- 1,政府が旧統一教会に10万円以下の「過料」検討
- 2,政府の使い走りを買って出た産経新聞の<独自>報道。恥ずかしくないのか?
- 3,「過料」処分は裁判で優位に立つ戦略。解散命令請求はもはやXデーを待つだけ
1,政府が旧統一教会に10万円以下の「過料」検討
政府が旧統一教会に「過料」検討という報道が一斉に流された。共同通信は、「過料の罰則検討」を淡々と伝えるのみだが、産経新聞は<独自>と銘打って、「解散命令を視野に最終調整に入り、年内に最終決断する」と踏み込んでいる。
<独自>とあるように、産経記事は独自ネタ。踏み込んだ記事を書いたのは、政府関係者からリークがあったのだろう。テレビ朝日のニュースが後追い報道をしていた。
一方、日テレは「いまだ解散命令請求の判断をするに至っていない」、FNNも「解散命令を請求するかの判断に向けて調査を進めている」と、これまで通りの報道を繰り返した。
相変わらずの政府発表の垂れ流し。これはもうマスコミの体質だからいくら批判しても変わることはないが、日ごろ、政府の横暴や暴走を監視するのがジャーナリズムの役目と言いながら、旧統一教会報道にはそんな姿勢が全く見られない。
2,政府の使い走りを買って出た産経新聞の<独自>報道。恥ずかしくないのか?
むしろ、政府のリークをありがたがっている始末だ。もちろんリーク情報の入手は重要だが、問題はその扱いだ。
リークで得た情報にどんな意味があるのか、リークした側の思惑についての分析がなければ、単に政府の使い走りをさせられただけ、ということになる。
実際、NHKが以前、統一教会側からのリークで文科省宛て意見書の内容をスクープ報道したときは、統一教会擁護だとの世論の批判を受けないように、必要以上に情報を取捨選択し、識者の批判コメントも添えて、分析記事を出していた。
NHKのスタンスは偏向したものだったが、「統一教会の使い走りにはならないぞ」という気概が見られた。
ところがどうだ。今度の産経新聞の報道、<独自>つまりスクープのつもりなんだろうが、そこには独自分析など何もない。「政府の使い走りをやってます!」と自慢しているだけだ。
政府による「世論操作の手段」として使われただけなのに、それを<独自>と称して嬉々として報じるのだから目も当てられない。
これが長年愛読してきた産経新聞かと思うと悲しくなる。おそらく社会部が書いているんだろうが、産経が批判してきた朝日と同レベルだ。所詮は同じ穴のムジナなんだろう。
産経はなぜ旧統一教会側を取材しないのか。文化庁は「回答拒否」と言っているが、教団側にその認識があるのか聞くべきだろう。
文化庁は、望む答えが返ってこないことをもって「回答拒否」と決めつけた可能性がある。
また、事実報道なら「過料」の件だけ記事にすればいいのに、産経がわざわざ「解散命令請求を視野に年内に最終判断」と報じた理由は何だろうか?
