統一教会が宗教法人法に基づく質問に一部回答しなかったとして、文部科学省が過料を申し立てた問題で、東京地裁が教団側に過料の支払いを命じた。
統一教会はこれでいよいよ苦しい立場に追い込まれた。
裁判は連戦連敗。教団自ら訴えた名誉毀損裁判がことごとく1審敗訴(八代英輝、本村健太郎、紀藤正樹の各弁護士に有田芳生元参院議員)。*1
請願権の侵害だとして関連団体が大阪府などを訴えた裁判も1審で敗訴している。
ここまでの経過を見ると、まだ2審もあるとはいえ、少なくとも1審レベルではもはや詰んだも同然だ。
NHKの報道にはこうある。
旧統一教会への解散命令請求をめぐり、東京地方裁判所は、「多数の被害者の財産権や人格権を侵害する違法行為が繰り返されたとみられ、法令違反の疑いが認められる」と指摘し、質問権の行使に適切に回答していないとして教団に過料10万円を命じる決定を出しました。
地裁決定の原文を読んでいないので、あくまで記事を読んだ限りでの感想だが、東京地裁が「法令違反の疑い」と言っていることは重要だ。
「法令違反の疑い」がある以上、質問権の行使は適法と判断したということだろう。
「法令違反が認められる」と断定的な言い方をしていないのが救いだが、東京地裁が民法上の不法行為を「法令違反の疑いのある行為」と見たことは間違いない。
宗教法人解散の要件の1つは「法令に違反したかどうか」である。
統一教会は「民法上の不法行為は法令違反に該当しない」と主張してきたが、どうやら東京地裁はその主張を退けたようだ。
となると、解散命令をめぐる地裁判決はどうなるのか?
「あくまで法令違反の疑いにとどまり、解散を命令するのは行き過ぎ」となるのか、それとも、「(疑い案件の中には)法令違反の事例がいくつもあった」として、解散命令やむなしと判断するか。
結果は神のみぞ知るだが、崖っぷちに追い込まれた統一教会が、じりじりと後ずさりを余儀なくされていることは確かだろう。
あと何センチ、いやあと何ミリ、後ずさりの余地が残されているのか、これまた神のみぞ知るである。
NHKの記事には、さらに決定的なことが書いてある。
憲法が専門で宗教法人法に詳しい近畿大学の田近肇教授は
「過料も解散命令の手続きも争点となっているのが『民法上の不法行為』が宗教法人法上の要件に含まれるかどうかという点で、東京地裁が民法上の不法行為が含まれると判断したことは、解散命令を請求した所轄庁にとっては追い風となると思う」
と述べました。
そのうえで
「今回、不法行為が旧統一教会の法人として行われたと言えるかという点については、『法人の行為として行われたと評価する余地がある』というやや微妙な言い方をしており、組織的に行われていると断言できるかどうかは、今後の解散命令請求の審理の中で注目すべき点になる」
と話していました。
いま26日23時過ぎだが、統一教会広報は何のお知らせ(ニュース)も出していない。
こっちは宗教迫害を受けている統一教会を何とか応援できないかと思っているのに、この素っ気ない態度は何なのだろう。
時事通信は、裁判所が民法の不法行為を「法令違反」に含まれるとした点を強調している。
鈴木裁判長はまず、民法上の不法行為は宗教法人法が定める法令違反行為に含まれると判断した。
その上で、教団に関する訴訟22件の判決で献金勧誘などを巡る信者らの不法行為が認定され、被害は総額15億円超に上ると指摘。
「他にも被害者が少なからずいることが推認され、質問権が行使された時点では解散命令の要件に該当する疑いがあった」として行使は適法だと結論付けた。
一部の質問については、資料が存在しないなど回答拒否に正当な理由があったとする教団側の主張を認めた。
「一部の質問」とはどういうもので、「正当な回答拒否」はどの程度あったのか、といったことは時事の記事からは分からない。
*1:八代英輝弁護士の裁判は2審も教団敗訴。