衆院選公示日直前に開かれた18日の日本記者クラブの党首討論会。なかなか面白かったが、立憲民主党・枝野氏の居丈高に異論、反論を封じ込める話しぶりや強引な決めつけが際立っていた。
枝野氏の話を聞いていて、岸田首相の言う「聞く力」が思いのほか、大事な能力だと気づかされた。
枝野幸男という男、全く人の話を聞かない。この人が政権を取ったら、自分たちが決めた方針や政策を、その通りやることだけに専心し、おそらく野党からの異論や反論には一切耳を傾けないだろうと思われる。
自分たちはさんざん「我々野党の意見をちゃんと聞け」「国民の声を聞け」と言って、政府・与党に妥協や法案修正を迫っていたくせに、政権交代の暁には野党の意見など一切聞かないだろう。言い訳はこうだ。「自民党だって聞かなかったじゃないか」。
選択的夫婦別姓についても、「こんなの当たり前のことで、とっくに実現していなきゃおかしい」と言っていた。反対論に耳を傾けようという意思が全くない。最高裁で二度も合憲判断が出ているのに、そして現に強い反対の声があるのに、一切無視する物の言い方は独善的と評するしかない。
この独善的体質は日本共産党と瓜二つだ。なるほど、立民が共産党と閣外協力するに至った理由がよくわかった。類は友を呼ぶ。一緒になるべくして一緒になったのだろう。
枝野氏は、質問者の橋本氏に支持率が減った理由を問われ、とんでもない言い訳をしていた。
「支持率が減ったことは問題だと思っていません。皆さんのやった世論調査をもとに最終評価をしないでください。決めるのは投票行動。皆さんのやっている世論調査ではありません」
この発言に驚かない人がいるだろうか。ほんとに啞然とする発言だ。今まで安倍政権を批判してきた根拠は、世論調査ではなかったのか。桜だろうがモリカケだろうが、立民が安倍政権を批判する根拠は、常に世論調査だった。その数字をもとに「国民は森友問題で再調査を求めている」「国民は自民の説明しない政治、隠蔽する政治に怒っている」などと言ってきた。
ところが、どうだ。最終評価を決めるのは選挙だから、世論調査なんか関係ないというのだ。
だったら、安倍政権の6回の国政選挙全勝はどう説明するのか。最終評価が安倍政権勝利で決着しているのに、最初から最後まで安倍政権を批判し続け、「国民は政権交代を望んでいる」と言い続けてきたのは、どういうことなのか。それは国民が下した「最終評価」を完全無視する行為だろう。
アベノミクスを推進する安倍政権を、国民は6回の国政選挙で完全信任した。したがって立憲民主党にアベノミクスを批判する資格はない。枝野氏の論理からすれば、当然そういうことになる。
それにしても、自民党のことは世論調査を使って口を極めて罵っておきながら、自分たちは「世論調査は関係ない。選挙結果が最終評価だ」と言い放つ。こういうのを二枚舌という。
今度の衆院選で政権交代が起きる可能性はゼロだからといって、「勝手に言わしておけ」と鷹揚に構えているわけにはいかない。一部の国民大衆への刷り込み効果を甘く見るのは禁物だ。おかしな発言に対しては、自民党側もしかるべき人がきちんと批判し、そのおかしさを天下に晒すべきだろう。
枝野氏は世間に向かって「変えよう」と言う前に、自分のその陰険な性格を変えるべきだ。依頼に応じて原告、被告どちらの立場にも立つ弁護士ならそれでいいのかもしれないが、政治家としては致命的である。枝野幸男という存在そのものが政治不信をもたらすからだ。