考えられる理由は、
政府として解散命令請求を諦めていない。時間がかかっているが、年内にはやるから、「早く、早く」とせかす皆さん、もうちょっと待ってください。
という、反統一教会世論への釈明。あるいは、「ちゃんとやってますよ」というアピール。
もう1つは、
教団や一部保守派の反撃、反論、疑問を一蹴すること。
『拝啓岸田文雄首相 家庭連合に、解散請求の要件なし』(中山達樹弁護士著)のような説得力のあるブックレットが出た。もしこれが日本中にばらまかれたら、政府には相当な痛手だろう。
福田ますみ氏、徳永信一弁護士、杉原誠四郎氏、ペマ・ギャルポ氏、三浦小太郎氏はじめ保守派の一部から批判の声が上がり、教団側も本部や信者2世有志がシンポジウムを開いたり、名誉毀損裁判、反宗教ヘイト裁判をやったりと果敢に反撃している。
しかし、政府は一切無視する姿勢を崩していない。これからもその姿勢は変わらないとアピールしているように見える。
権力というものの恐ろしさをまざまざと見せつけられる思いがする。
3,「過料」処分は裁判で優位に立つ戦略。解散命令請求はもはやXデーを待つだけ
宗教法人法における「過料」についてだが、報告徴収・質問権の行使に「回答しない」または「虚偽の回答をした」場合、1万円以下の過料に処すると宗教法人法に明記されたのは、1995年の一部改正の時。
条文では第88条の10号がそれにあたる。当初、金額はたったの「1万円以下」だった。
それではあまりにも安すぎるだろうということで平成16年、17年あたりの一部改正で「10万円以下」に改められた。
それでもまだ安い。過料としては極めて軽微だと思う。
しかし、裁判所がこれを認めれば、統一教会は宗教法人法に違反して不誠実な対応をしたという烙印を押されてしまう。これは裁判になったとき、かなり痛いのではないだろうか。
そもそも7回も質問権を行使したのが異常で、そこでやったことは、まるで警察の捜査のように統一教会を頭から犯罪者扱いした“証拠集め”である。しかし、宗教法人法は、質問権を警察の捜査権のように解してはならないと釘を刺しているのだ。
こういう非常識なことをやっておきながら、教団側の対応が不適切だとして「回答拒否」のレッテルを貼り、過料を科す。まさに権力をかさに着た行為で、解散命令請求後に行われる裁判(非公開)を意識したものだ。
政府関係者がリークしたように、文化庁は既に解散命令の請求に向けて動いている。「過料」処分はその布石であり、のちの裁判で優位に立とうとする戦略の一環だと思われる。
おそらく文化庁は全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連、霊感弁連)の全面協力を得て、彼らの主張を丸呑みし、統一教会を犯罪集団だと断罪するストーリーを作っているに違いない。
報告徴収・質問権の行使で、そのストーリーに合う証拠が上がってくることを期待したが、上がってこなかった。そこで、これを「回答拒否」と見なして「過料」に処すことにした。
ということは、この先、彼らがやることは解散命令請求しかない。おそらく、証拠の部分は元信者の証言やスパイから得た内部資料などで代替するつもりだろう。文化庁は「これでいける」という手応えをつかんでいるはずだ。
風雲急を告げるどころか、事態は切迫している。あとはXデーがいつか、というところまで来ているような気がする。
統一教会に残された道は、解散命令請求を受けて開かれる裁判で争うことしかないと思われる。もちろん、裁判で請求棄却となる可能性はあるが、請求が出された時点で、統一教会や信者たちが嵐の中に投げ出されることは間違いない。
【9月3日午前7時追記】
ふと気が付いたら、朝日新聞デジタルが決定的な記事を出していた。政府は10月中旬にも解散命令の請求に踏み切るようだ。やんぬるかな!
【9月4日朝追記】
少し考えが変わったので、4日付けで続きを書いた。ここでは「解散命令請求が出たら裁判で戦うしかない」と書いたが、その前にやることがある。「過料」処分を巡る裁判だ。略式手続きで唯々諾々と処分を受ける必要はない。正式裁判を提起して、不当な「過料」処分を撤回させるべきだ。
【気晴らしsongs】
パティ・キムの「サラハヌ・マリア(いとしいマリア)」。パティ・キムは国際的に活躍し、日本でも紅白歌合戦に出たことがある。
ジャケット左は吉屋潤(韓国籍。吉屋潤길옥윤で知られる)。作詞・作曲家、サックス奏者として日韓両国で活躍した。「離別(イビョル)」「1990年」「ソウル讃歌」などが有名。パティ・キムと結婚したが、後に離婚した。
下は吉屋潤が日本で出したLP「海程」A面。1曲目に「サラハヌ・マリア」が入っていて、日本語で歌っている。