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旧統一教会の解散理由に「民法の不法行為」を含めるのは宗教法人法の曲解だ~杉原誠四郎氏が批判

8月25日公開の宗教新聞の記事(紙では8月10日号掲載)によると、去る7月、「信教の自由と民主主義の未来」をテーマに国際宗教自由連合(ICRF)日本委員会(委員長・伊東正一九州大学名誉教授)の総会が都内で開かれた。

この時の基調講演で、「新しい歴史教科書をつくる会」前会長で外交史や政教分離問題が専門の杉原誠四郎氏が、1審、2審の判決を引っ繰り返して、公証人役場で作成された念書を無効とした最高裁判決を取り上げたという。

religion-news.net

記事には、

初めに、杉原誠四郎元武蔵野女子大学教授は、家庭連合に関連して、7月11日に出されたいわゆる「念書裁判」の最高裁判断に対して三つの問題点を提示した。

とある。

もっと具体的な内容を知りたいと思い、ちょくちょくウェブサイトを覗いているのだが、一向に公開されない。

8月10日号の目次には、

最高裁「念書裁判」判決への疑問

宗教・信仰の否定につながる

杉原誠四郎・元武蔵野女子大学教授に聞く

という記述が見える。

杉原氏に講演内容についてインタビューしたのだろう。「三つの問題点」がどういうものか知りたいが、残念ながらもう9月。同紙または杉原氏に、記事を無料公開する気はないようだ。

ただ、杉原誠四郎氏は5月15日公開の別のインタビューで、旧統一教会の解散命令裁判について重要な指摘をしていた。

religion-news.net

宗教法人の解散理由に民事事件(民法の不法行為)を含まないとするのが宗教法人法の趣旨だが、それは、解散命令請求を受けての裁判が「非訟事件」として扱われ、非公開で行われることから明らかだという。

杉原氏は、なぜ通常の訴訟事件のように公開で裁判しないのか、なぜ非公開なのか、その意味を考えてみよ、と読者に問うている。

宗教法人法第81条の「解散」には、行政府の判断だけで解散をすることを危険視し、裁判所の承認を得る必要があるとしたのです。

ですから、今回家庭連合の解散に関して行われる裁判所の取扱は、非訴訟事件として扱い、公開の裁判として行うのではありません。それは、宗教法人が犯罪行為などを行って解散事由が明瞭であるとき、そのことを裁判所が確認するとしたものだからです。

一つの宗教法人を解散させるのは途方もなく重要なことです。解散事由が事前には全く不明な民事まで含めて、それで公開の裁判にかけずに非訴訟事件として決定して解散させるというのは、憲法上許されない手続きだということになります。

つまりは、宗教法人法の「解散」は、宗教法人が刑事事件のようなものを犯して、誰が見ても解散事由として納得がいく状況にある場合にのみ、それを前提として裁判所は解散を命じることができるというものなのです。

非常に説得力のある説明だと思った。

東京地裁、東京高裁は、政治やマスコミ世論に媚びて宗教法人法を曲解し、解散理由に民事事件も含めたが、最高裁は良識を取り戻し、本来の趣旨に立ち戻ってもらいたい。

世間では、旧統一教会が民事事件しか起こしていないのに、「こんな詐欺的宗教団体は解散させて当然」と罵声を浴びせ、陰湿なバッシングに明け暮れている。

この背景には、民法の不法行為を刑事犯罪と同列にとらえる致命的な誤解があると思う。

この誤解を広めたのは全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)であり、彼らが提供する情報を鵜呑みにしたマスコミである。

国民の法的無知にうまくつけ込んだとも言える。

だが、国民は主権者なのだから、法律に対する無知をそのままにして、またろくに宗教法人法のことも知らずに、自分の一時の勝手な熱狂で「解散だ、解散させろ」とわめくのは、滑稽でもあり、無様でもある。

この論点については、また別の日に書く。