- 1,霊感対策弁護士ベッタリで思考停止に陥る産経新聞記者たち
- 2,佐藤優氏「家庭内での宗教教育の禁止は、共産党体制下の旧ソ連がやったこと」
- 3,個人的体験からしかものをみず、視野の狭い宗教2世たち
- 4,佐藤氏は、旧統一教会信者の拉致監禁を憂慮し、プロテスタント教会を批判
- 5,霊感対策弁護士ら反対勢力に都合の悪い事実は書かない、触れない産経記者たち
有料購読している産経新聞は日本で数少ないまともな新聞だと思っていた。だが、旧統一教会報道を見ていてすっかり幻滅してしまった。
1,霊感対策弁護士ベッタリで思考停止に陥る産経新聞記者たち
他紙と何も変わらないどころか、もっとひどい記事が載ることもある。
名の知られた見識のある記者たちは、旧統一教会攻撃の背後で暗躍する左翼勢力の動きを感じ取ってか、比較的抑制的だ(桑原聡氏のような例外もいる)。
しかし、この問題で記事を書いている記者たち(たぶん社会部所属)は、背後関係に全く無関心で、全国霊感商法対策弁護士会や日本脱カルト協会の西田公昭氏(立正大学教授、マインドコントロール論の権威)らの主張を、何の疑問も持たずに垂れ流している。
そこには、常日頃、産経新聞が批判しているはずの「(都合の悪いことを)報道しない自由」が見て取れる。
12月11日付けの産経新聞で注目すべきは、1面と2面にまたがる佐藤優氏のコラム。
2,佐藤優氏「家庭内での宗教教育の禁止は、共産党体制下の旧ソ連がやったこと」
有料公開なのでネットでは一部しか読めないが、それでも冒頭に重要なことが書いてある。
特に宗教とマインドコントロールを結びつけた非難に危惧を覚える。
筆者はプロテスタントのキリスト教徒で、同志社大学神学部と大学院で組織神学(キリスト教の理論)を学んだ。現在も神学研究を続けている。
カトリック教会、プロテスタント教会、正教会のいずれにおいても、生殖行為を経ずに生まれたイエスが十字架にかけられて葬られ、3日後に復活したと信じられている。このような信仰内容は自然科学的知見に反する。ある意味、キリスト教徒は処女降誕、死者の復活というマインドコントロール下に置かれた人たちなのである。
旧ソ連では、このような科学的知見と矛盾する信仰を親が子に伝えてはならないと、家庭内での宗教教育が禁止された。共産党体制下のソ連では国家が「宗教2世」を根絶しようとしたのだ。
「危惧」と控えめな言葉を使っているが、内容からして「マインドコントロール論」の批判であることは明らかだ。
旧統一教会批判の先頭に立つ人の中にはキリスト教の牧師が多く、彼らが司牧するクリスチャンたちを「マインドコントロール下に置かれた人たち」だと言っているからだ。
もちろん、これは「マインドコントロール」を信じる者たちへの皮肉である。
宗教2世の救済を訴える人たちは、「(親による)教義の強要」をやめさせようとしている。「それが実現しないと宗教2世は救われない」などと言い出しかねない。いや、既に言っているかもしれない。
しかし、そんな言葉を真に受けて、「児童の権利」を盾に「教義の強要」に対して何らかのペナルティーを科すようなことになれば、これはもう旧ソ連をはじめ共産主義国、社会主義国がやったこと、やっていることと同じである。
3,個人的体験からしかものをみず、視野の狭い宗教2世たち
親から子、子から孫へと宗教を継承することは旧統一教会に限らず、どの宗教でも行われていることである。さすがに、そんなこと(宗教教育の禁止、制限)をやろうとすれば、宗教界から一斉に反対の声が上がるだろう。
しかし、どの宗教団体も、旧統一教会と一緒にされるのは嫌だろうから、沈黙を守る可能性もある。
あえて言うが、今、「教義の強要」などを法によって規制すべきと訴えている宗教2世たちは、個人的な体験からしかものを見ていないと思う。
世界宗教であるキリスト教、イスラム教、ユダヤ教、仏教などで当たり前のように行われていることを、まずもってよく知るべきだ。
宗教とは、世俗社会とは価値観を異にする特殊な世界である。だからこそ「信教の自由」の尊重が、わざわざ憲法で謳われ、日本では教育基本法でも「宗教に関する寛容の態度、宗教の社会生活上の地位の尊重」(第9条)が謳われているのだ。
4,佐藤氏は、旧統一教会信者の拉致監禁を憂慮し、プロテスタント教会を批判
佐藤優氏は、旧統一教会信者の拉致監禁、強制改宗(棄教)に対して警鐘を鳴らしてきた稀有な識者である。
特に、日本のプロテスタント教会が「保護説得」という名の拉致監禁・強制改宗に関与し、旧統一教会に不寛容な姿勢を取っていることを批判してきた。
