1,消費者庁が旧統一教会に「勧告・命令」を出した件数はゼロ
中山達樹弁護士のブログを愛読している人には周知のことと思うが、10月3日付けで「家庭連合についての献金などの『被害』の現状」が投稿されている。
- 寄附の不当勧誘に係る情報の受理・処理等件数表(PDF、2024年5月9日)
いわゆる救済新法に基づく「寄付の不当勧誘」に関する情報提供や相談を受けて、実際に消費者庁が「勧告・命令」を出した件数はゼロだった。
また、消費者庁の公開資料によると、実際に処理した案件のうち、いちばん多いのが「匿名又は連絡不通等により調査が不能なもの」である。
もっともらしい悪質事例が消費者庁に情報提供されたものの、調査しようにも調査できなかったというのだ。
そんな案件が2023年度上半期に43件中32件(74%)、下半期に42件中19件(45%)もある。
しかも、これらは旧統一教会関連とは限らない。そもそも消費者庁は、どの教団や法人に関する情報かについて一切明らかにしていない。
調査対象情報件数は2023年度上半期が70件、下半期が54件だけれども、もしかすると全てが旧統一教会関連かもしれないし、逆に全てが他の宗教法人等かもしれない。
要するに、この公表資料からは旧統一教会に関する情報はほとんど分からないのだが、1つだけハッキリ分かることがある。
それは、旧統一教会は2023年度、消費者庁から「勧告」も「命令」も受けなかったという事実である。
2,「法テラス」霊感商法等対応ダイヤルの「相談状況」から分かること
旧統一教会関連の「相談状況」がよく分かるのは、「法テラス」の霊感商法等対応ダイヤルである。
- 相談状況の分析「霊感商法等対応ダイヤル」(PDF、令和4年11月14日~令和6年8月31日)
タイトルに「相談状況」とあるように、これがただちに被害となるわけではない。当時は納得してお金を出したのに、後になって気持ちが変化し、「返してほしい」と言い出す場合も考えられる。
これを被害と言っていたら寄付活動や宗教活動は成り立たない。
たとえば、神社で昇殿参拝して家内安全、交通安全を祈願してお祓いを受け、50万円寄付したとしよう。
それから数日のうちに交通事故に遭い、重傷を負ったからといって、「お祓いのご利益がなかった。50万円返せ」と言えるだろうか。
これが5万円だったとしても、神社は返金したりしないのではないか。
中山弁護士も指摘するように、データを見ると、旧統一教会関連では20年超前の金銭支出を相談している人が41%もいる。
「なぜ20年も経って?」とは、誰でも疑問に思うことだろう。
過去20年、どこにも相談できなかったなんてことはありえない。この間、全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)が活発に活動を続けており、2009年には消費者庁もできたのだから。
20年間黙っていて、今になって「金返せ」はないだろう。
民法上、除斥期間は20年であり、たとえ正当な権利だったとしても、20年を超えれば権利は消滅する。
3,法テラスの露骨な宗教差別
この「分析」を見ると、ほかにもいろいろと面白いことが分かる。
たとえば、相談は旧統一教会関連だけかと言えば、全くそうではない。
全相談件数に占める旧統一教会の割合は、たったの21%にすぎない。心の悩み相談は全体の20%以下、金銭的トラブルでさえ43%である。
反対派は「信者はマインド・コントロール(MC)されているから、やめてもMCから逃れられずに悩む」とか「教義を叩き込まれているので、やめると罪悪感に苦しむ」などと、まことしやかに悪宣伝してきたが、心の悩み相談の件数は他宗教、他団体の方が圧倒的に多いではないか!
ここで疑問が浮かぶ。
消費者庁が一切、法人名、団体名を公表していないのに、法テラスは「旧統一教会」に限って名称を明らかにした。これはなぜなのか? こんなことが許されるのか?
相談のあった旧統一教会以外の法人や団体には、伝統宗教や他の新興宗教が含まれている可能性が高い。
ひょっとすると、宗教法人審議会委員が所属する宗教法人の名前だってあるかもしれない。
少なくとも相談の多かった法人や団体のトップ10くらいは明示すべきだろう。
それをしないで旧統一教会だけ特別扱いして公表するのは、露骨な宗教差別そのものだ。