吊りしのぶ

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AERA「統一教会ホワイトハウス、建設資金は冬ソナバブルから?」(2007年11月19日号)

AERA(アエラ)のバックナンバーを調べていたら、思いもよらない記事にでくわした。

■2007年前後、既に「霊感商法」を「停滞」と表現していたAERA

リード文にこうある。

 教団を象徴する「白亜の聖堂」が韓国の山中に出現。日本での霊感商法の停滞ぶりとは対照的に、韓国ではえらく羽振りがいいようで――。

記事タイトルは「統一教会ホワイトハウス、建設資金は冬ソナバブルから?」。

2007年11月19日号に載ったかなり長い取材記事だ。

AERAバックナンバーのウェブより

冒頭のこの2行だけでもインパクト十分だ。ただし、インパクトがあるのは、2007年当時というよりは、旧統一教会騒動真っ只中の2022年秋の今に対してである。

ここには「日本での霊感商法の停滞ぶり」と書いてある。

周知の通り、旧統一教会は2009年にコンプライアンス宣言を出して、霊感商法や正体隠しと取られる勧誘はやらないと決めた。これに対し、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の弁護士たちは、「いや、2009年以後も被害はずっと続いている」と反論してきた。

しかし、旧統一教会批判の急先鋒である朝日新聞系列の、時に朝日新聞より急進的とされる週刊誌AERAが、2007年11月の時点で「日本での霊感商法は停滞している」と書いていたのだ。

全国弁連は「2009年以後、被害は減ったかもしれないが、依然として続いている」と言っているわけだが、裏を返せば、2009年より前は被害はたくさんあったということだろう。

しかし、AERAは2007年の記事で「霊感商法」について「停滞」と表現していた。これは何を意味するのか?

文字通り素直に解釈すればこうなる。

「霊感商法」が盛んだった頃と比べて獲得資金(全国弁連の言う「被害額」)が落ち込み、「霊感商法」を行う事業者の活動も著しく鈍化した。「停滞」と書くからには、そんな含意があると受け取るのが自然だろう。

では、「霊感商法」の被害額の推移のグラフを見てみよう。拙ブログでは何度も引用しているお馴染みのグラフだ。

産経ニュース22年8月8日より

2007年は平成19年。確かに平成に入ってからは、平成3~5年(1991~93年)のピーク時を過ぎると、金額は3分の1程度に減り、その状態が平成21年(2009年)まで続く。

その後は2022年に至るまで、金額はもう一段ガクンと減って、停滞というより「低迷」状態で推移している。

全国弁連が集計した数字が、文字通り、本当の被害だったと仮定しても、その被害額は激減した。「いまだに多くの被害がある」は真っ赤なウソなのだ。

■「被害金額1237億円の霊感商法」の他に、「献金」でもお金をむしり取っていると思わせる印象操作

ここで注意すべきは、全国弁連が集計した「霊感商法の被害金額」には「献金・浄財」が含まれていることだ。

常識的に考えれば、「霊感商法」と「献金」は別個のカテゴリーで区別して論じるべきものだ。

現に、国会で議論されている被害者救済法案は、献金(寄付)を規制して一定の条件を満たした場合に返金ができるようにするというもの。一方、「霊感商法」(物品販売)の規制は、消費者契約法改正で対応しようとしている。

「霊感商法」は物品という対価を伴うもの、「献金」は対価を伴わないもの、と性格が異なるからだ。

しかし、全国弁連はこの両者を区別せず、物品販売も献金・浄財も全部ひっくるめて「霊感商法の被害」としている。にもかかわらず、報道では、それ以外にも「献金被害」があるような言い方をして、わざと「被害」を過大に見せるマジックを使っている。

つまり、「霊感商法でこんなに多額の被害が出ていますよ」と言って、献金・浄財も含めた金額を「被害総額1237億円」と強調する一方で、「最近は霊感商法がやりにくくなったため、献金による資金集めにシフトしている」などとして、1237億円のほかに献金・浄財の「被害」が多数あるかのように言うのである。

こういう大雑把な話を聞いた人は、

「霊感商法」の「被害」だけでも総額1237億円もあるのに、アイツらはそれでも飽き足りず、信者から自己破産するまで「献金」させ教祖に貢がせているのか、憎んでも余りある連中だ。

と思うだろう。

しかし、何のことはない。全国弁連が公開している「商品別被害集計」には、「総額1237億円」とした集計表の項目に、ちゃんと「献金・浄財」が入っているのだ。

■「『霊感商法』から『献金』にシフトしている」に見る騙しのテクニック

テレビでも新聞でも、よく「『霊感商法』から『献金』にシフトしている」と言われる。これは半分正しく、半分間違いだ。

全国弁連の「商品別被害集計」を見てみよう。

全国霊感商法対策弁護士連絡会HPより

集計表の1992年と2021年を比較すれば、「霊感商法」(物品)が減り、「献金」に重点がシフトしているのは間違いない。

1992年は全ての項目で1,000万円以上の金額が記録されているのに、2021年は「数珠・念珠」「仏像・みろく像」など8項目で金額はゼロ。「印鑑」の21万円、「壺」の70万円、「絵画・美術品」の70万円に対し、「献金」は8,795万円と断然多い。

しかし、これは半面の事実でしかない。

もう半面の事実は、時系列で見ると「献金」は減少傾向を辿っているのである。下に数字を抜き出してみた。

2007年 10億9807万円(千円以下切り捨て)

2006年 13億4089万円

2007年 22億1493万円

2008年 19億2210万円

2009年 16億1507万円

2010年 10億7305万円

2011年  7億8880万円

2012年 12億2156万円

2013年  4億6140万円

2014年  6億4797万円

2015年  6億3023万円

2016年  3億9826万円

2017年  5億9745万円

2018年 14億93万円

2019年  3億8926万円

2020年  8億23万円

2021年      8795万円

ここから明らかなように、2012年までは2011年を例外として全て10億円以上集めていた献金額が、2013年以降は2018年を除いて一貫して10億円以下に留まっている。2021年に至っては、とうとう1億円を切ってしまった。

要するに、「霊感商法」(物品)の減少に伴い「献金」の金額が増えた、という事実は確認できない(実際には半減している)のである。

しかし、なぜかメディアでは「被害の重点は献金に移り、大勢の被害者がいる」と報じられている。これは明らかにウソだ。

■献金も、2009年コンプライアンス宣言以降、ガクンと減った

献金額についても、2009年以降、コンプライアンス宣言の効果が確実に出ている、と見るべきだろう。

「大勢の被害者がいる」は、前に取り上げたように、献金する信者を「マインドコントロールされている」と決めつけ、信者が進んで、喜んで献金したものまで、第三者が勝手に「被害」と断じるところからくるデッチ上げ、捏造に他ならない。

中には献金してからだいぶ後になって、「やっぱり献金しなければよかった」と気持ちが変わった人もいるだろう。あるいは、献金した信者が高齢になり、相続人が信者の資産状況を調べて献金の事実を知り、「だまされた」と思うケースもあるだろう。

しかし、これを被害と断定することはできない。

献金したとき、自らの意志で自主的に、納得して献金したのかどうかが問題だ。

嫌で嫌で仕方なかったが、強く説得されて仕方なく献金したのであれば、被害と言える。

しかし、1つ1つのケースについて、献金したときの状況についてよく調べもしないうちから、軽々しく「被害」と断定するようなことは避けなければならない。これは金額の多寡とは関係がない。

AERAの記事には他にも興味深い箇所があるので日を改めて取り上げる