残念ながら、彼らは聞く耳を持たなかったようであるが。
『はじめての宗教論 左巻―ナショナリズムと神学』の中で佐藤氏はこう書いている。
特に統一教会の信者を無理矢理に連れ出して、改宗を求めるような行動は、断じて許されません。
また文鮮明師をメシアと考える統一教会の人々の心情を尊重すべきです。自分たちがされたくないことを、キリスト教徒は他人に強制してはならないからです。
日本のプロテスタント教会の統一教会に対する寛容に欠けた姿勢は、自己絶対化の罠にキリスト教徒が陥る危険な傾向であると私は考えています。
「統一教会の信者を無理矢理に連れ出して、改宗を求めるような行動」とあるのが、拉致監禁と強制改宗(棄教)の行為である。
「いや、拉致監禁なんかやってない。これは親の愛による保護であり、真に子どものことを思って行う説得なのだ」
キリスト教の牧師、霊感対策弁護士、反対派ジャーナリスト、元信者たちはそのように主張するが、ここで納得してしまってその実態を知ろうとしない人は、このような美辞麗句の陰で何が行われているか、永遠に知ることはできないだろう。
5,霊感対策弁護士ら反対勢力に都合の悪い事実は書かない、触れない産経記者たち
被害救済法をめぐる動きをリポートしてきた産経新聞の記者たちがそうで、彼らは知ってか知らずか、反対勢力にとって都合の悪い事実は一切書こうとしない。
知らずにそうしているのならジャーナリスト精神の欠如と言わざるを得ず、知ってそうしているのなら、事実上、旧統一教会反対勢力と手を組んで、彼らの代弁者と成り下がったのである。
例えば、産経・村嶋和樹記者の手になる次の記事。
ここでは、読者に知らせなければいけない重要な情報がいくつも伏せられている。いわば「報道しない自由」を行使した記事である。産経新聞は、こういうことをやってはいけないと主張していた新聞のはずなのだが。
例えば、
- 当時20代前半の公務員の男性―→「当時」とはいつかが書かれていない。教団がコンプライアンス宣言を出して「霊感商法」を禁じ、最初から教団名を明らかにして活動せよ、と通達した2009年の前なのか、後なのか?
- 「あなたの家系は途絶えてしまう」「祖先が犯した恨みで堕落する」―→こう言われたとき、なぜ信じられたのか? 信じたからには、言われたことに「なるほど」と思う内容があったのではないか?
- 約1年5カ月にわたって信者として活動―→信者になったのは、断り切れずやむを得ずなったのか? 全財産の60万円を献金したぐらいだから、自らの意志で納得して入信したのではないか? また民事裁判では「マインドコントロールされていた」と法廷は認めたのか?
- 退職する直前に両親に保護され、脱会―→両親に具体的にどんなやり方で保護されたのか? 実際は「脱会屋」に指導された拉致監禁ではなかったのか? 説得したのはキリスト教の牧師で、マンションの一室などに監禁された環境で説得が行われたのでは?
- 損害賠償を勝ち取った民事訴訟―→教団との話し合いによる返金ではなく、民事訴訟に訴えたのはなぜ? 話し合いが決裂したから? それとも最初から裁判に訴えたのか? 「脱会屋」から「脱会した以上、損害賠償請求裁判をやるのは当然だ」と半ば強制されたのでは?
本来、こういったことを、たとえ相手が嫌がっても、ちゃんと聞かなければいけないはずだ。そこまで踏み込んでこその新聞記者だ。ただ話を聞いてその通り書くなら誰でもできる。
何しろ「保護説得」という名目で拉致監禁された信者は約4300人(教団側発表)もいる。その情報を知っていれば、「この人はどういうやめ方をしたのか?」と疑問を持ち、そのことについて尋ねるのは記者として当然の責務だろう。しかし、産経・村嶋記者にそういう問題意識は見られない。
また、産経記者は「マインドコントロール」論を信奉する弁護士や元信者の主張を、何の留保も付けず、そのまま書いている。
同じ日の紙面に、マインドコントロール論を批判した佐藤氏の論考が載っているのに、「そんなことは知ったことか」と言わんばかりの書きっぷりだ。この開き直りは、ある意味お見事である。
次の吉沢智美、村嶋和樹記者による記事もそう。「被害を訴える側」の主張と情報だけで書いている。
宗教2世の訴えは、全て正義なんだろうか?
こんな疑問は彼らの脳裏に浮かばないようである。
これでは、被害を訴えた韓国人慰安婦たちの言い分を鵜呑みにして記事を書き、ありもしない「日本軍による組織的な慰安婦強制連行説」を流布させた朝日新聞など左派マスコミと同じではないか。
どうやら、慰安婦問題の教訓は、産経新聞社内で共有されていないようだ。