも「被害相談額(被害相談金額)」なのである。AERAも米本和広氏もそのように説明している。

ここで、同じデータを使って2021年までの累計額を算出すれば「1237億円」という数字が出てくる。したがって、産経新聞の言う「被害総額1237億円」も、実際には「被害相談額(被害相談金額)」であったのだ。

全国霊感商法対策弁護士連絡会ウェブサイト(キャッシュ)より

『我らの不快な隣人』で米本氏がわざわざ「相談金額」の4文字に傍点を付している理由は明らかだろう。

弁護士連絡会やマスコミは「被害総額」「被害金額」だと言っているが、「それはウソですよ。気をつけましょうね」と読者に注意喚起したのである。

弁護士連絡会のウソを見抜いた米本氏は、同会に「解決金額はいくらなのか?」と尋ねようとした。ところが、取材拒否に遭って分からなかったという。

そこで「解決金額は公表されていない」「確かめることはできていない」としつつ、「仮に300億円とすれば…」と書いて、実際の被害額は3分の1以下と推定したわけだ。

「被害相談金額」よりも「解決金額」の方が、実際の被害額に近いことは言うまでもないだろう。

被害を相談した人が挙げた数字は、あくまで一方当事者の主張であって、相手方、つまり教団側の販売や勧誘に関わった人の主張も聞かなければ、本当に被害なのか、その主張する金額の全てが被害額なのか、といった真相は分からない。

例えば、その時々で十分納得して物品を購入し、同様に献金もしていた人が、ある時、「統一教会が嫌になった」「自分はだまされていたんじゃないか」と思って脱会したとしよう。

その人が、過去に購入した物品を全部返還するからお金を返してほしい、献金も返金してほしいと申し出ても、相手方は簡単には納得しないはずだ。

本人がいくら「自分はだまされていた」と主張しても、相手方は、

「いや、あなたはちゃんと納得して買ってましたよ。献金だって我々は強制していません。今になってそんなことを言うのはおかしい」

と反論するかもしれない。

この場合、両者が話し合っても、全額の返金とはならない可能性が高い。

要求額(弁護士連絡会が言う「被害額」)の5割になるのか3割になるのか分からないが、おそらく大きく減額されるはずだ。場合によっては、全面的に拒否されるかもしれない。

仮に要求額の3割で話し合いが決着したとすれば、「被害相談額10」に対して「解決金額3」となる。この3を「被害額」として公表すれば、その金額の方がより実態に近くなる。

ハッキリしているのは、「被害相談額」は「被害額」とイコールではないということだ。

このことに気付いた米本氏は、弁護士連絡会に取材して「解決金額」を明らかにしようとした。

なのに弁護士連絡会(全国弁連、霊感弁連)は、「統一教会を利するような報道は認めない」という党派主義のゆえか、取材を拒否し、真相を世に明らかにしようとしなかった。

マスコミも世間も、「1000億円(2007年まで)」や「1237億円(2021年まで)」を被害額そのものと誤解して「統一教会は巨額の被害を生んできた」と勘違いしている。

彼らにとってこんな好都合なことはない。「こちらからわざわざ誤解を正す必要はない」と考えたとしても不思議はない。

5,原告勝訴の民事裁判でも、原告の主張する「財産的損害額」は減額された。まして原告敗訴の場合は、被害とは認められない

なお、弁護士連絡会の弁護士が代理人となった民事裁判でも、彼らの要求額(彼らが「被害額」と主張するもの)は、勝訴した場合でも全額認められたわけではない。

この事実からも、彼らの言う「被害額」が一方当事者の一方的な主張でしかないことが分かる。

これについては、拙ブログで書いたことがある。

tsurishinobu.hatenablog.com

ここで紹介した「東京地裁平成17(ワ)第23549号訴訟」では、原告が主張する財産的損害4261万0400円から既に返金された1380万円を控除した額、2881万400円の要求に対し、判決で認められたのは2610万円。

原告の要求は271万400円(約1割)減額された。原告が「被害額」として主張した金額のうち、東京地裁が認めたのは約9割だったのである。

教団側にとっては厳しい判決だったと思うが、原告の言う「被害額」が一方当事者の主張にすぎなかったことは、この判決からも明らかだろう。

裁判所は、筋の通らない要求は被害とは認めなかった。慰謝料200万円の支払い要求も却下している。

数ある民事訴訟の中には、教団側が勝訴した事案がいくつもあるという。それらの事案では、原告の「財産的損害」の主張が退けられたことになる。原告が主張する「被害」は認められなかったのだ。

当然、その人(敗訴した人)が相談し主張した「被害額」は、「被害総額1237億円」から差し引かねばならないはずだ。

6,「被害相談」を隠して「被害」「被害金額」「被害総額」などと報じた産経新聞。誤報、虚報が世論を沸騰させた

長くなるので、理由の③と④は次回に回す。

ここまででもう明白なように、「被害総額1237億円」は壮大なウソ、真っ赤なウソだった。それは被害相談額であって、実際の被害額ではなかった。

「被害相談」の事実を隠して「被害」「被害金額」「被害総額」と報じた産経新聞記事は誤報、虚報である。同様の報道をしたマスコミも同じ穴のムジナだ。

しかし、この誤報(虚報)が世論を沸騰させる一因になったことを考えると、マスコミの罪の深さに愕然とする思いがする。

不思議なのは、ルポライター米本和広氏が提示した「解決金額」という概念を、産経新聞も含めてどこも示していないことだ。

マスコミは日常的に弁護士連絡会に取材して記事を書いているのだから、彼らに

「おたくらが言っている被害額は被害相談額のことでしょ。解決金額はどうなってるんですか?」

と問うてもよさそうなものだ。

だが、記者がそんなことをした形跡は、自分の知る限り、1つもない。

マスコミの記者たちがファクトチェックに関心がないというのは、本当に驚くべきことだ。

弁護士連絡会の発表するまま、言うがままに記事を書き、彼らの操り人形になっているというのに、その自覚が全くないとは呆れた話である。(2)に続く。

【気晴らしsongs】


www.youtube.com

ソプラノ歌手カン・へジョン(강혜정)の美声にはほれぼれする。こんなにも澄み切った、それでいてどっしりした深みのある美声は、残念ながら日本のソプラノ歌手にはないものだ。

歌は「Nella Fantasia(ネッラ・ファンタジア)」。映画『ミッション』に使われたエンニオ・モリコーネの曲に、後で歌詞を付けて歌われるようになったもの。

『ミッション』は18世紀の南米パラグアイを舞台にしたイギリス映画。先任神父の殉教を受けて派遣されたイエズス会神父が先住民に布教し、一定の成果を挙げるが、やがて統治国のポルトガルと利害が対立し、先住民たちと共に武器を取って戦うことになる。

映画館で見てテレビでも見て、自分にとっては忘れられない映画だ。