■潔く、立派だった甘利明幹事長
神奈川13区で敗北した自民党の甘利明幹事長は、全選挙結果が確定する前に早くも辞意を表明した。映像でうつむき加減に寂しそうに歩いている甘利氏の姿を見て可哀想で仕方がなかった。
甘利氏が選挙区で敗れたのは、はっきり言って自身のせいではない。左派マスコミや野党が不起訴で決着している政治とカネの醜聞を蒸し返したことが影響していないとは言わない。しかし、それは些末な問題だ。
党の幹事長は、自分のことはさておいて全国の議員の応援に飛び回らなくてはならない。幹事長が自分の選挙区を優先して他の議員の応援を断ったら示しがつかない。だから選挙区のことは後援会に任せるしかなかった。
このままでは危ないという情報が流れてから地元に戻ったらしいが、そうなったら他の議員たちも「仕方がない」と納得してくれる。ただ、残念ながら時既に遅かった。巻き返しはならず、5500票差で涙を呑んだ。それでも惜敗率が良かったから、比例で復活できたのは幸いだった。
そして電撃的な辞意表明となる。甘利氏の悄然とした姿は哀れを誘ったが、敗北は敗北だ。選挙区で敗れた人が幹事長続投では、これまた党内に示しがつかない。迅速な辞意表明はまことに潔く、立派だった。政治家たるもの、こうでなくてはならない。
■ぐだぐだ言い訳して負けを認めず、責任を取らない立民・枝野氏
一方の立憲民主党。党代表の枝野氏はどうか。伝えられるところでは、敗北が濃厚になってからも辞めるとは言わなかった。
それどころか、
前回衆院選の際に1人で党を立ち上げ、4年間で100議席以上に増やしたと強調し、「この間の党運営がうまくいった一定の成果だ。さらに伸ばしていくため、この路線で前に進んでいく」と述べた。
という。
4年間で100議席以上に増やしたのは結構だが、その程度で政権交代はできない。できないのに、なぜ「政権交代できる」と有権者を煽ったのだ。「ポスト安倍は私だ」と、鉄面皮でなければ恥ずかしくて言えないようなことまで言って、自己アピールしてきたではないか。
信じられない無責任さだ。このまま続投するというなら、この男にはもう「責任」という言葉を口にする資格はない。
日本記者クラブの党首討論会で、立憲民主党の支持率の低さを指摘された枝野代表は、
皆さんのやった世論調査をもとに最終評価をしないでください。決めるのは投票行動。皆さんのやっている世論調査ではありません。
と語っていた。
あの発言は何だったのか。「世論調査なんか関係ない」と言ってのける神経には呆れるが、鉄面皮の枝野氏ならさもありなんという気がする。しかし、野党第一党の党首が公の場で、全有権者注視の場で、「決めるのは投票行動」と言い切った、その言葉は限りなく重い。政治家は自分の言葉に責任を持つべきである。
自民党は下馬評を覆して単独261議席の絶対安定多数を取った。数は減らしたものの、もともと前回衆院選は野党票が分散したのだから自民が圧勝したのは当然である。今回は野党が多数の選挙区で候補を一本化した。20や30議席を減らすのはやむを得ないと誰もが思っていた。50議席減らして自民単独過半数割れもあり得ると見る向きもあった。
そんな中で岸田首相が掲げた目標は「自公で過半数」だ。政権選択選挙だから、議席が減っても過半数を維持できれば、有権者の信任を得たことになる。そうやって目標を設定して選挙戦を戦い、結果として目標を達成した。
のみならず、自民「単独過半数」もクリアした。自民「安定多数」*1も突破した。最後の最後に自民「絶対安定多数」*2をつかんだ。
自民党は「自公で過半数」の目標を達成して、さらに高いハードルを3つも超えたのだから、文句なしの大勝である。議席を減らした以上、圧勝とまでは言えないが、誰が何と言おうと大勝したことは間違いない。実際、自民党内から岸田首相の責任を問う声はどこからも聞こえてこない。当然だろう。
しかし、野党は違う。立憲民主党が掲げた目標は「政権交代」だったのだ。そのために日本共産党とも組み、小選挙区の約7割で候補者一本化を行い、枝野氏は自公を過半数割れに追い込むと息巻いていた。
この目標を立憲民主党は果たせたのか。全く果たせなかった。「惜しい」とか「あと一息」とか「一歩及ばず」といったレベルではない。全然駄目だったのだ。枝野氏はなぜさっさと代表を辞任しないのか不思議で仕方がない。
最新ニュースでは、関係者と相談して2日に出処進退を明らかにするそうだが、相談なんかする必要あるのか? 辞める以外、選択肢はないだろうに。
責任をとらない枝野氏は、もはや政治家として終わっている。代表の座にしがみつく様は実に見苦しい。自ら判断して潔く辞意を表明した甘利明氏と比べ、枝野氏の態度は「他人に厳しく自分に甘い」立憲民主党の党の体質と全く同じである。
■共産党・志位委員長は自公政権を倒せなかったのに、なぜ辞めないのか?
立民と共闘した日本共産党はどうか。共産党の志位氏も、衆院選の目標は「自公政権の打倒」だったはずだ。そのために立民と閣外協力まで行い、選挙区の候補者調整を行い、見込みのない選挙区は全部、候補者を取り下げた。
で、結果は、もちろん自公政権は倒せなかった。議席も選挙前から2つ減らした。政権交代というゴールは、相変わらず遠い彼方でしかない。
志位氏にしてみれば、乾坤一擲で立憲民主党との共闘に賭けたはずだ。その結果が惨敗だったのだから、日本共産党の代表として惨敗を招いた責任を取る必要があるだろう。多くの選挙区で接戦に持ち込んだとか、石原伸晃氏を落としたとか、甘利氏をやっつけたとか、そんなことを成果に挙げているようだが、「ちょっと待ってくれ」と言いたい。
石原伸晃氏や甘利明氏を落とすのが衆院選の目標だったのか。自民と大接戦を演じればそれで満足なのか。違うだろう。目標は政権交代。自公政権打倒と大見得を切っていたじゃないか。
目標を達成できなければ、責任を取る。これが政治の世界の厳粛なルールだ。衆院選は日本国民を総動員して行う民主主義の一番大事なイベントだ。それゆえ「総選挙」とも言う。そこで主役を演じる政治家たちの責任はひときわ重い。
■共産党には「党内革命」が必要。21年間も委員長をやってる志位氏に「責任を取って辞めろ」と言う共産議員や共産党員はいないのか?
だいたい志位氏は21年間も委員長の座に君臨して、恥というものを感じていないらしい。これも不思議な話で、「安倍独裁」は7年8カ月、「志位独裁」は21年、悪いのはどっち? と言いたい。共産党の中で、志位氏を委員長の座から引きずり下ろそうという動きが起きないのが不思議で仕方がない。
21年間も党の頂点に居座っている人物を交代させることもできないで、政権交代などできるはずがない。共産党は日本社会に革命を起こすのが夢らしいが、そんなことより党内で革命を起こす方が先だろう。
共産党の議員たち、党員たち、支持者たちは、党内革命を起こして志位氏の委員長職を解任すべきだ。このままでは、自公政権打倒とか政権交代とか、口にするのもおこがましいと知るべきだ。