- 1,宗教法人「大日院」の副管長が祈祷料名目でお金をだまし取り、詐欺罪で逮捕
- 2,岩手・山形両県警合同捜査本部が副管長を再逮捕。被害者は300人以上?
- 3,特定商取引法違反と詐欺罪の違い
- 4,旧統一教会の霊感商法では、詐欺罪に問われた教団幹部や信者はゼロ~大日院事件との決定的な違い
1,宗教法人「大日院」の副管長が祈祷料名目でお金をだまし取り、詐欺罪で逮捕
去る10月、宗教団体関連の事件で気になるニュースが流れた。
目にしたのは読売新聞ウェブ版の記事。見出しに「祈祷料名目で800万円超を詐取容疑、僧侶を逮捕…東北などで『出張相談会』開き330人から4億円集めたか」とあった。
2024年10月17日19:14にアップされた記事には、
祈祷料名目で現金をだまし取ったとして、岩手、山形両県警の合同捜査本部は17日、宗教法人「大日院」(山形県酒田市)の僧侶真鍋明夫容疑者(67)(福島市)を詐欺容疑で逮捕した。
発表では、真鍋容疑者は2022年6月~今年3月頃、岩手県一関市の公共施設や山形県寒河江市のホテルで、両県の60~80歳代の男女3人に対し、「悪い因縁を取り除くため祈祷が必要。有名寺院に祈祷させる」などと言い、計8百数十万円を詐取した疑い。
実際には有名寺院では祈祷は行われなかったという。捜査本部は認否を明らかにしていない。
捜査本部は、真鍋容疑者が15年頃から東北地方を中心に悩みを聞く「出張相談会」を開き、祈祷料などの名目で少なくとも330人の高齢者らから4億円を集めたとみて調べている。
とある。
2,岩手・山形両県警合同捜査本部が副管長を再逮捕。被害者は300人以上?
被害者は男女3人で金額は800万円超だが、「祈祷料などの名目で少なくとも330人の高齢者らから4億円を集めた」とあるから、この300人以上の人たちもお金をだまし取られた可能性がある。
ただし、この記事ではそこまでは分からない。
容疑者は、ほとんどの人には「悪い因縁を取り除くため」ちゃんと祈祷をしていたが、何人かそれをしないでお金だけせしめたケースがあり、被害者が訴えて事件となったのかもしれない。
全容が分からないうちに全て詐欺と決めつけるわけにはいかない。そう思っていたら、続報が入った。
産経新聞ウェブ版11月6日によると、真鍋容疑者は大日院の副管長で、別件の詐欺容疑で再逮捕されたという。
岩手県警によると、容疑者は真言宗系の宗教法人大日院(山形県酒田市)の「副管長」。
大日院は、家族や病気に関する悩みを聞く出張相談会を、青森を除く東北5県で開き、330人以上から祈禱料などとして4億円以上を集めたとされる。
県警はこのうち約3億9千万円を宗像(本名・真鍋)容疑者が1人で集めたとみており、ほかに被害がなかったか調べる。
再逮捕容疑は2020年2月~21年7月、山形県中山町の当時60代の女性に「血筋のせいであしき現象が起き、断ち切るために供養が必要」などと伝え、計800万円を詐取したとしている。
実際に祈禱させた事実はなかったという。
岩手・山形両県警は、男女3人の他に祈祷料を納めた約330人の中にも被害者がいると見て捜査し、まず60代女性のケースが詐欺に当たるとして再逮捕したようだ。
これから捜査が進めば、被害者の数はもっと増えて、最大300人以上になる可能性もないわけではない。
このニュースは共同通信の他、NHKやTBSがローカルで報じていた。
3,特定商取引法違反と詐欺罪の違い
ところで、産経新聞掲載の写真を見ると、警察はこの事件を「特定商取引法違反事件」と称している。
特商法違反はあくまで特商法違反であって、詐欺罪とは違う。
おそらく両県警は、特商法違反に加えて詐欺罪の疑いがあるということで力を入れて捜査したのだろう。
ウェブ検索したところ、「特商法違反」と「詐欺罪」の両方で起訴されたケースが見つかった。
これは弁護士事務所がうまく弁護して執行猶予を勝ち取ったと自慢している事案だが、解説を読めば分かるように、特商法違反と詐欺罪は別のもので、詐欺罪の方が罪が重い。
つまり、特商法違反だけで逮捕されるケースもあれば、特商法違反に詐欺罪も加わって逮捕されるケースもある。大日院副管長は後者のケースになる。
さて、このニュースを聞いて、「統一教会の霊感商法と同じで悪質だな。こんな宗教法人はさっさと解散させろ」と思った人がいるかもしれない。
「悪い因縁を取り除くため祈祷が必要」と言ってお金をだまし取ったと聞くと、旧統一教会のことを思い浮かべたとしても無理はない。
実際、自分も見出しを見て「霊感商法と似ているな」と思ったので、記事本文を読んだわけだ。
4,旧統一教会の霊感商法では、詐欺罪に問われた教団幹部や信者はゼロ~大日院事件との決定的な違い
しかし、よく考えてみると、この事件は同教団の霊感商法事件とは全く違う。
何が違うかと言えば、旧統一教会の幹部であれ信者であれ、詐欺容疑で逮捕、起訴された者は1人もいないのである。この点が大日院事件との決定的な違いだ。
確かに、旧統一教会関連では、もう15年も前だが、「新世事件」というウィキペディアにでかでかと載るような事件も起きている。
だが、新世事件の逮捕者は教団幹部ではなく信者であり、しかも逮捕容疑は特商法違反(威迫・困惑)にとどまる。
特商法は「不当な勧誘行為」を禁じており、それに違反したのである。
旧統一教会の霊感商法というと、教団や信者が「悪い因縁」などと称し、人をだましてカネを巻き上げる酷い犯罪行為を行ったと思い込んでいる人がいる。
あにはからんや、実際には「10年以下の懲役」に相当する詐欺罪で逮捕・起訴された信者は1人もいないのだ。
特商法違反の事件が過去に数件あった程度。あとはほとんど民事案件である。
つまり、お互いの言い分が異なるため話し合いをするか、裁判で争うかしたものばかり。
結果として教団や信者側が敗訴した民事案件が多くなったようだが、刑法の詐欺罪に問われた者がいないという事実は、どれだけ強調しても強調しすぎることはない。
「旧統一教会は犯罪集団」などと勝手に思い込んでいる人は、理性の光に照らして速やかにその認識を改めるべきだ。
関連する投稿として、10月31日の拙ブログをリンクする。